26/03/2023
毎日メディアカフェのイベント「楽しく、真剣に災害に備える!」が3月20日、毎日ホールで開催されました。
東日本大震災から12年。干支が一回りして災害の記憶は少しずつ薄らいでいますが、近い将来起こりうる想定外の大災害への備えが必要です。そこで、毎日メディアカフェは、「東京大学×お笑い芸人」という異色のイベントを企画しました。
登壇者は、福島県双葉町で2020年に開館した「東日本大震災・原子力災害伝承館」の上級研究員を務める東京大学大学院の開沼博准教授、ごみ清掃芸人の滝沢秀一さん(マシンガンズ)、地図芸人の小林知之さん(火災報知器)、防災芸人の赤プルさんの4人です。
開沼さんは福島県いわき市出身。東京大学文学部卒業、同大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。2011年に『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)を出版、第65回毎日出版文化賞(人文・社会部門)を受賞しました。
滝沢秀一さんは1998年に西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。「THE MANZAI」2012、14年認定漫才師。2012年、定収入を得るために、ごみ清掃会社に就職。ごみ収集中の体験や気づきを描いた多数の著書、ツイッターが人気を集めています。
小林知之さんは大学で地理学を学び、高校社会の教職免許と地図地理検定資格を持つ異色の地図/地理芸人。アウトドア雑誌「ランドネ」(エイ出版)で地図コラム「机上トレッキング」を好評連載中。2021年に「いつの間にか覚えてる! 世界の国が好きになる国旗図鑑」を出版しました。
赤プルさんは茨城県常総市出身。 2003年女性ピン芸人としてデビュー。2011年先輩芸人の松丘慎吾と結婚。 2014年「チャイム」という夫婦コンビを組み、浅草漫才協会に所属。 茨城大使・常総市ふるさと大使。 茨城県警安心安全アンバサダー、防災士、整理収納アドバイザー、収育指導士。著書に「おめえら、いつまでも調子に乗ってんじゃねーかんな」。2015年、地元常総市が関東東北豪雨で被災した際、日頃の防災意識の重要性に気づき、2017年防災士に。 逃げ遅れを防ぐためのマイ・タイムラインの普及活動をするとともに、 整理収納アドバイザーという資格と、300軒以上のお片付け現場経験を活かし、主婦目線での安全で安心な暮らしを提唱し、簡単にできる在宅避難の備蓄の提案をしています。
はじめに、芸人3人がコント風に、防災を語りました。滝沢さんは「僕は11年間、ごみ回収をしていて、いろいろなごみを回収しました。災害ごみを回収したこともあります。台風19号(2020年)で多摩川が氾濫したときに、行けーと言われて、あらゆるものがごみになっていて、災害のことを考えなければいけないなと思いました」と話しました。小林さんは「僕は地図が好き、得意で、大学でもそういう勉強をしました。地図の会社で働きながら、芸人をしています。今日はハザードマップについて話します。ハザードマップは災害が発生したとき、危険と思われる個所や避難場所などをまとめた地図のことです。災害とは地震、津波、洪水、土砂崩れ、火山、竜巻などです。過去に災害が発生した場所を地図に落とすことで、危険性が分かります。地図は過去、未来を可視化する道具です。住んでいる地域のハザードマップを知ると、災害で避難する際の参考になります」と話しました。
赤プルさんは「旦那とのコンビ『チャイム』として浅草の東洋館というところで、漫才を披露させてもらっています。ビートたけしさんに、コンビ名を付けてもらいました。もっと激しい名前になるかと思ったら、かわいい名前になりました。私はお片付けのプロとしても働いています。おうちの中が安全でなければ逃げることができませんし、在宅避難も推奨されています。おうちの中を片付けてください。私が防災芸人になったのは、2015年の関東東北豪雨で逃げ遅れた人が多かったことがきっかけです。どうすれば、逃げ遅れなくてすむのかということで、マイ・タイムラインというのができました。ハザードマップを見て、どこに逃げるかとか、自分の家が浸水するかどうかなどのリスクを知ります。お片付けは防災だと思います。命を守ることにつながります。お片付けのメリットは探し物がなくなるから時間の節約になる、二度買い、無駄買いがなくなるというような経済効果があります。家の中が倒れてきた家具でけがをしたり、菜箸が飛んできてけがをしたという事例もあります。家に帰ったら、頭の上から落ちてくるものがないか、倒れてくるものがないかどうかを確認してください。高いところに家具をおかないという部屋が流行っています。避難が必要になることもありますが、在宅避難も頭に入れておいてください。避難グッズを置いておく必要があります。防災はお片付けから始めましょう」と呼びかけました。
続いて、小林さんが「災害避難すごろく」のやり方を説明し、参加者は4人1組で、すごろくを楽しみました。
この後、開沼さん、滝沢さん、小林さん、赤プルさんの4人がトークイベントをしました。コーディネーターは毎日メディアカフェの冨永浩敬が務めました。開沼さんは東日本大震災・原子力災害伝承館について、「伝承館は博物館のように展示をしています。展示は固定化しているけれど、その中でいろいろな人が交流したり、ワークショップをして考えていくという機会を作らないとあきられていきます。建物の奥に記念公園がつくられています」と説明しました。また、「災害はごみの問題です。東日本大震災で発生したごみは約4700万m3です。被災地のごみ処理場で処理すると、10年以上かかります。全国で協力して、3、4年で処理しました。首都圏直下地震だと2倍、南海トラフ地震だと5倍と推定されています。首都直下地震が起こったら、ごみをどこに持って行くか。富士山が噴火すると、もっとたいへんかもしれません」と指摘しました。滝沢さんは「東京では処理能力はふだんからパンパンですから、大災害があると、たいへんです」と同意しました。
災害避難すごろくについて、開沼さんは「すごろくをして、皆さん、良い雰囲気になったと思います。仲良くなっておくということが大切です。災害があったときに協力し合える関係を地域で作っておくことが重要です」と話しました。
開沼さんは「フェーズフリー」の考え方も示しました。「フェーズフリーは平常のフェーズと災害時のフェーズをフリーにするという考えです。ローリングストック法といって、ペットボトルを20本買っておいて、ずらしながら使っていく。災害があったとしても、20本残っています。電気自動車も電気をためておくと、緊急時の電気にできるというような考え方です。日常生活の中に防災システムが入っているというのが大事です」と話しました。
小林さんは「お勧めなのは、家と駅、駅と仕事場の道を、最短距離で行かずに、いろいろなルートで歩くことです。実はここに公園があったといったことが分かります。単純に楽しいです。まちの構造が分かります。いつもと違う道で駅から帰るということを、皆さんもやってみてください」と語りました。
赤プルさんは「私は普段の生活の中で、どう日常に落とし込めるかを意識してやっています。特別な防災用品を用意するのではなく、日常の中で防災につながるものを用意しておくということです」と話しました。
開沼さんは「高齢の方など、避難するほうが体調を悪くなることがあります。生活習慣病の症状が出てくる。災害の種類と、その人の状態を考えることが必要です。住民が避難した場合、避難元の自治体が面倒をみるという法的な立て付けになっています。宮城県の人が山形県に避難したら、宮城県の自治体の人が出て行って面倒をみます。東京で直下型地震が起こると、東京から隣県にサポートに行くことになります。想定外のことが起こる可能性があります」と懸念を示しました。
この後、質疑応答がありました。「親子100人ぐらいが宿泊する防災キャンプを10年していますが、参加したくなるような防災訓練のアイデアはありますか」との質問に、小林さんは「つくば市で廃校になった小学校を使ったイベントで、宝探しや謎解き、クイズにすることをしました。星座をマップにしたり、親子で探すということで、楽しんでもらいました。地図を使うと盛り上がりました。例えば、校庭に二宮金次郎の銅像があったとすると、それを地図記号で落とす。百葉箱とか井戸とか、消火栓などを地図に記入する。地図づくりをして、何があるかをおしゃべりします。皆で楽しめます」と答えました。赤プルさんは「マイ・タイムラインを大人たちで作ると楽しいです。何を持って行くかなどを話し合うと盛り上がります」と勧めました。