24/11/2023
JSEEDSオンラインセミナー 今年の夏は日本のみならず世界中で異常気象が続き、「危険な暑さ」「地球沸騰化」という言葉が並ぶほど、記録的な熱波が各地を襲いました。それに伴い、作物の減収や水不足の問題が深刻化。また、熱中症患者も増加し、健康へのリスクも高まりました。今後ますます持続可能な環境保護と気候変動対策が重要となり、国際的な協力が求められています。 社外取締役として現状のESGをどのように理解し、取り組むべきか。これらの課題を受けて、前回のセミナーでもご登壇いただいた山田和人さんをお迎えし、「気候変動と自然資源の相互関係 日本企業のとるべき戦略は?」というテーマでセミナーを実施しました。今回はその内容の一部をご紹介します。 <登壇者> KPMG FAS エグゼクティブディレクター 山田和人氏 IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)設立翌年の1989年より、大手コンサルティング会社において、地球温暖化を中心とする地球環境問題の業務に着手し、アジア太平洋地域を中心とする気候変動・地球温暖化対策に関するコンサルティング業務に従事。専門は地球温暖化・気候変動の緩和策、および水質、土壌等をはじめとする環境問題全般。日本以外では、中国、東南アジア諸国、南太平洋島諸国を対象とした気候変動分野の業務経験が豊富。 1.社外取締役とサステナビリティ:国際動向 社外取締役として、企業の社会的責任、環境への影響、ガバナンスの向上、ESG(環境、社会、ガバナンス)指標などは投資家や消費者も年々敏感になっています。国際的な規制や枠組みはどのような状況なのでしょうか。国際動向について山田さんに教えていただきました。 山田さん:2019年の「世界経済フォーラム」でサステナビリティに関して重要な提言が公表されました。 「気候変動がビジネスにリスクと機会をもたらすことは明確であり、これらに対処する戦略的アプローチの実証を投資家や規制当局から求められる」ということと、 「リスクと機会への適切な対処は、企業を長期的に管理・監督する取締役会の重要な義務のひとつである」 です。 そして今年9月にOECD・G20がガバナンスコードを改訂され、新たに「サステナビリティとレジリエンス」に関する章が追加されたのですが、ここで注目したのは、C-1とC-2です(以下参照)。企業はゴールやターゲットを決めてロビー活動をしますが、「ちゃんと活動をしなさいよ」「言うだけじゃなくて、やらなきゃダメよ」と明確に示したわけです。 第6章「サステナビリティとレジリエンス」(一部を抜粋)コーポレート・ガバナンス枠組は、企業のサステナビリティとレジリエンスに貢献するような方法で、企業と投資家の意思決定、リスク管理のためのインセンティブを提供する必要がある。 第6章C:コーポレート・ガバナンス枠組は、取締役会が、ガバナンスの実践、開示、戦略、リスク管理、および気候関連の物理的・移行リスクを含む内部統制システムに関するレビュー、監視、指導などの主要な機能を果たす際に、重要なサステナビリティのリスクと機会を適切に考慮するよう、確保する必要がある。 第6章C-1:取締役会は、企業のロビー活動が、自社のサステナビリティに関するゴールやターゲットと一貫性のあるものにする必要がある。 第6章C-2:取締役会は、企業の資本構造が、自社の戦略的ゴールおよびそれに関するリスク選好度と適合しているかを評価し、異なるシナリオ下におけるレジリエンスを確保する必要がある。 2.気候変動問題に関する最新動向 気候変動問題に関しては多くの国が温室効果ガス削減目標を強化し、再生可能エネルギーへの移行を推進しています。また、気候関連金融リスクの評価が重要視され、金融業界も対応を強化しています。持続可能な未来を実現するための行動が喫緊の課題となっているなか、ボランタリー・カーボンクレジット VCC(CO2排出削減量を売買する仕組み)の最新動向について教えていただきました。 山田さん:自社の目標達成のためにVCCを購入することは、環境に配慮しているように見せかける「グリーン・ウォッシング」とみなされる可能性があります。VCCの発行や取引には多くのエネルギーが必要であり、環境に対する負荷を軽減するためには、より環境に配慮した方法を模索することが重要です。例えば、今年の目標をVCC100万トン削減と掲げるも、50万トンしか減らせなかったので、50万トンを購入しました、というのはグリーン・ウォッシングと見なされる可能性が高くなり、すでに欧州では批判を受けています。カーボンクレジットを目標達成に使用しない、という内容の報道も今朝の新聞で見かけました。 VCCを統合管理する独立ガバナンス機関「ICVCM(Integrity Council for the Voluntary Carbon Market)」は今年、VCCの供給側の信頼性を確保することが目的で新たな指標を公表しました。加えて、カーボンオフセット・クレジット(VCM)の市場を監視するグローバル組織「VCMI(Voluntary Carbon Market Integrity Initiative)」は企業によるカーボン・クレジットの活用促進に向けての新たなルールブックを発表しました。さらに国際エネルギー機関「IEA(International Energy Agency)」は2023年9月にNet Zero Roadmapを改訂しました。まもなく「COP28」がはじまり、2035年の目標を協議します。現在日本は2030年までに温室効果ガスの排出削減目標を46%と定めていますが、2035年はどうするのか、大変注目です。 Net Zero Roadmapの改訂について、「2050年NET ZERO達成」のために、2030年に向けて再エネを3倍増、モーターやエアコン等のエネルギー効率を2倍増、EVやヒートポンプの普及促進、油田・ガス田からのメタンの排出抑制等が必要であることと、送配電網等のインフラ整備の拡大、炭素回収・利用・貯蓄の実施や水素関連燃料、バイオ燃料の利用促進も重要であり、1.5℃への移行を行うためには、「国際協力」が不可欠です。先進国は2045年までに、中国は2050年までにNET ZEROを達成、新興国・途上国は2050年以降にとメッセージを出しています。 3.気候変動と自然資源の相互関係とは? 気候変動と森林資源 気候変動と自然資源は相互に影響し合っています。気温上昇や極端な気象が農業や水資源に悪影響を及ぼし、生態系にも負荷をかけています。同時に、森林や海洋が二酸化炭素を吸収し、気候変動の緩和に寄与しています。気候変動への適応策や自然資源の持続可能な管理が強調され、生態系の保護が重要視されています。持続可能なバランスを取ることが緊急課題となっています。 山田さん:自然資源という表現は人間目線です。自然資源と聞いてまず思い浮かぶのは「森林」ですが、森林は燃やすとCO2を排出します。一方でCO2を吸収・固定する機能もあります。水の蒸発散により地域の気象と密接に関係し、水源を涵養し動植物に生息地を提供することで地域の「生物多様性」をコントロールします。一方、企業の目線から見ると、建築用木材や製紙用チップ、薪炭材という資源としてとても重要であり、文明の発展と森林破壊は強い相互関係があります。 現在地球上でまとまった熱帯雨林が残っているのはアマゾン、中央アフリカのコンゴ周辺。インドネシアのカリマンタンあたりだけです。タイは60年前、国土の6割が森林でしたが一時期27%ほどまで落ちてしまいました。ですが現在は約30%まで回復させました。このように「REDD +(森林保全のために開発された国際的な取り組み。森林も破壊を防ぎ、森林によるCO2の吸収を促進することで気候変動対策に貢献すること)」対策が進んでいます。...
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