20/07/2026
【AI時代、「働きがい」はどこへ向かうのか】
今日の日経MJにも取り上げられていますが、AIの普及によって、働き方は大きな転換期を迎えていることがエンゲージメントスコアに代表されるデータから見えてきました。
2025〜2026年に鮮明になったのは、雇用不安などによる「従業員エンゲージメントの低下」と、AIを活用する人や企業における「働きがいの再構築」という二つの動きです。
* 世界のエンゲージメントは20%に低下
ギャラップの「グローバル・ワークプレイス 2026」によると、2025年の世界平均の従業員エンゲージメントは20%。2020年以来の低水準で、2年連続の低下となりました。生産性損失は、世界全体で約10兆ドルに相当すると試算されています。
背景には、組織のフラット化や管理職削減、AI導入による採用減速などがあります。とくに南アジアのマネージャー層で影響が大きく、「自分の役割は今後も必要なのか」という不安が広がっています。
米国でも、従業員の18%が「今後5年以内にAIや自動化によって仕事を失う可能性が高い」と回答。AI導入企業では23%、金融・保険・テクノロジー業界では3割前後に達しています。
* 働きがいは「専門化」と「民主化」に二極化
PwCの「2026年グローバルAIジョブバロメーター」は、仕事が「専門化される職種」と「民主化される職種」に分かれ始めていると分析しています。
専門化される職種では、AIが専門家の能力を高め、判断力や創造性、対人能力の価値が上昇します。これに対し、定型業務を中心とする職種では、AIによって非専門家でも仕事に取り組みやすくなります。
専門化された職種は、民主化された職種と比べて求人数の伸びが2倍で、給与の伸び率も42%高くなっています。AIによって専門性が不要になるのではなく、AIを使って専門性を発揮できる人の価値が高まっているのです。
* 若手にも「人間ならではの力」が必要になる
AIの影響を強く受ける職種では、若手にもリーダーシップ、創造性、対面でのコミュニケーションがより求められます。
高度AI職種関連の求人は2019年以降35%増えた一方、エントリーレベル求人は10%減少しました。
AIが定型業務を担うほど、若手にも問いを立て、人を巻き込み、AIの出力を判断して価値につなげる力が必要になります。
* AIスキルが報酬の差を広げる
AIスキルを持つ人材の平均賃金プレミアムは62%に達し、前年の57%から上昇しました。
プロンプトエンジニアリングや機械学習などのAIスキルを求める求人も69%増加。求人市場全体の伸び率9%に対し、約8倍のペースです。
評価されるのは、単にAIツールを操作できる人ではありません。自分の専門分野とAIを組み合わせ、仕事の質や成果を高められる人です。
* 問われるのは、AIと専門性をどう組み合わせるか
AI導入の進展は、雇用不安や役割の曖昧化を生み、従業員エンゲージメントを押し下げています。その一方、AIを「人間の専門性を増幅する道具」として活用する人には、高い報酬や成長機会が生まれています。
これから問われるのは、「AIに仕事を奪われるか」ではありません。「自分の専門性をAIとどう組み合わせるか」、「企業がAIの成果を従業員の成長や新しいキャリアへどうつなげるか」です。
AI時代の働きがいは、与えられるものから、人と組織が共創していくフェーズに入ったと言えます。