100年企業の経営学

100年企業の経営学 日本は、100年企業の数が世界一多い国です。企業が長いくするコツや経営のポイント等を共有できれば幸甚で御座います。

14/03/2022

日本国内に限らず世界中の一流レストランを経験された経営者の実体験から得た、具体的なサービスノウハウや経営手法が詰まっていると感じました。特にお客様を一人の人間として接するという極意は、全ての接客業に通ずるものがあります。また経営手法に関しても人材育成やチームの育成方法などはとても具体的で分かり易い言葉にかみ砕いている為、とても勉強になりました。

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【リーダーの究極の目標】自分より優れた人材を育成する 人はいつか老いて消えゆくものである。従って「自分の理念を後世に伝えたい」、つまり「自分の会社・店舗を存続させたい」と願うのであれば、それを受け継ぐ事の出来る人材を育成しなければならない。...
04/03/2022

【リーダーの究極の目標】

自分より優れた人材を育成する
 
人はいつか老いて消えゆくものである。従って「自分の理念を後世に伝えたい」、つまり「自分の会社・店舗を存続させたい」と願うのであれば、それを受け継ぐ事の出来る人材を育成しなければならない。子が親を越えていくように、会社・店舗でも世代交代は必ずやってくる。つまり、『自分より優れた人材を育てる』事は、飲食店経営者にとっては当然の事である。もはや義務であるといってもよい。金銭欲や名誉欲よりも、会社の理念、即ち己の社会的意義のある人生哲学を優先させる志の高い崇高な人間性を持った飲食店経営者にとっては、切っても切り離す事の出来ない使命であるとも言える。従ってこの本では、『自分より優れた人材を育てる』を飲食店経営者にとって究極の、そしてまさに最終的なゴールと定義づける事にする。

ここで一つ、中国の偉大なる哲学者『老子』の、「最高のリーダー像」についての言葉を紹介しよう。

『太上(たいじょう)は下(しも)これあるを知(し)るのみ』
 
〈訳〉
 最も優秀なリーダーは、自分の働きを人民に知らさない。人民は、ただそのリーダーがいる事を知っているだけだ。次に優れたリーダーは、人民に親しまれ褒め称えられ愛される。それより劣るリーダーは、人民に対して厳しくし恐れられる。一番駄目なリーダーは、人民に馬鹿にされ軽蔑される。リーダーに誠実さが欠けていれば、人民からは信用されなくなる。リーダーが人民を信じなくなると、言葉や規則ばかり作って、人民を管理しようとする。
 
 最高のリーダーは、治める事に成功したら後は退いて静かにしている。すると人民はその成功を、「自分達の手で作り上げたのだ!」と思うようになる。
 
これが老子の自然に基づく政治であり、会社でも家庭でも同じ様に通じる事である。これに似た様な話で、中世のヨーロッパの将軍が自分の息子に言った言葉に、このような言葉がある。

「息子よ、もしおまえが最高のリーダーになりたいのであれば、他の誰よりも優れた知識と武力を身につけよ。しかし、決してそれを家臣に知らせてはならぬ。さすればおまえは、最高のリーダーとなるであろう!」
 
 これらの教訓によると、リーダーが最良の結果を生む為には、自らの職務(社会的に意義があり、人々にとって魅力的である理念を持ち、一貫して明確で分かり易いビジョンを用いて人々をゴールへと導いていく仕事)において、誰よりも卓越した能力を身につけるべく、ありとあらゆる情報を可能な限り自らの知識に変換するために、常に脳のアンテナを張り巡らし、常に学習し、精神的にそして人間的に向上していかなくてはならない。

自己防衛本能に打ち勝つ強靭な精神力

会社の理念やビジョンを、リーダーが理解しているだけでは何も解決しない。リーダーの仕事は、お店を一つのチームとしてまとめ上げ、メンバー達が理解して、そして納得して気持ち良く働けるような環境を提供する事である。リーダー一人の力だけでは何も出来ない。結果を生むのはチームの力である。チームの為に誠心誠意尽くし、チームの為であれば、自分自身のちっぽけなプライドなど自らの足で踏みにじるくらいの強靭な精神力がなければ、リーダーは務まらない。人に何かをしてもらいたければ、まずその人がそれを出来るよう育成しなければならない。その人がその行動の意味を理解して、納得して行動できるようにしなければならない。その為には当然、まずはリーダー自身が物事の本質を理解している事が前提となる。

実際に『自分より優れた人材を育てる』を自らの使命としている方も数多くいらっしゃるようである。しかし、これを実践出来ている飲食店経営者、もしくは心の底からこの様に願っている飲食店経営者が少ないのも事実である。何故か?
 
 これは人間であれば誰にでも働く心理現象のせいであろう。「自己防衛本能」である。人に物を教える事、つまり新人の教育や部下の育成は、ある程度の経験と知識、そして人に物を教えるコツを理解していればそれほど難しい事ではない。相手に対して情報を与え、それを如何にして自分なりの知識に変換していくのかを教えれば、それなりの人材は育つ。
 
 しかし『自分より優れた人材を育てる』となると話は全く別である。特に何もしなくても、元々ある程度の才能があったが故に成長していく場合は別として、教える側の人間が『自分より優秀な人材を育てよう』と意識してその人間を育成する行為は、まさに人間の本能に反する。精神的に非常に辛いものである。何故ならその行為はある意味自分の存在を否定する行為でもあるからである。自分の市場価値を自ら低くする行為だからである。
 
 例えば独自の魔球を駆使してメジャーリーグで年間 20 勝上げる投手がいたとする。彼は自分の チームを世界一にするために、魔球の握り方・トレーニング方法 ・ 野球哲学などを、自分の現役時代に他の投手陣に教えるだろうか?江戸時代から続いている老舗の「うなぎ屋」が、美味しいうなぎをもっと多くの人に食べてもらいたいからといって、秘伝のタレのレシピを他のお店に譲るだろうか?
 
 答えは、両方ともほとんどの場合は「NO!」であろう。何故ならその投手にとってはそれらのノウハウがまさに彼の生命線であるからだ。同じチームとはいえプロの世界である以上はお互いにライバルなのであり、彼らに追い抜かれればたとえチームが世界一になったとしても、次のシーズンからは仕事が与えられなくなるのである。また、うなぎの老舗にとっての最大の競争優位であるその秘伝のタレがどこでも手に入るようになれば、お客様がわざわざその老舗に足を運ぶ必要はなくなってしまうからだ。
 
 ちなみに監督やコーチが選手を育成するのは、この例には当てはまらない。何故なら、優秀な選手を育てチームを勝たせるのが彼らの仕事であるからだ。いくら選手達が自分達の過去の成績を抜こうが、彼らの今の仕事に対してプラスに働く事はあってもマイナスに働く事はない。自分達より優秀な選手を育てても失うものは何もないのであれば、喜んでそのようにするであろう。
 
 この例を会社・店舗に当てはめて考えてみよう。リーダーが『自分より優秀な人材を育てよう』と、必死になって教育を行った結果、実際にそのような人材が育ったとする。その時は、リーダーは自らの座を譲らなくてはならない。自分で自分の首を切らなくてはならないのである。いくら自分が会社の創始者であって、今まで会社に多大な貢献を果たしてきたからといっても、実際に自分より優秀なリーダーがいるのであれば能力の劣る自分は会社にとって必要なくなる。当然その貢献に対する名誉と、その対価として十分な退職金などは支払われるべきだが、よっぽど会社にとってプラスにならない限り、意味もなく名ばかりの会長や相談役の座に就くような行為は見苦しい。会社にとっても害となるだけである。
 
 これは、リーダーにとっては非常に酷な決断であろう。そしてその決断はきっと、リーダーにとっては、その会社・店舗において下す『最後の決断』となるであろう。しかし、何も臆する事はない。リーダーはこれまでどのような厳しい局面に立たされても、その類まれな能力をもって、乗り切ってきたはずである。

リーダーだけが味わえる至福の瞬間
 
 つまりリーダーがチームを成功に導いていく為には、自らの職務において誰よりも優れた知識を身につけるべく、常に血のにじむような努力(ここでは精神的な意味)をし続けなくてはならない。そうであるのにも関わらず、それを人々に悟られてはならない。そして自らがリーダーだと他人に気づかれないのが最高のリーダー像なのだから、リーダーは他人に評価され賞賛される事を望んではならない。成功を収めた時にはそれを成し遂げたメンバー達が賞賛され、逆に失敗した時にはそれを指揮したリーダーが全ての責任を負うべきだからである。
 
 これを読むと、「何だ、リーダーって損ばかりでつまらない仕事だなぁ」と思うかもしれない。残念ながら、まさしくその通りである。リーダーという仕事は、まさに己の欲との戦いであり、孤独との戦いである。リーダーシップというのはその戦いに打ち勝つ力、その難局を乗り越える能力なのである。リーダーに高額の給料が支払われているのは、その能力に対してである。決して会社の中で一番偉いからなどという理由ではない。それほど精神的に辛い仕事であり、また、会社にとっては非常に貴重な能力なのである。
しかしそんなリーダーにも当然喜びを得る瞬間はある。精神的な満足感を得る瞬間はある。それは、日頃味わっている精神的な苦痛に見合うだけの大きな満足感である。いや、その苦痛をも忘れさせ、さらに新たなエネルギーをも与えてくれるほどの至極の喜びであろう。それは、会社の理念そしてビジョンに一歩でも近づいたと感じた瞬間である。お客様のそしてメンバー達の最高の笑顔を目にした瞬間である。これらはリーダーにとって最高の瞬間である。心の中で思いっきりガッツポーズをし、勝利の美酒に酔いしれる瞬間である。まさしくリーダーは、この瞬間の為に仕事をしていると言っても過言ではない。この喜びを感じる事が出来れば、あなたも一流のリーダーの仲間入りである。

 成長の階段を登っていくうちに、真のリーダーは最終目的を達成する為の手段として自分自身を認識するようになる。つまり「一人でも多くの人に一つでも多くの感動を提供する」目的の為に自分より適任のリーダーがいれば、彼または彼女に託すのが正しいと、当たり前に考えるようになる。

『一貫した経営哲学』
『物事の本質を見抜く鋭い洞察力』
『何事にも動じない強靭な精神力』
『物事を客観的に見極める力』
『あらゆる状況を冷静に分析する力』

これらの能力を持ち合わせた究極のリーダーであれば、この『最後の決断』もためらう事なく淡々と、いつもと同じ様な心境で下す事が出来るはずである。最後の決断を下した時の心の平穏は、その人が成長の階段を登りきった証である。

著書:『世界一のレストラン』 より抜粋
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第一章 究極のサービスを提供する         お客様は十人十色、来店目的は...

【何となく良いお店が最高のお店】 実際にバランスがとれて長期的にお客様を魅了し続けているお店に対するお客様の印象とは、果たしてどのようなものなのか?味、サービス、値段、雰囲気、利便度、デザイン、立地、営業時間など、様々な条件のバランスがとれ...
04/03/2022

【何となく良いお店が最高のお店】

 実際にバランスがとれて長期的にお客様を魅了し続けているお店に対するお客様の印象とは、果たしてどのようなものなのか?味、サービス、値段、雰囲気、利便度、デザイン、立地、営業時間など、様々な条件のバランスがとれているお店がお客様にとって価値の高いお店であり、お客様の満足度が高いお店である。お店に対して「料理がおいしい」「スタッフの感じが良い」「お店のデザインがお洒落」と言うような印象を抱かれている事は大変光栄な事ではあるが、もうワンランク上の最高のお店、つまり長期的にお客様を惹きつけるお店に対してのお客様の反応は微妙に違う。長期的にお客様を魅了し続けるお店に対するお客様の印象とは一体どのようなものなのか?

それは「今日どこに食べに行こうかなー?あっ、そう言えばこの前友達と行ったあのホテルの5階にあった和食店、何となく良かったなー。お店の名前は何だったかな?ホテルに電話して予約しよう」というものである。この「何となく良かった」というのが、まさにお店の様々な要素のバランスがとれている証拠である。お料理の味、サービス内容、店内の雰囲気、店内の音楽など全ての要素のバランスがとれていた為に、そのお店で過ごした時間がとても心地よく感じられ、周りの事を気にする事なく自分達の楽しい時間が過ごせたという事である。

お客様は、我々が毎日お店で働いていても中々気づかないような細かい事まで、非常に敏感に感じ取る。また、我々にとってはほんの些細な事であっても、お客様にとっては重要で不愉快に感じる事もある。例えば、サービススタッフとキッチンスタッフの能力レベルのバランス、料理やドリンクの品質と値段のバランス、メニュー構成のバランス、お店の雰囲気と店内の音楽のバランス、店員の制服とお店の雰囲気のバランス等々、実に様々な要素のバランスをお客様は感じ取るものである。これだけでは少し分かりづらいかもしれないので、我々が意識しなくてはならない要素を幾つか具体的な例を挙げて説明していこう。

料理人にとってのバランス感覚
 
ある料理人が海鮮炒飯を作っていたとしよう。そしてそれを食べたお客様から「おっ、この海鮮類は新鮮で美味しいね」とか「あっ、このお米美味しいな」とか「流石!この卵美味しいよ」という誉め言葉を頂いたとしよう。これらは確かに有り難いお言葉ではあるし、大変喜ばしい事であろう。しかしこれでは最高の海鮮炒飯とは言えない。何故ならこの料理人は、「海鮮類の炒め物」を作っている訳でもないし「スクランブルエッグ」を作っている訳でもない。そう、この料理人は海鮮炒飯を作っているのである。つまりお客様に「おっ!この海鮮炒飯、美味しいよ!」と言ってもらうのが最高の誉め言葉であるはずである。また、そう感じてもらった作品こそが最高の「海鮮炒飯」なのである。

 「何が具体的に美味しいのか分からないが、何となく美味しい」と感じる料理こそが最高の作品である。その料理は全ての要素が上手く融合し合っている。つまり食材同士がお互いに邪魔をせずに、お互いを活かし合っている。当然、海鮮類だけを口にした時は「この海鮮類は新鮮で美味しい」と感じるであろうし、卵だけを口にした時には「この卵は最高だ」と感じるかもしれない。但しこれが最高の海鮮炒飯であれば、食べ終えた後の総合評価としては、「うーん…この海鮮炒飯は本当に美味しいな。何故だろう?何が美味しいのだろう?」というものになるであろう。

お客様にとってのバランス感覚

〈長期的にお客様を魅了し続けているお店〉、〈何となくまた行きたくなるお店〉、〈常連客のつきやすいお店〉に対するお客様の判断基準とは、果たしてどのようなものなのか?これはお店側にとって最も気になる課題の一つであろう。従ってここでは、お客様がお店を選ぶ時の心理的なバランスについてお話していこう。

お客様はお店のバランスを非常に敏感に感じ取る。その結果、一流のシェフが最高級の食材を使って仕上げた100点満点のお料理であっても、お客様のテーブルに運ばれてきた時には50点の評価になってしまうかもしれない。そのような事が平気で起こる。例えば提供時間が早すぎたり遅すぎたりしてお客様が望むタイミングと合わなかった。温かいお料理のお皿が冷たかった。お料理がお皿のデザインとマッチしていなかった。提供するサービスメンバーのサービスが悪かった。これらの場合は、いくら100点のお料理でもさほど美味しくは感じない。せっかくの楽しい時間も白けてしまうかもしれない。結果的に100点のお料理が50点の最終評価になってしまう。

当然の事だが、お客様の評価が最終評価である。『料理はキッチンで完成するものではなく、テーブルの上で完成するものだ』とよく言われる。その言葉の意味がこれであろう。テーブルでの価値が落ちるとお食事の価格対満足度は下がらざるを得ない。お店はキッチン段階の100点満点のお料理に対して値段設定しているはずだ。しかしお客様にとっての価値はテーブル段階での50点しかない。おのずとお客様は多少高すぎると感じてしまう。

お客様は、決してお店の都合の良いようには評価してくれない。また、テレビや雑誌のような評価もしない。テレビや雑誌の評価や印象と実際に御来店されたお客様の意見や感想がよく異なるのは何故なのか?それは店を訪れる目的が両者で違うからである。

評論家やプロデューサーは評価が仕事である。お店を評価するために一つひとつの項目を見ていく。例えば以下のような項目である。
1.お料理の味
2.ドリンクの味
3.お店の外観
4.お店の内装
5.スタッフの動き
6.値段設定
7.立地の良さ

そして一つひとつに対して点数を出して評価していく。しかしお客様は違う。最高の接待をしてお得意様を喜ばせたい、デートを楽しみたい、家族水入らずでリラックスしたいなど、様々な理由や目的があってお客様はご来店される。そのような状況の中でいちいちお店を様々な角度から分析したり評価したりするはずがない。お客様は評論家ではない。採点表を持ってお店に行くのでもない。

従って、いちいち「おっ、これは天然ものだね!」とか「んっ?これは無農薬だな?」とか「これは冷凍物かー」とか「あのサービススタッフ動きがぎこちないなー」等とコメントする人はほとんどいない。よっぽどひどい味やサービスでなければ、一般のお客様には分からないであろう。お客様は食事の時くらいリラックスしたい、くつろぎたいと考えている。お店全体のバランスを無意識的に感じ取り、「いいデートだった」、「いい接待だった」、「家族全員が楽しめていろいろな話が出来た」、「最高の時間を過ごさせてもらった」と評価する。そしてその時の目的が達成され、自分も家族も友人も楽しめたら、そこで初めて「ああ、あのお店良かったね」となる。お店に対する具体的な感想が意識にのぼるのはその総合評価が出た後になる。この場合のキーワードは「そういえば」である。「そういえばお料理も美味しかったよね」とか、「そういえば雑誌であそこはいつも新鮮なお魚を仕入れているって書いてあったよ」とか、「そういえばお料理の出てくるタイミングも良かった気がしない?あのお店のサービススタッフは、ちゃんと細かいところまで気配りしてくれていたのかもね」等々。そして「あれだけ楽しめてあのお値段なら、また今度行ってもいいかな」となるのである。

どんなに美味しいお料理を提供していても、サービスがそのレベルでなければ、実際は90点のお料理がお客様にしてみれば30点くらいにしか感じられないかもしれない。そしてその30点がそのままお店の評価になる。雑誌のように、〈あのお店は、お料理は90点でサービスは50点だ〉等というような都合の良い評価は決してしてくれない。これは非常に厳しい評価の仕方である。一人が悪ければ全員が罰せられる。連帯責任みたいなものである。どんなに素晴らしいお店であっても、たった一つのミスによってお客様を失う。その怖さは飲食業界で働いている方であれば痛いほど良く理解していると思う。これに耐えられなければ飲食業界では生きていけない。

 だが、本当に飲食業界を愛している方には、このプレッシャーがむしろ心地よく感じるはずである。御来店された全てのお客様に感動して頂く事がほとんど不可能なように、お店の全ての要素を完璧にする事など到底できない。だからこそ楽しい。テレビゲームと一緒で、自分のレベルが上がっていくら強くなっても、常にさらに強い敵が現れるからこそ、どんどんゲームにのめり込んでいくのである。そして次のステージ、さらに自分のレベルを上げる為に、己を磨いていくのである。 

 常に敏感になって、全ての要素が高いレベルでバランス良く保たれているかどうかに気を配り、お客様の為に心を擦り減らす事が出来れば、必ずお客様にその愛は伝わる。そしてたくさんのお客様にご来店して頂き、たくさんの笑顔を頂ける。あなたの擦り減った心もきっと癒されるはずである。

経営者にとってのバランス感覚
 
ここでは、現場のマネージャーを含めた実質の店舗経営者にとってのバランス感覚を、具体的な問題例を挙げて説明していこう。

〈具体的な問題例〉
「お料理のブッフェ台の、冷たい前菜やデザート用の取り皿が温かい」

これはホテルなどブッフェ形式のお店にありがちな問題である。当然、営業前や落ち着いている時間帯は、冷たい前菜やデザートのセクションには常に冷えたお皿か常温のお皿が並べてある。しかし忙しくなってくるとどうしても洗い場から直接お皿が回ってくるため、お皿を冷ます時間がなく、温かいもしくはアツアツのお皿が冷たい前菜やデザートのセクションにも並べられる事になる。
このように書くと、経営者の方は「必ずしもそうとは限らない」、「いつもそういうわけではない」、「メンバー達がもっと頑張って協力して俊敏に働けばもっと早くお皿を回転させる事が出来るはずだ」と思われるかもしれない。そのような方には、実際にピーク時のブッフェのレストランにて、しかも限られた数のチームのメンバー達と働いてみる事をお勧めする。自分の過ちに気がつくのに一時間とかからないであろう。

〈解決策の例〉
「席数の8倍の数のお皿を常備しておく事」
 
何故8倍もの数のお皿が必要なのか?これは、一人のお客様に対してこれだけのお皿を使うという事である。常にお客様のテーブルの上に2皿、下げ場に2皿、洗い場に2皿、ブッフェ台に2皿あるという計算である。ここで特に重要なのが〈下げ場に2皿〉という計算をあらかじめ計算できるかどうかだ。現場の状況を把握していれば簡単に理解できるが、使用済みの汚れたお皿がお客様のテーブルから洗い場に直行する事はまずない。ほとんどの場合は下げ場を経由してしばらくお皿が溜まってから洗い場へと運ばれていくのである。ここで理解しなくてはならないのは、サービスの人間が手を抜いているからお皿を下げ場に溜めているのではなく、これが現実的に効率の良いオペレーション作業なのである。
 
もちろん常に高稼働率を維持できる店舗は多くはないであろうが、通常の営業でも7~8割の稼働率のあるお店であれば、席数の8倍の数のお皿を常備しておかなければ余裕を持ったサービスは出来ない。また週に1‐2回でも冷たい前菜やデザートのセクションに温かいお皿が並べられる事がある店舗であれば、お客様の満足度、機会損失、メンバー達のストレス度などを考慮すればまず間違いなくお皿を増やしたほうがより多くのお客様を魅了し続ける店舗になる可能性は高まる。このように考える事が出来れば、器財の代金が仮に100万円かかったとしても、それは合理的なものであると、正しく経営判断できる。
 
なお、これは冷たい前菜やデザート用のお皿のみならず、通常の取り皿、カップ類、シルバー類、グラス類など全ての器財に当てはまる。現場のメンバー達なら誰でも知っていることであろうが、どの店舗でも特に足りないのはデザートの皿、デザートシルバー、コーヒーカップ、ティースプーン等である。

バランススキルを備えた経営者のソロバン勘定
 
また、この解決策は合理的・論理的に説明が出来る。何故ならば、十分な器財があれば、

1. 長期的な人員削減
2. お客様の満足度の向上
3. 機会損失の予防
といったメリットが生まれるからである。
 
1.長期的な人員削減
 ピーク時にお店のオペレーションが回らないという理由で、余分な人員を使っている店舗は意外と多い。特に洗い場、ブッフェのヘルプ要員、下げ物だけを担当しているメンバー達などである。十分な器財があれば、オペレーションに支障をきたすことなく、余分な人員を削減できる。もし一日に一人を削減できれば、月に一人のコストが20万円として、5ヶ月間で100万円のコスト減である。従って5ヶ月間で100万円分の器財を破損する事さえなければ、この投資は成功だと言える。
 
2.お客様の満足度の向上
 これは〈長期的な人員削減〉と多少関連している事項である。もし人員を削減できない事情がある店舗でも、器財を十分に揃えれば作業効率は上がり、お客様に奉仕する時間を増やせる。つまり『作業とサービスのバランス度』において、サービスの比率がより高くなる。結果、より多くのお客様により多く感動して頂ける可能性が高まるのである。
 
3.機会損失の予防
 常にお皿やシルバーを切らす事なく、冷たいお料理には冷たいお皿、温かいお料理には温かいお皿が準備されていれば、お客様からのクレーム率も減少するだろう。逆に、もしこのような当たり前の事が当たり前のように出来ていないレストランであれば、そのお客様に次回もまたご来店いただける可能性は激減する。そのような情報は口コミで一気に広がってしまうものである。最終的にこの器財代金100万円を余分なコストと捉えるか、また逆に3年間で倒産する可能性の高かった店舗を 10 年は継続できる店舗に生まれ変わらせるための長期的な投資と捉えるかは、経営者のバランス感覚次第である。
 
何故ならこれは机上の数字、つまり貸借対照表や損益計算書には決して表れてこないからである。この100万円が将来の何千万円、いや何億円の価値を生む投資であると証明することはできない。しかし〈お客様の満足度〉、〈機会損失の改善〉、〈メンバー達のストレス改善〉と投資額とのバランスを敏感に感じ取れる経営者の方であれば、きっと正しい解答を導き出す。また客観的な視野を備えた経験豊富なプロの経営者であれば、脳内の様々な引き出しから様々なデータを取り出して、今の店舗の状態と照らし合わせ、その状態にあった改善策を打ち出し、問題点を一つずつ丁寧に取り除いていけるであろう。
 
ここで気をつけて頂きたいのは、「今の店舗の状態にあった改善策」と「一つずつ丁寧に取り除く」という事である。同じ店舗であっても時期やタイミングによって改善策もまったく異なってくる。むやみやたらに様々な問題点に手を出すと、全てが中途半端で終わってしまう可能性が高い。

 今の店舗で解決可能な問題点を一つずつ丁寧に取り除く。それも投資対効果の高い方から優先順位を付けて取り組んでいく。地道で絶え間ないこの努力の先にあるのが「バランスの良いお店」、すなわち「何が具体的に良いのか分からないが、何となく良いと感じるお店」である。

経験がバランス感覚を養成する

 ここでは、料理人にとってのバランス感覚、お客様にとってのバランス感覚等の例を挙げてきたが、これらはほんの一例である。
 実際の現場では日々様々な問題に直面し、それぞれの解決策の判断時に『バランス感覚』が必要になってくる。たとえ同じ形態のお店であっても、季節や立地や時間帯やお店の置かれている状況によって全く違った解決策が必要になってくるかも知れない。また、国や文化や人種の違いによってもいろいろと考慮する点が出てくるであろう。バランス感覚に優れた人間は、「臨機応変」「適応力」などの能力に長けている。また、これらの能力は生まれつきのものではなく、鍛えれば身につくものである。しかし短期間で身につくものでもない。

優秀なスポーツ選手の柔軟でありながらも鋼のように強い筋肉、つまり見世物や飾りではなく実戦で使える筋肉を身につけるのにはそれ相応の鍛錬が必要である。そしてその筋肉をただ闇雲に振りかざすだけではなく、如何に有効に使って戦いを勝ち抜くかという緻密な戦術を立てるのには、それなりの経験と時間が必要である。それと同じ様に、この厳しい外食産業界で生き抜く為に必要な『バランス感覚』は、何千何万というお客様と接し、いろいろな状況に直面し、様々な問題と向き合う事で養われていくものである。真剣に飲食業界で成功を収めたいと思っている方、本気で飲食業界を愛しておられる方には、是非ともこの『バランス感覚』の重要性を理解して頂き、自分のチームメンバー達にもこの重要性を伝えて頂きたい。

鍛錬と経験を積んでじっくりと時間をかけて自分を成長させ、またチームのメンバー達が成長する事によって、我々の生きているこの飲食業界にはより一層の成功がもたらされるであろう。より多くの人がこの飲食業界で成功を収め、「9割以上が3年以内に倒産する」という通説を打ち砕ければ、水商売だとかアマチュアの世界だとかは言われなくなるであろう。そして、優秀な人材が飲食業界の門を叩くようになり、更には他業界や一般社会から尊敬される優秀な人材がこの業界から続々と生まれていくと信じている。

著書:『世界一のレストラン』 より抜粋
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第一章 究極のサービスを提供する         お客様は十人十色、来店目的は...

【成功する経営者は、バランス感覚に優れている】 成功するお店と失敗するお店との決定的な違いは何か?一言で言えば、『バランス感覚に優れたプロのマネージャー、経営者の存在』である。飲食業界におけるメンバー達の成長段階は大きく分けて5段階ある。〈...
04/03/2022

【成功する経営者は、バランス感覚に優れている】

 成功するお店と失敗するお店との決定的な違いは何か?一言で言えば、『バランス感覚に優れたプロのマネージャー、経営者の存在』である。

飲食業界におけるメンバー達の成長段階は大きく分けて5段階ある。
〈作業スキル向上欲求段階〉
〈サービススキル向上欲求段階〉
〈ビジネススキル向上欲求段階〉
〈バランススキル向上欲求段階〉
〈理念・使命・ビジョン追求欲求段階〉

である。この中でも、〈バランススキル向上要求段階〉は、五段階欲求の中でも最も重要である。しかしながら現実的には、〈作業スキル向上欲求段階〉、〈サービススキル向上欲求段階〉、〈ビジネススキル向上欲求段階〉を通過したほとんどの人間は、〈バランススキル向上欲求段階〉を経由せずに、焦ってすぐに〈理念・使命・ビジョン追求欲求段階〉へと飛んでしまう。つまりある程度の経験を積んだ人間は、「自分は飲食業界で成功する為の知識や経験を十分身につけた」と信じ込み、すぐに新しいプロジェクトに手をつけたり自分のお店を持とうとしたりして失敗してしまう。その結果が、「9割以上が3年以内に倒産する」である。

では、この〈バランススキル向上欲求段階〉が五段階欲求の中でも最も重要な向上段階であるのにも関わらず、多くの人間、いやほとんどの人間がこのスキルに欠けるのは何故なのだろうか?それは、この〈バランススキル向上欲求段階〉が他のスキルと比べて少し特殊だからであろう。他の四つの欲求、即ち〈作業スキル向上欲求、サービススキル向上欲求、ビジネススキル向上欲求、理念・ビジョン追求欲求〉は、高い志を持った人間であれば自然と心から沸いてくる欲求である。しかしこの〈バランススキル向上欲求〉は違う。

 まずはこのスキルの存在と意義を把握して、如何にこのスキルを向上させるかを理解し、常にこの事を意識していないとなかなか身につかない。つまり数週間・数ヶ月の短期間で簡単に身につくスキルではないのである。自らバランススキルの重要性に気づいて、常に意識してこのスキルを身につけようと何事にも真剣になって取り組み続けない限り、バランススキルを完璧に自分のものにする事は出来ない。それではバランススキルがなぜそれ程までに重要なスキルなのか、またバランスのとれたお店とはどのようなお店なのだろうか?

著書:『世界一のレストラン』 より抜粋
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第一章 究極のサービスを提供する         お客様は十人十色、来店目的は...

【目標達成に欠かせないオペレーションマニュアル】  ここからはオペレーションマニュアルについて記したい。この言葉を聞き慣れない読者もいらっしゃるかもしれないが、お店の最大の目標『一人でも多くのお客様に、一つでも多くの感動を提供する』を達成す...
04/03/2022

【目標達成に欠かせないオペレーションマニュアル】
 

 ここからはオペレーションマニュアルについて記したい。この言葉を聞き慣れない読者もいらっしゃるかもしれないが、お店の最大の目標『一人でも多くのお客様に、一つでも多くの感動を提供する』を達成する為に必要不可欠なものなのである。
 
何故か? ご来店いただいた全ての人に最高のサービスを提供し感動して頂く事は確かに我々の目標 であるが、それは不可能に近い。これを常に100%に近づける為には、お店が常に円滑に回り、メンバー達が、常に肉体的・精神的な余裕を持って働けている必要性がある。これによりメンバー達が、最高のサービスを提供できる機会が増えるからである。
 
常にお店を円滑に回していく為の決め事がオペレーションマニュアルである。これによってメンバー達が働きやすい環境が生まれる。なお現場においては、毎分毎秒、優先順位が変わるものであり、このマニュアルは絶対ではなく、あくまでも基本的なものであるという事を理解して頂きたい。
 
オペレーションマニュアルは店舗の基礎の骨格を築くものであり、店舗設計と並び非常に重要な要素である。オペレーションマニュアルとは、一言で言えば「メンバー達の作業マニュアル」である。とは言っても、料理やドリンクの商品作成マニュアルとは少し異なり、これはお店の各ポジションにおいての『基本的な作業の仕方や、店舗の営業時間帯及び状況に応じた作業の流れを示したもの』である。もっと分かり易く言えば、『それぞれのポジションのメンバーがどのような考えで、またどのような作業をすれば、店舗が一つのチームとしてより高いレベルで機能できて、より良い結果が得られるかという情報や具体的なアドバイスを記したもの』である。またこれは、会社・店舗の一貫した理念・ビジョン・戦略に沿ったものである必要があり、メンバー達がこれらを実現させるための最も具体的な行動基準であるべきである。

 オペレーションマニュアルがどれほど重要なのか。この点をきっちり理解する事が、その実行に欠かせない。そもそも何故、店舗にはオペレーションマニュアルが必要なのか?
 
それは、店舗の具体的な営業の流れや基本的な作業方法をメンバー全員が理解していないと、チームとして同じゴールに辿り着けないからである。 例えばあるプロサッカーの試合で監督が「次の試合はアウェーでの試合なので無理をせずに勝ち点1を確実に取りに行こう!(つまり引き分け狙い)」という作戦を立てたとする。それにともない監督は「前半・後半共に徹底的に守備を固め、少ないチャンスでのカウンター攻撃時においても決して無理はしない。FW(フォワード)は置かずに徹底的に守備的なフォーメーションを組もう」という具体的な戦略を立てる。そしてさらに、それぞれのポジションにそれぞれのもっと具体的な動きの指示(様々な時間帯や状況に応じた具体的な指示)を与えていく。
 
この様な具体的なチームの目的、プレーの流れ、フォーメーションの細かい指示がなく、ただ単純に「この試合は引き分け狙いで行こう!」という指示だけであったら選手達は混乱する。「なぜ、引き分けなのか?」、「じゃあ、全員でゴール前に立っていれば良いのか? 」 、「チャンスが生まれた時、どのようにカウンターで攻めるのか?」、 「もし仮に点を取られたらどうするのか?」等を選手が理解できないまま試合が始まったらどうなってしまうだろうか?草サッカーレベルの試合に、ファンが怒って帰ってしまうだけである。
 
これを外食産業界の会社・店舗に当てはめると、『オペレーションマニュアルとは最も現場に近く、最も具体的で尚且つ結果をも大きく左右する重要な戦略である』とも言えよう。現実的で実戦的、また効果的で生産的なオペレーションマニュアルなくしてチームの成功はあり得ない。また、ただ「ある 」というだけではなくて、それをチームのメンバー全員で共有し、理解していなければオペレーションマニュアルの存在意義はなくなってしまう。

著書:『世界一のレストラン』 より抜粋
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第一章 究極のサービスを提供する         お客様は十人十色、来店目的は...

【店舗のシステムを構築する】何故システムが重要なのか?  店舗が日々営業を行なっていく為には、それぞれの店舗独自のシステムが欠かせない。店舗の骨格、つまり基本的な土台が必要なのである。外食産業界では一に立地、二に立地、三、四に立地、五に立地...
04/03/2022

【店舗のシステムを構築する】

何故システムが重要なのか?
 

 店舗が日々営業を行なっていく為には、それぞれの店舗独自のシステムが欠かせない。店舗の骨格、つまり基本的な土台が必要なのである。外食産業界では一に立地、二に立地、三、四に立地、五に立地と言われるほど『立地』が重要だとされている。確かに安定して人通りの多い好条件の場所の方が、人の全くいない場所にポツンとお店を立てるよりは成功する可能性は高い。当然の事だし誰でも知っている。いわば一般常識のようなものである。

では果たして店舗の成功は全て『立地』に掛かっているのか?
成功している店舗は全て『好立地』と言われる場所にあるのか?
 世間で『好立地』と評される場所にある店舗でも失敗するのは何故か?
 
理由は様々だろうが、立地がすべてとはならない最も大きな理由の一つとして、『店舗システムの欠如』が挙げられる。

店舗の着工・改装前にやらねばならぬ事
 
現在は数多くの店舗が、競合他社の『ベンチマーキング』に大きな力を注いでいる。競合他社の客質、客層、売り上げ、営業時間、メニュー構成、値段設定などに大きな関心を持ち、その収集と分析に多大な時間とエネルギーを費やす。しかし得た情報を効果的に活用している企業・店舗は非常に少ない。これらの指標・情報を最大限に活用するためにはどうすればよいのか?

 答は『自分の店舗に適した、また自分達にとって効果的であると判断した情報を元にして、店舗独自のシステムを確立する』である。すなわち『ベンチマーキング』で得た貴重な情報を「自分の店舗に適した、使える情報」と「自分の店舗には適さない、使えない情報」とに明確に仕分ける。その上で、店舗設計、営業時間、テーブル数、テーブル配置、メニュー構成、メニュー内容、値段設定、オペレーションマニュアル、メンバーのスケジュール、給料システム、制服、客質や客層の設定、広告宣伝の仕方などの独自のシステムを確立する。

 これは当たり前の事であり、「言われなくても分かっているよ」と思われる方も多いであろう。しかし実際に「店舗の着工前・改装前にこれらのシステムを何千回・何万回とシミュレーションした上で完璧に確立している店舗」は果たして全体の何%であろうか?

 たいていは店舗の着工と同時進行であったり、オープンの直前であったり、さらにひどい場合はオープン後数か月して売り上げが伸び悩んできてからであろう。もしくは「店舗の着工前にある程度のシステムは確立して頭の中に入っている」という方が多いかもしれない。

 しかし前述した通り、店舗のシステムというのは全てが始まる前に「何千回・何万回とシミュレーションした上で完璧に確立する」べき重要なものである。そうであるにも関わらずそれをしない怠慢な企業・店舗があまりにも多い。だから外食産業界には「97%が3年以内に潰れる」というなんとも不名誉なデータが生まれてしまうのである。
~まとめ~
 
一度作成したものを徐々に改善していくよりも、多少時間をかけてでも最初から最高のものを作成した方が効率良く、コストも安く済む。この言葉を常に頭に入れておこう。 『店舗の問題の 70 %~ 80 %は、その店舗の内部にある』。つまりその店舗のシステムに問題があるは ずである。売り上げが伸び悩み壁に突き当たったら、周囲の店舗の状況を気にするよりも、まずは自分のお店のシステムを再点検しよう。
 
一度店舗を立ち上げるのに数千万円、条件によっては数億円もかかるビジネスを3年で潰して周囲の人間に多大な迷惑をかけたくなければ、「店舗の立ち上げ前に何千回・何万回とシミュレーションした完璧な独自のシステムを確立する」事に全身全霊を傾けなければならない。

設計段階から現場の人間に関わらせる
  「店舗設計」は新店舗をオープンさせるにあたって、最も重要な要素の一つである。新しい人材を雇う事もメニューを変更する事もさほど難しい事ではないが、お店の改装は多額の資金と時間を要するのでそう簡単に出来る事ではない。
 
ちなみにここで言うお店の改装というのは、テーブルの配置や種類を変更したり、テレビやプロジェクター等の新しい機材を導入したりする事ではなく、入り口・柱・壁・キッチン・バー・トイレ等の位置や大きさ等の基本的な構造の事である。これらの基礎構造は、今後のそのお店のメンバー達の動線、そして仕事の効率の8~9割を決定づけるものである。以下に、店舗設計において意識すべき点、また、これらの基礎構造がどのように現場に影響を及ぼすかを具体的な例を挙げて説明しよう。

デザイン性よりも機能性を優先させる
 
店舗を設計する際には、まず現場の人間の基本的な行動を理解し、彼らの動線を確保した上で、店舗の具体的なデザイン等を考えるべきである。

 例えばテーブル同士の間が狭すぎるとメンバー達のサービススペースが失われ、サービスレベル(スピード・質・確実性)が低下する。また、テーブルが入り口、デシャップ、トイレなど人の出入りや動きが激しい場所に近すぎたり、柱や壁の死角になり易いテーブルが多かったりすると作業効率が低下し、人件費の高揚を招きかねない。このような状況は、設計を終えてからテーブルの配置を考え、無理やり一つでも多くのテーブルを詰め込もうとする店舗によく見られるケースである。
 
店舗のコンセプトに合わせたデザイン性や、なるべく初期投資を抑える為に既存設備をそのまま生かすのも確かに大事ではある。しかし、現場スタッフの十分な労働環境、労働スペース、動線の効率が劣っていれば人件費は高揚し、作業効率は落ち、サービスレベルは確実に下がる。リーダーはこれらの事を認識した上で、具体的な数字として現れる目先のイニシャルコストの削減にこだわるか、開店後のランニングコスト削減と売上増(つまり利益増)につながる現場スタッフの満足度・お客様の満足度のために投資をするかの決断を下すべきであろう。

洗い場はお店の心臓である
 
売り上げの規模・料理を作るのに要する手間や人員・キッチンの規模、これらのバランスがとれていなければ、料理をスムーズに提供できなくなり、ピーク時にはお客様のクレームを生む危険性も出てくる。そしてスピードのロスは、飲食店において最大の致命傷となる「機会損失」を生む。1日の機会損失がお客様 10 人だったとして、これが1ヶ月続いたとしたら(もちろんお店の客単価にもよる が)大きな損失となる事が分かるであろう。そしてこれは当然1年間、いやお店を閉めるまで永遠に続く。莫大な損失である。

 洗い場の設計に対しても全く同じ事が言える。洗い場というのは、いわば店舗の心臓部である。体中から集めた酸素不足の血液を肺に送って綺麗な状態にしてから再び全身に送り出す心肺機能は、まさに洗い場の役割と同じであるといえよう。また、朝一番に電源を入れ、夜一番遅くまで動き続けているのが洗い場である。
 
つまり洗い場は店舗で最も稼働率が高い場所であり、洗い場周辺の通路は最も人が通る動線なのである。様々な店舗で経験を積んできている現場の人間であれば分かるだろうが、本当に強い店舗は洗い場が強い。厳しい戦いを勝ち残る強い店舗を作りたいのであれば、ある程度余裕を持った広さの下げ場と奥行き(洗い場のメンバーの作業スペース)と店舗の規模に見合ったサイズ・レベルの洗浄機と、さらにはメンバー達が効率良く動ける事を意識した動線が必要不可欠である。
 
キッチンと洗い場、バーと洗い場の位置が互いに離れた場所にあるのもあまり良い設計とは言えない。当たり前の事ではあるが、お客様が使ったお皿・シルバー・グラス等は全て洗い場に行き、そしてキッチン・バー・ホールへと戻っていく。したがって当然、互いが近い位置にあった方が作業効率は上がる。もちろんお店によっては様々な事情(デザイン性や水回り等)があるであろうが、可能な限り機能性も考慮に入れるべきであろう。

フロントとトイレはお店の顔である
  『フロントとトイレはお店の顔である』。ほとんどの方が耳にした言葉だと思う。しかし実際に心か らそう思っている方は非常に少ないようである。それは、そもそも何故このように言われているかを理解していないからではないだろうか?
 
フロントとトイレがお店の顔である理由は、お店で楽しく寛いでいるお客様が唯一、素になる瞬間が、お会計の時とトイレに行く時だからである。それらの時には一瞬酔いが覚めるので、その時目にした光景は長く印象に残る。席で話した内容はあまり覚えていなくても、「フロントがゴチャゴチャしていた」とか「トイレが臭かった」等という事は覚えているものである。
 
であるなら、一人がやっと入れるような狭苦しいフロントスペースや、100席以上もあるお店で女子トイレが2つ・男子トイレが(大)2つ・(小)2つしかないような、数的に明らかにおかしい設計は考えられない。そのような細かいところにも気を使い、テーブルを1卓2卓減らしてでもフロントやトイレにお金を掛ける心配りが、真のサービス精神を築いていく。

先程はピーク時における機会損失は莫大な損失を生むと書いたのに、今度はテーブルの数を減らせとは一体どういうことだ、と思われる方もいるかもしれない。しかし現場で働いている人間には分かるであろう。また、現場で働いた事がない人間でも、自分がお店に行った時に同じ様な思いを抱いた事はあろう。トイレに金を掛けるか掛けないか、最小限にするか余裕を持たせるかは、あなたの心の問題、サービス精神の問題、つまりあなたの人間性の問題である。
 
以上、店舗設計をするにあたっての幾つかのポイントを上げたが、これらの事を理解していないのは経営者、設計者、コンサルタント、コーディネーターといった人たちである。お客様や現場の人間からしてみれば全て当たり前の事なのに、何故か彼らは理解していない。特に他業界から外食産業界へと参入してくる会社は、店舗設計を設計者やコーディネーターに全て任せてしまうケースが多いようだが、これはあまり望ましい事ではない。
 
彼らは確かに数多くの店舗に携わってきた設計・デザインのプロではあるが、現場の実戦的なそして現実的な機能性に関しては、現場の人間ほど具体的なアイデアを持ち合わせてはいない。コンサルタントにも同じ様な事が言える。彼らのほとんどが、生産的で実用的な知識を持っているのはあくまでもマネジメント(それも数字だけ)の分野だけであり、店舗設計、店舗マネジメント、メニュー構成及び内容、店舗マーケティングなどに関してはありきたりで表面的な情報しか持ち合わせていない。つまり現実的・実践的そして生産的で効果的な知識は持ち合わせていないのが現状である。
 
読者の中には、これを読んで怒り狂う方もいらっしゃるかもしれない。しかし、そうでもなければいくら競争の激しい業界だからということを言い訳にしたとしても、「3年以内に 97 %が倒産」という数字は出てこないであろう。

~まとめ~
  「外食産業界では3年以内に 97 %が倒産する」(その内ブームやたまたま運が良くて生き残った会社 ・ 店舗を差し引いたら、実際に成功すべくして成功した会社 ・ 店舗は約1%であろう)という事を 頭に入れた上で、経営者が他の店舗を真似したり、外部のコンサルタント達の表面的で非生産的な意見を信用したりするか、もしくはあなたが手塩に掛けて育てた現場のマネージャーを信用しさらに大きな権限を委譲するかは、あなたの心の問題、つまりあなたの人間性の問題であろう。そしてこの決断は、あなたの社運、つまりあなたの命であり魂でもある「理念」の実現をも左右する、非常に重要な決断となるであろう。

著書:『世界一のレストラン』 より抜粋
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第一章 究極のサービスを提供する         お客様は十人十色、来店目的は...

【常に頭の中でシミュレーションをする】  感動を生める人間と生めない人間、また仕事の出来る人間と出来ない人間の最大の違いは「物事の優先順位の判断」である。この事は既に述べた通りである。では何故、優秀な人間はそれぞれの状況に合わせたより的確な...
04/03/2022

【常に頭の中でシミュレーションをする】
 

 感動を生める人間と生めない人間、また仕事の出来る人間と出来ない人間の最大の違いは「物事の優先順位の判断」である。この事は既に述べた通りである。では何故、優秀な人間はそれぞれの状況に合わせたより的確な優先順位を選択できるのであろうか?また何故、優秀な人間はどんなに忙しい状況でも、また予想外の出来事が起こっても常に冷静でいられるのであろうか?

その答えは、『優秀な人間はありとあらゆる状況を常に頭の中でシミュレーションしているから』である。優秀な人間は以下のような事を常に考えながら行動しているものである。

1. もし今(2名様、4名様、8名様、 20 名様)が、予約なしでいらしたらどのテーブルにご案内し ようか?テーブルがご用意できないのであれば、どのように対応しようか?

2. 自分の担当エリアに同時に3組のお客様がいらしたらどのように対応しようか?例えば「Aテーブルにドリンクをまず伺って、バーがドリンクを準備している間に、Bテーブルに本日のお勧め料理をご説明し少しお客様に考える時間を差し上げてから、Cテーブルに新規オーダーを伺いに行こう」等と、それぞれのテーブルのタイミングを上手くずらすことを計算して動くようにするのである。お客様に感じさせる事なく上手く我々のペースに持っていきテーブルをコントロールするのもサービスのテクニックの一つである。

3. ビールが好きそうなお客様が団体でいらっしゃった場合に、大量にビールを注文されるかもしれないので予備のグラスを冷やしておこうか?いつもより多めにビールを冷やしておこうか?

4. 他のテーブルの追加オーダーが大量に入りそうだから、キッチンが慌しくなる前に自分のテーブルの料理を早めに声がけしようか?

5. Aのエリアが忙しくなりそうだから、自分のエリアを早めに落ち着かせてから、自分のアシスタントのメンバーをAのエリアに送り込もうか?

6. 本日のお勧め料理が残り2つしかない時に、3名のお客様が全員興味を示したらどのように対応しようか?

7. まだまだ忙しくなりそうだから、お皿やシルバーの補充を早めにしよう。これはホールに限らずキッチンでも忘れがちな気遣いでもある。サラダ、冷菜、お刺身、デザート等は、お皿が温かければ盛れない。常に冷えたお皿を準備しておくのが常識である。常に先の先まで計算してこのような幼稚なミスを犯さないように心掛けたい。

8. 雨が降っていて外の気温が下がってきているので、いつも以上に店内のエアコンの温度調整を意識しよう。

9. レジの細かいお釣りがなくなったら困るので、少し多めに硬貨を用意しておこうか?
 
以上のように例を挙げたらきりがないが、常にありとあらゆる状況を想定したシミュレーションを頭の中で行い準備しておこう。実際にそのように想定した状況が起こるか起こらないかは重要ではない。起こりうるありとあらゆる状況をあらかじめイメージし心の準備をする心構え、その意識が重要なのである。十分に準備しておけば、どのような状況になっても冷静にそして臨機応変に物事に対応できる。いわゆる適応能力が自然と身につく。また事前に危機(お客様の潜在的な不満)を察知できるようになるものである。

~まとめ~
 
 お店での優先順位は毎分毎秒変化する。例えばあるテーブルのお皿を片付けに行こうとした瞬間に入り口にお客様がお見えになったら、その新規のお客様の対応が優先事項になるかもしれない。またあるテーブルにワインを注ぎにいこうとした瞬間に他のお客様にお会計を頼まれたら、そのお会計が優先事項になるかもしれない。

 ただし、必ずしも自分がその仕事をするとは限らない。自分が取り掛かっている仕事の優先順位が明らかに高いなら、口頭やアイコンタクトで他のメンバー達にその仕事をお願いするか、もしくは直接お客様に「すぐにお伺い致します」とお伝えする事も出来る。メンバー全員が同じレベルで考えるここで重要なのは、「全てのメンバー達が同じレベルで物事を考えている」という事である。もし全てのメンバー達が一定量のシミュレーションを頭脳で行い、お店全体の流れを把握出来ていて、優先順位は毎分毎秒変化することを認識していれば、一言二言のキーワードとジェスチャーだけで意図は伝わる。メンバー同士のコミュニケーションは非常に効率の良いものとなるはずである。
 
 例えばお互いがテーブルの状況や流れを把握していれば、忙しい時などはメンバー同士がすれ違い様に「テーブル 24 番、デザート」と言っただけで、(そのテーブルにデザートメニューをお渡しし に行くのか、デザートのオーダーを伺いに行くのか、デザートのお皿をお下げするのか、デザートをキッチンに取りに行くのか等々)という事まで説明しなくてもお互いに理解できるはずである。しかしメンバー達が同じレベルで物事を考えていないと、このコミュニケーションは成り立たなく なってしまう。忙しい時にわざわざ足を止めて「テーブル 24 番のデザートオーダーをお伺いして、も しデザートも珈琲もお召しにならないようであれば、伝票をプリントアウトしてサイドステーションに置いておいてね」などと説明をしなければならないようであれば、自分でその仕事をした方がより早く確実にこなせるであろう。「テーブル 24 番、デザート」のキーワードに反応できなかったメンバーは、チームにとって役に立たない存在、ひいてはお客様に究極のサービスを提供しようと心を削っているメンバー達のチームワークを乱す存在となってしまう。少し厳しい言い方かもしれないが、これは真のプロのチームを築くのにおいては当たり前の、そして最低限のレベルであろう。

チーム全体としてより高いレベルでの仕事が出来るように、またより迅速にお客様に究極のサービスを提供できるような環境をチーム内に築き上げる為にも、常に頭脳をフル回転させながらシミュレーションを繰り返し、お客様の為、そしてチームのメンバー達の為に集中しよう。

著書:『世界一のレストラン』 より抜粋
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第一章 究極のサービスを提供する         お客様は十人十色、来店目的は...

【作業とサービスのバランスをとるチームワーク】  お店の営業が落ち着いている時と忙しい時では、同じレベルのサービスを提供するのは難しい。同じ作業も出来ない。この事は、ほとんどの方が経験を通して感じているだろう。どんなに最高の人材を揃え、効率...
04/03/2022

【作業とサービスのバランスをとるチームワーク】
 

 お店の営業が落ち着いている時と忙しい時では、同じレベルのサービスを提供するのは難しい。同じ作業も出来ない。この事は、ほとんどの方が経験を通して感じているだろう。どんなに最高の人材を揃え、効率の良いオペレーション・システムを確立したレベルの高いお店であっても、現実的にその限界を超えた忙しさは必ず存在する。成功しているお店であれば必ず経験しているはずである。そのような時間帯は、細かいサービスよりも業務的な作業を優先させなくてはならない。つまりお客様との会話で盛り上がったり、親切丁寧に料理やドリンク等の商品説明をするよりも、ひたすら仕込みや、洗い物や、テーブルのリセットや、お皿・シルバー・グラス等の補充をしたりと、作業に徹しなくてはならない時間帯が存在する。

 その時に一番大切なのは、それが何の為の作業かを理解して行動する事だ。つまり、「自分が今、サービスよりも作業を優先させているのは、今、自分がそうする事によってお店の営業がより円滑に回り、よりスムーズにこのピークを乗り切れる結果、お店全体としてより質の高いサービスを提供できる可能性が高まる。」と考えて行動できているのかが問われる。

 例えば、どんなに忙しい時であっても無理して洗い物を優先させなければならないのは、そのピークを乗り切る為のお皿、シルバー、グラス等を確保する為であったり、2回転目のピークに備える為にも今、洗い物をしなければ間に合わないような状況であったり、早めに洗い物をして冷えたお皿、シルバー、グラス等を用意しなくてはならない状況であったりと、その日、その時間帯によって様々な状況がある。そしてその異なる状況の中で、その作業を的確に迅速にこなす為には、その作業の意味を理解する事が非常に大事なのである。
 
また、そのような状況の時にも決して忘れてはならない。皆様にとっての最終目標は『一人でも多くの人に一つでも多くの感動を提供する事』である。決して作業の為の作業であってはならない。従って作業に徹している時でも、ずっと下を向いて黙々と作業をこなしているのではダメだ。五秒に一度は顔を上げて、お店の状況やお客様の表情、他のメンバー達の顔を見るなどして、いつでも臨機応変に行動できるようにしていれば、より安定して高いレベルでチームとして機能できるだろう。

~まとめ~
 
 お店のメンバーの人数・お客様の入店状況・客質・客層・季節・曜日・営業の時間帯などにより、優先順位、つまりメンバー達の動きは変わってくる。しかし、どのような状況であっても『一人でも多くの人に一つでも多くの感動を提供する』目標を忘れずに、サービスと作業のバランスを取りながら、常に考えて行動しよう。

著書:『世界一のレストラン』 より抜粋
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【チームとして機能する】勝ち続ける会社は、チームワークが良い  何かを成し遂げようと思った時、それを一人の力だけで成し遂げるのは至難の技であろう。もしかしたら成功するかもしれない。しかし「三人寄れば文殊の知恵 」と言うように、仲間同士で力を...
04/03/2022

【チームとして機能する】

勝ち続ける会社は、チームワークが良い

 
 何かを成し遂げようと思った時、それを一人の力だけで成し遂げるのは至難の技であろう。もしかしたら成功するかもしれない。しかし「三人寄れば文殊の知恵 」と言うように、仲間同士で力を合わせ知恵を出し合った方が良い結果が得られる可能性が高まるし、一人の力には基本的に限界がある。また全ての面において他の人間よりも優秀な人間など存在しない。この章のテーマである「チーム」について、プロスポーツの野球に例えて分かり易く説明しよう。
 
 野球には九つのポジション(投手、捕手、一塁手、二塁手、三塁手、遊撃手、左翼、中堅、右翼)があり、それぞれのポジションには、チーム内のそれぞれのポジションにおいての最高のプレイヤーがレギュラーの地位を獲得しているであろう。確かに投手も出来て一塁も守れて中堅も守れるようなマルチプレイヤーはごくごく稀にいるかもしれないが、その選手にしても一塁と中堅を同時に守る事は不可能である。野球は一人では出来ないし、全てのポジションにおいてチームで最高のパフォーマンスを上げられる選手などいない。
 
 チームには、全てのポジションにおいて平均点レベルの選手よりも、一つのポジションしか出来ないが、そのポジションにおいては最高のパフォーマンスを上げられる選手の方が求められる。毎年20 勝あげられるような選手であればバットなんか振れなくても良いし、世界で最も優れた野球人の一 人で、日本人の誇りでもあるイチロー選手のように毎年200本以上の安打を放つ選手であれば、本塁打など打てなくても良い(残念ながらイチロー選手は本塁打も狙って打つ事が出来る。あまりにも優秀な選手過ぎて、例えが悪すぎたか…)。毎年50 本の本塁打を打つスラッガーなら体重が200キ ロあって守備に難があっても問題あるまい。そして、このように真のプロフェッショナルな選手は、「自分のポジション(専門分野)においては必ず自分が最高のプレーヤー(人材)になる!」という 強い気持ちと、それに向かって努力をし続けるだけの強靭な体力と精神力を持っているものである。
 
 では年間20勝あげる投手と、一年中ヒットを量産し続けるイチロー選手と、本塁打王を約束されて いる巨漢がチームにいたら、果たしてこのチームは毎年ワールドシリーズを制し、世界一の座に君臨できるであろうか?また逆に、他の球団が喉から手が出るほど欲しがるような優秀な人材をこれだけ集めないと、世界一にはなれないのであろうか?
 
 答えは、両方とも「ノー」である。選手個々の能力はもちろんの事、監督の采配、ファンのサポート、球団のサポート、そしてメンバー同士の連携プレーなどのチームワークがあって初めて、チームは勝利を収められる。野球に限らず、どのようなスポーツ、どのようなビジネスでもそうであろうが、本当に強いチーム、常に勝ち続けているチームは、チームとして機能し続ける事の出来るチーム(会社)なのである。

 この話は飲食業界にも当てはまる。お店でいえば、料理人・バーテンダー・ウェイター・洗い場・マネージャー等、それぞれのポジション(役職)には、それぞれの異なる仕事(役割)がある。そしてそれぞれのポジションには、それぞれのプロがいる。例えば料理人はバーテンダーと同じ様な素敵なカクテルを作り、巧みなトークでお客様を陶酔させる事は出来ない。ウェイターに料理人と同じ様な芸術的なお皿を完成させる事は出来ない。マネージャーはプロの洗い場のメンバーのようにスムーズに洗い場を回し、鍋をピカピカに磨き上げる事は出来ない。
 
 つまり、それぞれのポジションにおいて、きちっと仕事の出来るプロのメンバー達が上手くコミュニケーションを図りながらお店全体として、『一人でも多くのお客様に一つでも多くの感動を提供する事』という強い気持ちを常に持ち続けていられるチームだけが、この競争の激しい飲食業界で生き残っていけるであろう。

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【『責任をとる』の定義】 自分が成し遂げようと思っている仕事・目標に対して、それを妨げるかもしれないリスクがもし0.1%でもあるのであれば、それらを一つずつ潰していき、自分のゴールに限りなく100%に近づけるよう、「事前に準備をしてミスその...
04/03/2022

【『責任をとる』の定義】

 自分が成し遂げようと思っている仕事・目標に対して、それを妨げるかもしれないリスクがもし0.1%でもあるのであれば、それらを一つずつ潰していき、自分のゴールに限りなく100%に近づけるよう、「事前に準備をしてミスそのものをなくそう」と意識する義務感を持つ事。

 一度失われたお客様の時間は、現在の文明社会においては、取り戻す事は出来ない。もし時間を取り戻す事が出来るのであれば、我々の過ちによってお客様に不快感を与えてしまった時間帯を取り戻す事によって、責任をとる事は可能である。しかし現代の文明社会においてはまだそれが出来ない以上、本当の意味での「責任をとる」という事は不可能なのである。

 事が起こってしまった後、つまり事後にお客様に謝罪をするなど何らかの形によって会社の誠意を示すという行為は、あくまでも「アフターケア 」である。確かにアフターケアは非常に素晴らしく意義のある行為であり、これらの優れた行為によって、お客様の不快感や怒りが逆に、会社への愛情に変わるケースも数多くあるし、アフターケアに力を入れた事によって競争優位を確立した会社さえあるほどである。
 
 しかしどれほど素晴らしい行為であるとは言っても、「アフターケア」は、あくまでもミスが起こるのが前提にある。もし、仮に全てのお客様に感動して頂く事が出来れば、つまりミスが一つもなければ、お客様に不快感を与える事はない。しかしそのような事は夢物語であって、現実はそんなに上手くはいかない。だからこそ「アフターケアを充実させて、一人でも多くのお客様に我々の誠意を… 」ではなく、そもそものお客様からのクレームの原因である、我々のミスをなくす事を意識しようではないか。
 
 これは、逆転の発想でも何でもない。ごくごく当たり前のそして当然の考えであろう。ハインリッヒの法則から導き出された推定によると、不満を持っているお客様のうち、実際にクレームを言ってくるお客様は僅かに4%であるという。では、残りの 96 %の不満を持ったお客様はいったいどうするのか?

 答えは単純である。もう二度とそのお店には行かなくなるだけである。このデータを頭に入れた上で、次に示すA店とB店を比較してみよう。A店では不満を持ったお客様が100人いた。その中でクレームを言って来たお客様4人(4%)に対し、何とかまた御来店して頂けるように誠心誠意を尽くした。その間、 96 人のお客様を永遠に失っていた事を知らずに ……。B店ではこのような悪夢が自分達のお店で起こらない様にと、メンバー達が常日頃からミスをなくそうと意識した。ある種の義務感を持ちながら誠心誠意働き、不満を持つお客様の数を100人から 10 人に減らした。果たしてA店とB店のどちらがよりお客様に支持されるお店となるか?
 
これはもう単純な確率の問題である。結果は言うまでもあるまい。もちろん皆様は間違いなく常日頃からミスをなくそうと意識されているだろうし、私も、皆様が日頃から手を抜いて働いているのではないか、と言っているのではない。あくまでも「意識」の問題であると述べているのである。例えば筋力トレーニングで言えば、同じ腕立て伏せをするのでも、テレビを見ながら腕立て伏せをするのと、三角筋・上腕二頭筋・広背筋を意識して腕立て伏せをするのとでは、筋肉のつき方が全く違うという。皆様のお仕事でも同じ様に、ミスをする前からアフターケアの事を意識するよりも、ミスそのものをなくす事だけに意識を集中させた方が格段にお客様に感動して頂ける確率は上がるであろう。

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【真のプロは常に反省する】 反省は失敗した時だけにすると考えるのが普通だが、真のプロフェッショナルは上手くいった後、成功した後にも反省する。『事前の準備』に関しては、多くの優秀な人間が重要視しており実践しているだろう。では『事後の反省』に関...
04/03/2022

【真のプロは常に反省する】

 反省は失敗した時だけにすると考えるのが普通だが、真のプロフェッショナルは上手くいった後、成功した後にも反省する。『事前の準備』に関しては、多くの優秀な人間が重要視しており実践しているだろう。では『事後の反省』に関してはどうか?残念ながら『事後の反省』の実施率はさほど高くない。実施していたとしても『事前の準備』ほどは時間をかけず、内容も薄いケースがほとんどだろう。さて、では何故このように自分の行動や結果を見つめ直したり反省したりする時間が大切なのであろうか?『事後の反省』が何故、それほどまでに重要なのかについて〈勉強、スポーツ、仕事〉の場面においてそれぞれ検証してみる。

勉強の復習が大切な理由

試験や授業の結果が悪かった時は、答えを見つめ直して問題を完璧に理解できるまで何度も読み返し、次回に同じ過ちを犯さないようにする為である。また、自分の予習のやり方の効率が悪かったのか、それとも自分の集中力が足りなかったのかなど、自分の落ち度・欠点を見つけ出す良い機会にもなるからである。試験や授業の結果が良かった時でも、もう一度問題を読み返して、果たして本当に自分は理解しているのか、それともたまたま正解できたのかを再度分析してみる。これによって問題に対する自分の理解度が上がり、さらにレベルの高い応用問題にも対応できる様になる可能性が高まるからである。

スポーツのクールダウンが大切な理由

パフォーマンスが悪かった時は、たまたま運が悪かっただけの時もあるしどこか身体の調子が悪かった可能性もある。もしくは単純に自分の力が足りなかったのか、調整を失敗したのかもしれない。このような時は時間をかけてクールダウン(ジョギング・柔軟体操・マッサージ・補強運動など)をして、身体の異常や変化に耳を澄ませる。またクールダウンは怪我や故障の防止・予防にもなる。何よりも身体と頭の記憶の新しいうちにパフォーマンスを見直したり反省したりする絶好の機会になるからである。

パフォーマンスが良かった時でも、いつもと変わらず同じ様にクールダウンをして、精神的にも肉体的にも冷静さを取り戻す。決して現状に浮かれたりはしない。「何故、自分のパフォーマンスは良かったのだろうか?今回は調整が良かったのかな?たまたま相手の調子が悪かっただけなのかもしれないな。果たして本当に周囲の人間が評価するほど自分のパフォーマンスは良かったのだろうか?もっと良いパフォーマンスは出来なかったのだろうか?さらにレベルの高いパフォーマンスをする為には何が必要なのだろうか?」等、自らの成功を再度分析する過程で成功の要因やパターンが見えてくるかもしれない。また敢えて自分の成功を否定する事によってさらに高いレベルのパフォーマンスが出来るようになるかもしれないからである。

仕事の事後の反省が大切な理由

お客様からクレームを頂いた時は、「何がいけなかったのか?何故そのような状況になってしまったのか?そのような状況を未然に防げなかったのか?防げたとしたら最も有効な手段は?」など徹底的に分析し、様々な違った状況をもう一度頭の中でシミュレーションしてみる。ここで大切なのは客観的に状況を分析する事である。そして、たとえどんな理由であろうとも他人を責める事なく、常に自分を責める。このように反省点を一つひとつ丁寧に見直す事により、さらに自分を高める機会になるからである。

お客様から感謝の言葉を頂いた時でも、それに浮かれていてはいけない。

1. 何故お客様は満足したのだろうか?
2. 自分のサービスのどこが良かったのだろうか?
3. 果たして、お客様は本当に心から 満足していたのだろうか?
4. さらにお客様に感動して頂けるようなサービスは出来なかったのだろうか?

等と、常に自分に対して厳しい評価をし、自分のサービスを徹底的に分析しよう。こうする事によって、ただ単にお客様を満足させるだけではなく、全てのお客様に感動して頂ける高いレベルのサービスを目指せるようになるからである。

 以上に『事後の反省』が大切な理由を幾つか挙げた。「そんな事は分かっているよ」と思っている方も多いのではないだろうか?しかし残念な事に、頭では理解していても実行している方は非常に少ない。結果が悪かった時に自分を責めたり反省したりするのはそれ程難しくはない。しかし結果が良かった時に敢えて自分を否定するのは容易ではない。だからこそ、それは大切な行為なのである。

まただからこそ、それが出来る人間と出来ない人間とには決定的な大きな差が生まれる。他人に認められたり他人に誉められたりした事を、敢えて疑問に思ったり否定したりするのには、精神的な強さが必要になる。いくら技術的に優れていても、精神的に弱い人間は向上心が低く、成長にも限界がある。

~まとめ~

どのような分野であろうと「その道を極めたい。真のプロになりたい。超一流の人間になりたい」と思うのであれば、是非この『事後の反省』の重要性を理解し、実施して頂きたい。最初は辛いと思う事もあるかもしれない。また、腹立たしく思う事もあるかもしれない。さらにはその行為が、時間の無駄で意味の無いものに思えてくる時もあるかもしれない。

しかし『事後の反省が習慣になるまで、つまり何にも考えずに自然に出来るようになるまで継続すれば、知らず知らずのうちに自分の能力が向上している事に気づくだろう。些細な事では決して動じない強い心、強い精神力が身についているはずである。以前の自分には出来なかったレベルの仕事やパフォーマンスが自然と出来るようになっている。そして過去には想像も出来なかったような、まったく次元の違うレベルで物事を考えるようになっているだろう。

著書:『世界一のレストラン』 より抜粋
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第一章 究極のサービスを提供する         お客様は十人十色、来店目的は...

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