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●スケールダウンした戦略では勝てない[要旨]ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、小さな会社の戦略は、大企業の戦略を単に縮小したものではないということです。すなわち、大企業は豊富な経営資源(大きなバケツのバター)があるため、広い市...
14/09/2026

●スケールダウンした戦略では勝てない

[要旨]

ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、小さな会社の戦略は、大企業の戦略を単に縮小したものではないということです。すなわち、大企業は豊富な経営資源(大きなバケツのバター)があるため、広い市場(パン全体)を網羅できますが、資源の限られた小さな会社(ひとかけらのバター)が同じように広い市場を狙えば、強みが薄まり、顧客に価値を届けることはできなくなるので、小さな会社が顧客から選ばれるようになるためには、限られた資源をどこに集中させるかを決める経営戦略が適切であり、単に、大企業の真似を続けることこはリスクが高くなるということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、ユニフォームネクストの社長の横井康孝さんのご著書、「小さな会社は戦略が9割」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。(ご参考→ https://x.gd/hmy2i )前回は、横井さんによれば、大企業には明確な戦略が不可欠ですが、小さな会社にこそ戦略が必要であり、なぜなら、大企業は莫大な資本や知名度などの圧倒的な余力があるため、多少の戦略のミスがあっても致命傷にはなりにくい一方で、資源の限られた小さな会社が大企業と同じ土俵で戦えば勝ち目がないため、小さな会社こそ大企業よりも精度の高い事業活動を行わなければならないからだということについて説明しました。

これに続いて、横井さんは、規模の小さな会社は規模の大きな会社と同じ経営戦略をとってはいけないということについて述べておられます。「もうひとつ、絶対に注意しでおかなければならないことがあります。それは、小さな会社の戦略は、大企業の戦略を単にスケールダウンさせたものではないということです。想像してみてください。目の前に巨大な食パンがあります。大企業は、大きなバケツ一杯のバター(経営資源)を持っています。だから、パンの全面にバターを塗っても、しっかりと味を感じさせることができます。

しかし、僕たち小さな会社の手元にあるのは、ほんのひとかけらのバターです。それなのに、大企業と同じように『パン全体(広い市場)』に塗ろうとすれば、どうなるでしょうか。どれだけ一生懸命に塗り広げても、バターは薄まり、どこを食ベても全く味がしません。結局、パンの味しかしないのです。これが、『大企業の戦略をスケールダウンして真似ている』小さな会社の姿です。

自分たちのなけなしのバターを、どこに集中して塗るかを決めない限り、お客様に選ばれる価値(味)を作ることは不可能なのです。小さな会社には、小さな会社だからこそ取るベき戦略があります。その違いを理解せずに経営を続けること。それこそが、会社にとつて最もリスクの高い選択になってしまうのです」(43ページ)

横井さんの、「小さな会社の戦略は、大企業の戦略を単にスケールダウンさせたものではない」ということは、ほとんどの方がご理解されると思います。しかし現実には、大きな会社と同じ経営戦略をとろうとする中小企業は少なくないようです。このようなことが起きる理由として考えられることの1つ目は、私たちは日常生活において大企業の販売する製品を見ることが多いため、経営戦略といえば大企業が実践しているものと考えてしまうからではないか、ということです。その代表的な例が、商品の価格をできるだけ下げるという価格戦略です。この価格戦略のような体力勝負の戦略では、経営資源の少ない中小企業はすぐに敗れてしまいます。

それにもかかわらず、価格戦略をとろうとする中小企業経営者の方は少なくないのですが、では、なぜ勝つ見込みが少ない価格戦略をとろうとする経営者の方が多いのかというと、それは価格以外の面で競争力を高めることの難易度が、相対的に高いからだと思います。価格以外の要素には品質、接客、付帯サービス、会社のイメージなどがありますが、これらは一朝一夕に競争力を高めることが難しいからでしょう。とはいえ、優れた経営戦略をとることで業績を高めた中小企業の例は少なくありません。

例えば、東京都台東区でビニール傘の製造をしているホワイトローズ( https://x.gd/e3Ugt )という会社は、1本1万円以上する高級ビニール傘の需要を開拓し、従業員数が10名に満たない会社でありながら、年商約1億円を売り上げています。高級ビニール傘の需要は少ないものの、それをインターネットを通して受注することで、採算を得ることができるロットにしているそうですが、これはインターネットで受注するという販売戦略が奏功した事例です。

このような事例は、優れた経営戦略を見つければ、規模の小さい会社でもビジネスチャンスをつかむことができるということを示しています。すなわち、規模の小さい会社は大企業と同じ戦略では勝てないということ、そして、規模の小さな会社に向いた経営戦略を実践すれば大企業との競合を避け、安定した事業展開ができるということです。これらのことからも、現代は中小企業こそ中小企業に適した経営戦略を基に事業展開をすることが重要であると言えるでしょう。

2026/9/15 No.3562

#中小企業診断士 #経営戦略 #ポジショニング #ランチェスター戦略 #六角明雄 #弱者の戦略 #セグメンテーション #経営資源 #資源配分 #強者の戦略 #競争地位別戦略 #STP分析 #STP

●小さな会社は戦略のミスが致命傷に[要旨]ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、大企業には明確な戦略が不可欠ですが、小さな会社にこそ戦略が必要であり、なぜなら、大企業は莫大な資本や知名度などの圧倒的な余力があるため、多少の戦略のミ...
13/09/2026

●小さな会社は戦略のミスが致命傷に

[要旨]

ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、大企業には明確な戦略が不可欠ですが、小さな会社にこそ戦略が必要であり、なぜなら、大企業は莫大な資本や知名度などの圧倒的な余力があるため、多少の戦略のミスがあっても致命傷にはなりにくい一方で、資源の限られた小さな会社が大企業と同じ土俵で戦えば勝ち目がないため、小さな会社こそ大企業よりも精度の高い事業活動を行わなければならないからだということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、ユニフォームネクストの社長の横井康孝さんのご著書、「小さな会社は戦略が9割」( https://x.gd/hmy2i )を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、横井さんによれば、経営戦略は実効性の高さが会社の持続的な成長と利益を決定づけるため、変化の激しい現代において優れた経営戦略を立てることができるよう、経営者が体系化された経営戦略の知識を徹底的に学ぶことが求められるということについて説明しました。

これに続いて、横井さんは、規模が小さい会社ほど、経営戦略が大切であるということについて述べておられます。「『戦略』という言葉を聞くと、『それは大きな会社が考えることだ』という印象を持つ人は多いかもしれません。実際、それは間違いではありません。組織が大きく、複雑で、動かす資源が巨大だからこそ、大企業には明確な戦略が不可欠です。何千、何万という社員を抱え、多岐にわたる事業を展開する組織では、明確な判断基準がなければ、人・物・金・時間といった資源はあっという間に分散し、組織としての力を十分に発揮できなくなっていきます。

ただし、ここで非常に重要な、押さえておくベき現実があります。それは、『大企業は戦略が多少甘くても致命傷になりにくいが、小さな会社は戦略のミスが致命傷になりやすい』ということです。大企業には、長年かけて築いた圧倒的な余力があります。莫大な資本力、優秀な人材の層、社会的な知名度、そして強固な顧客基盤。たとえ経営陣の判断が少しズレても、現場の地力やプランドの蓄積で、ある程度の成果を出し続けることができてしまいます。

一方で、僕たちのような小さな会社はどうでしょうか。限られた資金、数少ない社員、まだ十分に知られていない商品やサービス。この状態では、失敗をカバーしてくれるような余力どころか、大企業と同じ土俵でまともに戦えば、そもそも勝ち目がありません。圧倒的に不利な状況を覆さなければならないからこそ、小さな会社には『戦略』が必要なのです。戦国時代の比喩をもう一度借りれば、大名は兵力に任せて力押しができます。多少の采配ミスがあっても、数の力で挽回できる。

一方で、兵が数百人しかいない武将が、場所も選ばず、相手も選ばず、闇雲に突撃すれば、結果は見えています。兵が少ないからこそ、勝てる場所を徹底的に選び、戦わなくていい相手とは戦わず、ここぞという一点に全軍を投入する。これが、小さな会社が取るべき戦い方です。小さな会社にとって、戦略は『あったほうがいいもの』ではありません。強者による消耗戦に巻き込まれず、自分たちが確実に勝てる領域で勝ち残っていくために必ず必要なものです。『うちはまだ小さいから、戦略なんて大層なものは後回しでいい』もしそう考えているのなら、それはあまりに危険な勘違いです」(43ページ)

横井さんは、まず、「組織が大きく、複雑で、動かす資源が巨大だからこそ、大企業には明確な戦略が不可欠」と述べておられます。さらに、「(経営資源の量が少ないために)圧倒的に不利な状況を覆さなければならないからこそ、小さな会社には『戦略』が必要」とも述べておられます。すなわち、会社の規模にかかわらず、経営戦略は不可欠ということです。では、規模の大きな会社と小さな会社では、どちらのほうが経営戦略の必要性が高いでしょうか。これは言うまでもなく、規模の小さな会社です。

横井さんが「大企業は戦略が多少甘くても致命傷になりにくいが、小さな会社は戦略のミスが致命傷になりやすい」とご指摘されているように、規模の小さな会社は、一度の失敗が会社の存続に与える影響が大きいからです。だからこそ、小さな会社ほど、より精緻な経営戦略を策定し、競争力を高めなければなりません。ところが、これも私がこれまで何度かお伝えしてきたことですが、規模の小さな会社の経営者の方の中には、「現場第一」や「お客様第一」といったスローガンを掲げ、経営戦略はその妨げになると考えているは経営者の方も少なくないと感じています。確かに、事業活動の現場やお客様との関係構築は重要です。

しかし、変化が激しく予測困難なVUCAの時代においては、それだけでは競争に敗れてしまうからこそ、経営戦略の重要性が高まっています。そして、経営戦略を策定することと、事業活動の現場や顧客を重視することは相反するものではありません。安定して事業を成長させることが、結果として事業活動の現場や顧客を大切にすることにつながるからです。「現場第一」や「顧客第一」と口にするだけの経営者の方は、経営戦略策定という経営者の本来の役割を果たすことから目を背けているだけなのではないかと思います。

2026/9/14 No.3561

#中小企業診断士 #経営戦略 #ランチェスター戦略 #六角明雄 #弱者の戦略 #経営資源 #人的資源 #組織的活動 #手元資金 #プロダクトポートフォリオマネジメント #強者の戦略 #VUCA #PPM

●考えの深さの差が結果の違いを決定する[要旨]ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、経営戦略は単に策定するだけでなく、実効性の高さが会社の持続的な成長と利益を決定づけるということです。さらに、変化の激しい現代においては、優れた経営...
12/09/2026

●考えの深さの差が結果の違いを決定する

[要旨]

ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、経営戦略は単に策定するだけでなく、実効性の高さが会社の持続的な成長と利益を決定づけるということです。さらに、変化の激しい現代においては、優れた経営戦略を立てるには、経験だけに頼るのではなく、経営者が体系化された経営戦略の知識を徹底的に学ぶことが求められるということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、ユニフォームネクストの社長の横井康孝さんのご著書、「小さな会社は戦略が9割」( https://x.gd/hmy2i )を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、横井さんによれば、多くの経営者は、目標や計画の策定を戦略と混同し、曖昧なまま会社を経営しているそうですが、創業期で売上が小さい段階であれば、戦略がなくても社長ひとりの能力だけで会社を成長させることが可能であるものの、会社の規模が拡大するにつれて、経営者が迫られる判断の数や複雑さは増していくので、この段階で戦略がないまま経営を続けると、成長が停滞することになるというこについて説明しました。

これに続いて、横井さんは、経営戦略は、単に策定すればよいのではなく、優れた経営戦略を策定しなければならないということについて述べておられます。「ここまでの話を聞いた上で、『自分はしっかり戦略を考えて経営している』、そう感じた経営者もいるかもしれません。ただ、戰略は、あるか、ないか、だけで決まるものではありません。戦略には、はっきりと実力の差が出ます。歴史を振り返れば、それは明らかです。

戦国時代の武将たちの多くは、決して能力が低かったわけではありません。勇猛果敢に戦い、必死に領民を守ろうと努カしていました。それでも、生き残る者と敗れる者が明確にわかれたのは、戦略実力の差があったからです。戦う場所の選び方、兵力の使い方、引くベき場面の見極め方。誰もが自分なりに勝ための戦い方を考えていましたが、その『考えの深さ』の差が結果の違いを決定づけました。経営も全く同じです。自分の戦略実力がどの程度のレベルにあるのか。それを冷靜に見極める必要があります。

しっかりと戦略を学ぴ、自社が取るベき道を深く理解して実行している会社は、年々確実に成長し、利益を積み上げています。コロナ禍のような不測の事態に見舞われても、戦略実力の高い会社は、事態の収束とともにどこよりも早く業績を回復させていきます。一方で、戦略実力が低いとどうなるでしょうか。戦略とは名ばかりで、その時々で耳にした話や思いつきを次々とやっているような経営をして、売上は増えても利益がついてきません。それは成長ではなく、ただの『膨張』です。一時的に大きな利益を出しても、そのあとが続きません。忙しいだけの会社と、強くなっていく会社。

この違いは、経営者がどれだけしっかり戦略を理解しているか。そして、その戦略を前提に経営しているか。その違いが、会社の未来を決定的に分けていくのです。では、どうすればその戦略実力を高めることができるのでしょうか。方法は二つしかありません。一つは、現場で失敗と成功を何度も繰り返しながら、長い年月をかけて体で覚えていくこと。もう一つは、先人が体系化した『勝つためのセオリー』を徹底的に学び、自社に当てはめる訓練をすることです。確かにかつては、時間をかけて試行錯誤を繰り返し、経験の中から戦略を磨き上げていく経営者もいました。

しかし、それは環境の変化が比較的ゆるやかで、失敗してもやり直すだけの時間的・資金的な猶予があった時代の話です。変化のスピードが速く、市場環境が短期間で激変する今の時代において、経験だけに頼って実力を高めようとするのは、あまりにもリスクが高すぎます。多くの中小企業にとって、経験が積み上がるのを待つというやり方は、もはや現実的ではありません。だからこそ、今の経営者には、経験を積むだけではなく『戦略の知識』を徹底的に叩き込み、自分の戦略実力をショートカットして引き上げることが求められているのです」(40ページ)

横井さんは、「戦略とは名ばかりで、その時々で耳にした話や思いつきを次々とやっているような経営をして、売上は増えても利益がついてきません。それは成長ではなく、ただの『膨張』です」と述べておられますが、これは、かつての横井さんご自身を指しておられるのだと思います。会社の黎明期の経営者の方は、とにかく売上を増やそうとします。それは自然なことだと思います。しかし、横井さんは、25歳のときから自社で働き始め、その後、懸命に働いて10年間で売上を6千万円から2億円に増やしたものの、同時に手許現金にあまり余裕がなく、借入金も売上と同じ2億円に増やしてしまいました。これでは、決して「戦略的な経営」をしてきたとは言えません。

だからこそ、中身がない戦略ではなく、実効性のある戦略を策定しなければならないわけです。では、どうすれば実効性の高い経営戦略を立案できるのかということについては、横井さんは、経営者が経験を積むことと、経営戦略に関する知識を学ぶことと述べておられます。これについては、極めて定石的な方法であり、王道はないということです。ここで、私は、経営者の方に会計的な知識を身に付けることをお薦めします。具体的には、日商簿記検定の3級の取得、できれば2級の取得が望ましいと考えています。

というのも、サンリオピューロランドを運営する、サンリオエンターテイメントの社長で、同社の業績をV字回復させたことで知られる小巻亜矢さんは、ご著書「逆境に克つ!-サンリオピューロランドを復活させた25の思考」( https://x.gd/Qrh3m )の中で、同社の館長に就任してから簿記を学んだと書いておられました。すなわち、小巻さんは、同社で働くまでは会計の知識がなく、当初、幹部として経営会議に出席したとき、提出された財務資料がまったく頭に入らなかったそうです。

そこで、通信教育で簿記を学んだ結果、数字に関心が持てるようになり、経営会議の財務資料について、今まで見えなかったものが見えるようになったことから、会計の知識を身に付けたことは、まるで眼鏡をかけたようなものと述べておられます。もちろん、会計の知識だけで、優れた経営戦略を立案できるわけではありません。でも、会計の知識がなければ、精緻な経営戦略を立てることはできません。横井さんも、「経験を積むだけではなく『戦略の知識』を徹底的に叩き込み、自分の戦略実力をショートカットして引き上げることが求められている」と述べておられますが、その「戦略の知識」の中で、会計の知識は大きな部分を占める必須の知識であると、私は考えています。

2026/9/13 No.3560

#中小企業診断士 #経営戦略 #財務分析 #管理会計 #ランチェスター戦略 #財務会計 #六角明雄 #弱者の戦略 #戦略的経営 #強者の戦略 #経営戦略策定

●目標や計画だけでは戦略的にならない[要旨]ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、多くの経営者は、目標や計画の策定を戦略と混同し、曖昧なまま会社を経営しているそうです。しかし、創業期で売上が小さい段階であれば、戦略がなくても社長ひ...
11/09/2026

●目標や計画だけでは戦略的にならない

[要旨]

ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、多くの経営者は、目標や計画の策定を戦略と混同し、曖昧なまま会社を経営しているそうです。しかし、創業期で売上が小さい段階であれば、戦略がなくても社長ひとりの能力だけで会社を成長させることが可能ですが、会社の規模が拡大するにつれて、経営者が迫られる判断の数や複雑さは一気に増していくので、この段階で戦略がないまま経営を続けると、成果や利益が出ない停滞の壁にぶつかることになるということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、ユニフォームネクストの社長の横井康孝さんのご著書、「小さな会社は戦略が9割」( https://x.gd/hmy2i )を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、横井さんによれば、同社を見学にきた多くの経営者と対話し、多くの中小企業経営者が真面目で優秀、かつ情熱的であるにもかかわらず、会社の成長軌道に大きな差がある現実を目の当たりにしたそうですが、その原因は努力や能力の差ではなく、「自社の身の丈に合った戦略」の有無にあり、伸び悩む経営者の多くは大企業の成功事例を熱心に勉強するあまり、リソースのない弱者であるにもかかわらず、資本力のある大企業がとるべき「強者の戦略」を真似して広い戦場へ出てしまい、自ら会社を疲弊させているからだということについて説明しました。

これに続いて、横井さんは、経営者の方の中には、事業計画を立てたことによって戦略的に経営をしていると考えてしまう方もいるということについて述べておられます。「戦略をしっかり考え、実行している経営者。あるいは、これまでに戦略を熱心に学び、『自分は戦略実力が高い』と自信を持って言える経営者は、いったいどれくらいいるでしょうか。これまで多くの経営者とお会いしてきましたが、戦略を正しく理解し、自社の勝ち筋を自分の言葉で語れる人は、特に中小企業の経営者には、正直それほど多くないと感じています。

本人は『戦略を持っているつもり』でも、よく話を聞いてみると、売上や利益の目標を掲げているだけだったり、経営計画をきちんと作っているだけだったりというケースが少なくありません。しかし、目標や計画と、戦略はまったく別のものです。『数字を決めているから』、『計画書を作っているから』という理由で、いつの間にか『自分は戦略的に経営している』と思い込んでしまう。

戦略という言葉を、どこか?味なまま使っている経営者は、決して少なくないのが現実です。なぜ、こうした状態が生まれやすいのか。その大きな理由のひとつは、会社の成長段階にあります。会社を立ち上げたばかりで、社員がほとんどおらず売上もまだ1億円に届かない段階であれば、戦略がしっかり練られていなくても、社長のバイタリティだけで会社を成長させることはできます。

むしろその段階では、戦略を学ぶ時間を取るよりも、がむしゃらにお客様を増やすことに時間を使ったほうが、結果的に会社の成長につながりやすい面もあります。しかし、規模が大きくなれば話は変わります。会社が成長すればするほど、人が増え、事業が広がり、社長が判断しなければならないことは一気に増えていく。判断の数も、その複雜さも、以前とは比ベものにならないほど増えていくからです。

そのときに、戦略がないまま経営を続けていると、どうなるか。努力はしているのに、成果が出ない。忙しくなっているのに、利益が増えない。社員は増えているのに、会社は強くなっていない。そんな『停滞』の壁にぶつかることになります。事業が思ったように成長しない。利益がなかなか増えない。その最大の理由は、努力不足でも、能力不足でもありません。戦略がないことです」(38ページ)

横井さんは、「戦略を正しく理解し、自社の勝ち筋を自分の言葉で語れる人は、特に中小企業の経営者には、正直それほど多くないと感じています」と述べておられますが、私がこれまでお会いしてきた経営者の方たちも同様に、自社の事業には自信があると述べつつも、それをきちんと言葉で示すことができる人は多くありませんでした。当然、漠然と頭の中にあるだけの構想では、現実の事業運営にうまく活用できません。では、なぜ、経営者の方はうまくいくと思いながら、それを明確化しない、または、明確になっていないにもかかわらず、それが戦略的に経営できると考えてしまうのでしょうか?

それにはいくつか原因があると思うのですが、私は、そのひとつは、経営者の方には成功体験があるので、その体験を活かすことができれば、これからも事業がうまくいくと考えてしまうからではないかと思います。その成功体験が、これからの事業にうまくあてはまることもあると思いますが、それを明確化し、環境分析や、資源配分の観点からも整合性がとれることが確認でき、さらに、それを会社内に周知できれば、よりよい成果に結びつくと思います。

しかし、経営者の方の頭の中に漠然とした状態で入っているだけではそれができないので、失敗する確率も高まることになります。もうひとつは、業績を伸ばすには、机の前で構想を練っているよりも、実際に動いている方が速いと考える方が多いからではないかと思います。もちろん、事業活動は実践することが基本ですが、活動の精度を高めるためには、その内容の妥当性をできるだけ事前に検証しておく方が、効率的に業績を高めることができます。

例えば、ユニフォームネクストと同業のワークマン( https://x.gd/BHUXf )は、高機能・低価格という4,000億円の空白市場を発見し、アウトドア製品などを一般客向けに販売する新店舗のワークマンプラスを2018年に開店しました。これにより、それまで高級品ばかりだったアウトドア市場で低価格帯の需要を確実に捉え、業績を大きく伸ばすことに成功しています。すなわち、低価格のアウトドア製品の需要に応える店を根拠をもって出店したことが、確実な成功につながりました。

別の事例では、立ち食いそば店のゆで太郎( https://x.gd/Cw0Lg )は、2004年からフランチャイズチェーン展開を開始し、店舗数を大きく伸ばして業界1位になりました。同社が業績を伸ばしている要因は、店内で仕込む、ひきたて、打ちたて、ゆでたての自家製麺へのこだわりや、原材料の工夫もありますが、ロードサイドに出店するという立地戦略が最も大きな要因のようです。

同社のライバルは、主に駅前やオフィス街に出店していますが、ロードサイドの立ち食いそば店はほとんどなかったことから、池田智昭社長は、ロードサイドはブルーオーシャンだと判断したそうです。これらの例の以外にも多くの成功事例があると思いますが、横井さんが述べておられるように、戦略を明確にして事業に臨むことは重要であるということに間違いはありません。

2026/9/12 No.3559

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●戦う場所を決めると会社は成長する[要旨]ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、同社を見学にきた多くの経営者と対話し、多くの中小企業経営者が真面目で優秀、かつ情熱的であるにもかかわらず、会社の成長軌道に大きな差がある現実を目の当た...
10/09/2026

●戦う場所を決めると会社は成長する

[要旨]

ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、同社を見学にきた多くの経営者と対話し、多くの中小企業経営者が真面目で優秀、かつ情熱的であるにもかかわらず、会社の成長軌道に大きな差がある現実を目の当たりにしたそうです。その原因は努力や能力の差ではなく、「自社の身の丈に合った戦略」の有無にあり、伸び悩む経営者の多くは大企業の成功事例を熱心に勉強するあまり、リソースのない弱者であるにもかかわらず、資本力のある大企業がとるべき「強者の戦略」を真似して広い戦場へ出てしまい、自ら会社を疲弊させているということでした。したがって、会社が伸びるかどうかは、どれだけ汗をかいたかではなく、戦う場所を決め、自社に合った戦略で舵取りができるかで決まるということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、ユニフォームネクストの社長の横井康孝さんのご著書、「小さな会社は戦略が9割」( https://x.gd/hmy2i )を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、横井さんによれば、同社で働き始めてから売上を6千万円から2億円に増やしたものの、借入金も2億円に膨らみ、自身のやり方に疑問を感じていたところ、ランチェスター経営を学んだことで「経営とは法則に基づいた合理的なもの」と認識できるようになり、会社の業績改善につながったということについて説明しました。

これに続いて、横井さんは、規模の小さい会社が、規模の大きな会社と同じような戦略を行うと、成果がでないということについて述べておられます。「上場後、僕は会社見学会などを通じて、多くの経営者の方々と直接話をする機会が増えました。会社見学会には、全国からこれまでに百社以上の経営者や幹部の方々に参加いただいており、その後の会食の場などで、経営におけるリアルな悩みや率直な相談を受けることも数多くあります。

そうした対話の中で僕が常に感じるのは、本当に多くの中小企業の経営者が、真面目に、そして真剣に会社と向き合っているという事実です。誰もが社員の幸せを願い、会社を成長させたいと熱望し、自分なりに必死に考えて行動しています。怠けている経営者や、適当に経営している人など、少なくとも僕の周りには一人もいません。それなのに、会社の成長の軌道には、残酷なほどに大きな差が生まれています。

売上はあるのに利益が残らず、資金繰りに追われている会社。社員のためにと様々な事業に手を出した結果、忙しさばかりが増して先が見えなくなっている会社。一方で、規模はまだ小さくても、特定の分野で圧倒的な存在感を放ち、着実に利益を出して伸び続けている会社もあります。数多くの経営者の話を聞けば聞くほど、会社が伸びるかどうかの違いは、決して個人の努力の量や能力の差だけではないと確信するようになりました。

実際、伸び悩んでいる経営者のなかにも、非常に優秀で情熱にあふれているかたはたくさんいます。それほどの実力と情熱がありながら、なぜ結果にこれほどの差がついてしまうのか。彼らが熱っぼく語る『これからやろうとしている事業計画』や『新しいアイデア』を聞くと、その理由がはっきりと分かります。

『この新しいプラットフォームで、全国の市場を一気に取りにいきます!』『業界の常識をひっくり返すような、画期的な新商品を展開します!』そんなスケールの大きな話を聞かされるたびに、僕はかつての自分を見ているようで、強いもどかしさを感じてしまうのです。どう見ても、それは資本力のある大企業がやる『強者の戦略』です。リソースのない弱者が、なぜわざわざ勝てない広い戦場に出て行こうとするのか。そんな言葉が喉まで出かかることが何度もありました。

彼らは優秀で真面目だからこそ、世の中に溢れるビジネス書や大企業の成功事例を熱心に勉強しています。しかし、その多くは『強者がさらに勝つための理論』です。弱者がそれを真似しても、あっという間に体力を奪われてしまいます。戦略を知らないがゆえに、優秀な経営者が、自ら会社を疲弊させる方向ヘアクセルを踏み込んでいる。『戦う場所を決めていけば、もっと確実に会社を成長させることができるのに』僕はそれを目の当たりにするたびに、そう痛感してきました。

会社が伸びるかどうか、そして社員を本当に幸せにできるかどうかは、経営者がどれだけ汗をかいたかではありません。どれだけ『自社の身の丈に合つた戦略』を理解し、それを前提に経営の舵取りをしているかで決まります。この事実を、一人でも多くの、かつての僕のように苦しんでいる経営者に伝えたい。それこそが、僕がこの本を執筆しようと決意した最大の理由です」(33ページ)

横井さんは、「戦略を知らないがゆえに、優秀な経営者が、自ら会社を疲弊させる方向へアクセルを踏み込んでいる」と述べておられます。私も、銀行職員時代や、経営コンサルタントとして中小企業の経営者の方とお会いした際、そのような方を何人も見てきました。2024年版の中小企業白書によると、中小企業の数は約336万社で、日本の企業総数の99.7%を占めているそうです。また、従業員数は約3,309万人で、全体の約70%にのぼります。

一方、日本の売上高に占める中小企業の割合は約44%と、数や従業員数に比べて低くなります。このような背景があるからこそ、私たちは普段、大企業の経営戦略を目にする機会が多いのでしょう。そのため、中小企業の経営者であっても、「大きな会社のような事業を展開したい」と考え、大企業と同じ「強者の戦略」で挑もうとしてしまうのは、ある意味で自然なことなのかもしれません。だからこそ、横井さんが指摘されるような、「この新しいプラットフォームで、全国の市場を一気に取りにいきます!」、「業界の常識をひっくり返すような、画期的な新商品を展開します!」といった戦略を選ぶ経営者が後を絶たないのだと思います。

しかし、これも横井さんが述べておられるように、「その多くは『強者がさらに勝つための理論』」です。正しいかどうかという以前に、中小企業には適さない戦略であると言えます。だからこそ、自社の内部環境(経営資源の量や経営資源の質)を分析し、自社に適した戦略をとることが重要です。そうすることで、経営者や従業員の努力が報われ、確実に高い業績をあげられるようになります。

ただ、経営者の方の中には「強者の戦略は中小企業に適さない」と理解しつつも、起業の目的が最初から決まっているため、経営戦略を検討する必要はないと考えている方もいます。しかし、そのような会社が起業当初から大企業と同じ土俵で戦って敗れてしまえば、せっかくの志が無意味になってしまいます。したがって、実践したいと考えている戦略をすぐに導入することが困難な場合は、それを近い将来の目標としつつ、まず、弱者の戦略からステップアップしていくことが堅実だと考えます。

ちなみに、横井さんが経営されているユニフォームネクストは、2025年12月期の売上高が98億円を超える大企業です。それにもかかわらず、横井さんは自社を「小さな会社」と考えているそうです。その理由について直接は述べておられませんが、私は、売上高が98億円に達した会社であっても弱者の戦略を実践し続けており、その効果が大きいと実感されているからだと推察します。一見すると、「弱者の戦略」を実践している会社は「弱者のまま」にとどまるように思えるかもしれません。

しかし実際は、「弱者の戦略」を実践しているからといって、その会社が弱者であるとは限りません。そう考えると、「弱者の戦略」は、本当は「小さな会社の戦略」と呼ぶほうが正しいのかもしれません。また、ユニフォームネクストの売上高98億円は単体で見れば大きな数値ですが、日本のマーケット全体から見れば、相対的にまだ小さな数字と言えます。

例えば、競合する会社のひとつであるワークマンの2026年3月期の売上(フランチャイズ店を含む)は約2,092億円に達しています。衣類の販売店は同社以外にも数多く存在することを踏まえれば、ユニフォームネクストが今後も「弱者の戦略」を継続していくのは確実でしょう。それが業績を高める最善の道であるならば、リスクを冒してまで無理に「強者の戦略」を選択する蓋然性は低いと、私は考えています。

2026/9/11 No.3558

#中小企業診断士 #経営戦略 #ポジショニング #ランチェスター戦略 #ターゲティング #六角明雄 #弱者の戦略 #セグメンテーション #組織的活動 #強者の戦略 #PPM #プロダクトポートフォーリオマネジメント #STP分析

●経営とは法則に基づいた合理的なもの[要旨]ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、同社で働き始めてから売上を6千万円から2億円に増やしたものの、借入金も2億円に膨らみ、自身のやり方に疑問を感じていたそうです。そんな中、ランチェスタ...
09/09/2026

●経営とは法則に基づいた合理的なもの

[要旨]

ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、同社で働き始めてから売上を6千万円から2億円に増やしたものの、借入金も2億円に膨らみ、自身のやり方に疑問を感じていたそうです。そんな中、ランチェスター経営を学んだことで「経営とは法則に基づいた合理的なもの」と認識できるようになり、会社の業績改善につながったということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、ユニフォームネクストの社長の横井康孝さんのご著書、「小さな会社は戦略が9割」( https://x.gd/hmy2i )を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、横井さんによれば、方向性が定まらないまま多角化を進めると、専門性や競合優位性を築くことができずに価格競争に陥り、この状態では授業員がどれだけ努力しても成果は積み上がらず、「報われない努力」が繰り返されるので、会社を成長させるために最優先すべきことは、限られた経営資源を「どこに集中させ、どこに使わないのか」という「選択と集中」の判断であるということについて説明しました。

これに続いて、横井さんは、戦略の欠如と曖昧な経営は避けなければならないということについて述べておられます。横井さんは、大学をご卒業後、総合スーパーの平和堂にご勤務の後、25歳のときから父親の創業したユニフォームネクストで働き始め、その後、懸命に働いて、10年間で売上を6千万円から2億円を超えるようになったそうです。その一方で、手許現金はあまり余裕がなく、借入金も売上と同じ2億円に増えており、疑問を感じたそうです。そんなとき、参加したある勉強会でランチェスター経営を知り、その後、ランチェスター経営を説く経営コンサルタントの小嶋隆史さんのメールマガジンを読み続けて行った結果、経営に変化が現れたということです。

「僕が35歳で社長に就任するまで、経営における『戦略』というものを本格的に勉強したことは一度もありませんでした。それまでの僕は、創業者である父が自身の経験や勘をもとに語る言葉を聞き、それを唯一の判断のよりどころとしてきました。『最初は赤字でもいいから安く入り込んで、あとから値段を上げてもらえ』、『とにかく数多く訪問して顔を売れ』。そうした昔ながらの営業手法を用いて売上を伸ばし、事業を広げ、人を増やしていくことこそが経営だと思い込んでいたのです。僕が戦略という考え方に初めて触れたのは、社長になってから参加した、ある経営の勉強会がきっかけでした。

正直なところ、最初から『これこそが真理だ』、『これでうちの会社は劇的に変わる』と確信していたわけではありません。ただ、借入が膨らみ続ける現状を打破するためには、これまでの自分の常識と一度基礎から経営の原則を勉強しては違う視点が必要だということ、そして、みる価値はありそうだと思っていました。その学びの中で、最も衝撃的だったのは『利益』に対する考え方でした。それまで『どうすればもっと売れるか』、『どうすればお客様が買ってくれるか』という売上のことばかりを考えていた僕にとって、戦略という枠組みは、経営の目的を根底から覆すものでした。

『会社を存続させるための条件は利益であり、利益を出すためには特定の分野で1位にならなければならない』。この事実に直面したとき、僕は自分がこれまでやってきた『なんでも売る』という行為が、自ら利益を削り、会社を弱体化せる最悪の選択だったことに気づかされたのです。そこから僕は、毎月開催される勉強会に継続して参加し、ランチェスター戦略をはじめとする経営の原理原則に関する書籍を読み漁りました。中でも、僕の思考の軸を形成するうえで最も効果があったと感じているのが、毎日欠かさず読んでいた経営コンサルタントの方のメルマガです。

その内容は、明日からすぐに使える売上アップのテクニックや、華やかな大企業の成功事例ではありませんでした。むしろ、『なぜ大企業と同じことをしてはいけないのか』、『なぜ的を絞らなければならないのか』といった、思考の根底を問い直すような地味で本質的な内容ばかりでした。最初は、それを読んでも『なるほど、理屈ではそうだよな』と思うだけで日々の業務に追われて終わる日も多くありました。しかし、3年間、毎日毎日同じような原理原則に触れ続けていくうちに、僕の中で少しずつ、しかし確実に視点が揃っていく感覚がありました。

それはパラダイムシフトと呼ベるような変化でした。以前の僕なら、売上が落ちれば迷わず『もっと営業の件数を増やそう』、『新しい商材を探そう』と指示を出していた場面で、『待てよ、このやり方は本当に利益につながっているのか?』、『これは強者の戦い方になっていないか?』と立ち止まって考えられるようになりました。新しい取引先を紹介されでも『それは本当に僕たちが今リソースを割くベき領域なのか』、『会社の力を分散させるだけではないか』という問いが、自然と頭に浮かぶようになったのです。

劇的な変化が起きたわけではありません。ただ、経営における判断のスビードと方向性が、戦略という羅針盤を手に入れたことで、少しずつ、しかし決定的に変わっていったのです。もちろん、本やメルマガで学んだことをそのまま盲信したわけでも、頭で理解したつもりになって満足したわけでもありません。学んだ法則を自社のビジネスに当てはめ、実際にやり方を変えてみて、数字の推移や現場の反応を注意深く観察する。『この絞り込みは合っている』、『このアプローチはズレている』、そうやって、自分の中で仮説と検証を繰り返していきました。

すくに目に見える結果が出たわけではありません。古い習慣を捨て、新しい基準で判断し直す作業は、かなり大変なものでした。ですが、実践し、検証し、他社の事例と照らし合わせていくプロセスの中で、戦略ヘの理解は血肉となっていきました。そして数年が経ち、過去を振り返ったとき、以前の僕たちがなぜあんなに苦しんでいたのか、なぜうまくいかなかったのかという理由が、まるで霧が晴れたようにはっきりと見えるようになりました。僕たちが苦しんでいたのは、決して努力が足りなかったからでも、運が悪かったからでも、業界の構造のせいでもありませんでした。

ただ単に、『正しい戦略とはズレた判断』を、無自覚に何千回、何万回と積み重ねていただけだったのです。『経営とは、感覚や気合ではなく、法則に基づいた合理的なものだ』。そう心底思えるようになったとき、僕の中で経営の見え方は完全に別物になっていました。その後、戦略を絶対的な軸として『やらないこと』を決め、戦う場所を一点に絞り込んで判断を重ねていく中で、当社の利益率は劇的に改善しました。そして、地方の小さなユニフォーム屋に過ぎなかった当社は、結果として2017年に東京証券取引所のマザーズ市場(現・グロース市場)への上場を果たすことができたのです」(27ページ)

横井さんが小嶋さんのメールマガジンを読み、経営戦略について学ぶなかで、会社の業績が変わっていったということについては、それほど疑問を感じる方はいないと思います。その一方で、私が疑問に思うのは、なぜかつての横井さんのように、「最初は赤字でもいいから安く入り込んで、あとから値段を上げてもらえ」、「とにかく数多く訪問して顔を売れ」といった、昔ながらの営業手法を用いて売上を伸ばし、事業を広げ、人を増やしていくことこそが経営だと思い込んでしまうのか、ということです。

しかも、ほとんどの経営者の方は、「経営戦略は大切だ」と肯定しつつも、実際には勘と経験に基づいた活動をしてしまいます。上から目線で恐縮ですが、このように勘と経験だけで事業活動に臨んでしまうのは、経営者の方が「経営」を学んでいないからだと、私は考えています。このような表現を使うと、まるで私が正しい経営を知っているかのように受け止められてしまうかもしれませんが、そういう意味ではありません。横井さんは「経営とは、感覚や気合ではなく、法則に基づいた合理的なものだ」ということに気づいたと述べておられます。私が「経営を学んでいない」と述べたのは、手法の正誤の問題ではなく、この「経営とは、感覚や気合ではなく、法則に基づいた合理的なものだ」という前提自体を認識していないという意味です。

つまり、経営者に就いた方の多くは、「経営」を分かっているつもりで、実は分かっていない、あるいは学ぶ機会がなかっただけだと感じています。これは、実にもったいないことです。事実、経営の本質が分かったことで、横井さんは2007年の社長就任からわずか10年で会社を上場させるほど、業績を伸ばすことができました。確かに、上場の要因は経営戦略だけとは言えませんが、経営戦略がどれほど重要であるかを理解するための、良い事例だと思います。

2026/9/10 No.3557

#中小企業診断士 #経営判断 #ポジショニング #ランチェスター戦略 #ターゲティング #六角明雄 #弱者の戦略 #セグメンテーション #資源配分 #戦略的活動

●戦略の選択と資源の集中が業績を高める[要旨]ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、方向性が定まらないまま多角化を進めると、専門性や競合優位性を築くことができずに価格競争に陥り、この状態では授業員がどれだけ努力しても成果は積み上が...
08/09/2026

●戦略の選択と資源の集中が業績を高める

[要旨]

ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、方向性が定まらないまま多角化を進めると、専門性や競合優位性を築くことができずに価格競争に陥り、この状態では授業員がどれだけ努力しても成果は積み上がらず、「報われない努力」が繰り返されるということです。さらに、世に溢れるノウハウも、経営戦略という土台がなければ効果は限定的であり、むしろ現場の混乱を招きかねないので、会社を成長させるために最優先すべきことは、限られた経営資源を「どこに集中させ、どこに使わないのか」という「選択と集中」の判断であるということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、ユニフォームネクストの社長の横井康孝さんのご著書、「小さな会社は戦略が9割」( https://x.gd/hmy2i )を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、横井さんによれば、中小企業の経営者から「毎日朝から晩まで一生懸命やっているのに、なかなか会社が良くならない」という声を聞くことがありますが、こうした努力が空回りしている状態は、会社に経営戦略がない、もしくは経営戦略がまったく機能していないことに原因があるということについて説明しました。

これに続いて、横井さんは、事業活動での日頃の努力が報われるようにするためにも、経営戦略によって経営資源を適切に配分することが大切だということについて述べておられます。「経営者は『売上を上げるため』、『会社を大きくするため』と信じてやっています。そうやって会社はどんどん忙しくなり、活気があるように見えますが、全体としての方向性はまったく揃っていません。あちこちに手を出しているため、どの分野でも専門性が育たず、競合他社に対する明確な優位性も築けない。結局は価格を下げて仕事を取るしかなくなり、利益率は下がる一方になります。

この状態では、社員一人ひとりがどれだけ汗水流して頑張っても、会社全体としての力やノウハウは蓄積されません。努力はしているのに、成果として積み上がらない。まさに『報われない努力』が延々と繰り返されてしまう構造的なが、ここにあるのです。世の中には、すぐに使える営業のノウハウや、組織を活性化させるためのマネジメントのテクニックを紹介するビジネス書が数多くあります。そうした情報自体が間違っているわけではありません。しかし、自社の戦略が定まっていない土台のゆるい状態で、表面的なノウハウだけを取り入れても、効果は極めて限定的です。

むしろ、新しい取り組みが増えることで現場はさらに混乱し、経営はより複雑になっていくことすらあります。会社を成長させるうえで、本当に最初に考えるベきことは『もっと頑張ること』でも『新しいノウハウを入れること』でもありません。自社の限られたお金と時間を、どこに集中させ、どこには使わないのか。この厳しい『選択と集中』の判断ができていない限り、どれだけ血の滲むような努力を重ねても、会社が強くなることは絶対にないのです」(19ページ)

前回、経営戦略の役割は「経営者と従業員の足並みを揃えること」とお伝えしました。これに加えて、もうひとつの重要な役割が「経営資源を適切に配分すること」です。順を追って説明すると、経営戦略を立案する手順は、まず「経営環境の分析」から始まります。経営環境には外部環境と内部環境の2つがありますが、内部環境の分析では、自社の経営資源の質や量を把握します。

そして、自社の経営資源を外部環境に照らし合わせ、どのような事業を行うべきかを検討しながら、適切な経営戦略を選択します。この過程で、どの事業に、どの経営資源を、どれくらい配分するかが明確になっていきます。ここまでは机上での作業ですが、根拠を持って経営戦略の選択と経営資源の配分を行うため、これらを実践することは、単に目の前の仕事を受動的にこなすよりも、確実に大きな成果へとつながります。

また、横井さんは「すぐに使えるノウハウやテクニック」に対して消極的な評価をされていますが、私も同意見です。テクニックやノウハウが対象とするのは、事業活動のいわば「枝葉」の部分です。新しいテクニックにまったく効果がないわけではありませんが、それでは根本的な課題は解決しません。すぐに簡単に効果が出ると思われがちなため、どうしてもテクニックに頼ろうとする人が多いのが現状です。しかし、横井さんもご指摘されているように、幹となる「経営戦略」と「資源配分」を適切に行わない限り、テクニックの効果は限定的なものにとどまるという点に注意が必要です。

2026/9/9 No.3556

#中小企業診断士 #経営戦略 #選択と集中 #六角明雄 #経営資源 #外部環境 #資源配分 #環境分析 #内部環境 #ERP #PPM #MRP #PPMマトリックス

●経営戦略で事業活動が研ぎ澄まされる[要旨]ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、中小企業の経営者から「毎日朝から晩まで一生懸命やっているのに、なかなか会社が良くならない」という声を聞くことがありますが、こうした努力が空回りしてい...
07/09/2026

●経営戦略で事業活動が研ぎ澄まされる

[要旨]

ユニフォームネクスト社長の横井康孝さんによれば、中小企業の経営者から「毎日朝から晩まで一生懸命やっているのに、なかなか会社が良くならない」という声を聞くことがありますが、こうした努力が空回りしている状態は、会社に経営戦略がない、もしくは経営戦略がまったく機能していないことに原因があるということです。

[本文]

ユニフォーム販売の専門会社のユニフォームネクストネクストの社長の横井康孝さんのご著書、「小さな会社は戦略が9割」( https://x.gd/hmy2i )を拝読しました。横井さんは、同書で、経営戦略を明確にすることで、事業活動が研ぎ澄まされるということについて述べておられます。「中小企業の経営者の方々と話していると、よく耳にする言葉があります。『毎日朝から晩まで一生懸命やっているのに、なかなか会社が良くならない』『社員のために待遇を良くしたいのに、あまり利益を残せない』この言葉を発する経営者に共通しているのは、決して怠けているわけでも経営能力が著しく低いわけでもないということです。

むしろ、誰よりも早く出社して現場に立ち、社員の家族のことまで真剣に考え、会社の将来に真っ正面から向き合つているような、真面目で誠実な人ばかりです。地方の中小企業であればなおざら、社長自身がトップセールスマンであり、現場の資任者でもあリ。一番の働き手であるというケースは珍しくありません。それほどまでに心血を注ぎ、文字通り身を粉にして働いているのに、会杜は思うように成長しない。毎年のように売上目標を追いかけ、少しずつ数字は伸びているはずなのに、なぜか手元に現金が残らない。社員は忙しそうに走り回っているのに、会社としての体力が一向についていかない。

こうした慢性的な停滞感が続くと、真面目な経営者ほど無意識のうちに自分を責め始めます。『自分がもっと現場に出て頑張らないといけないのではないか』『まだ自分の努力や気合が足りないのではないか』そして、さらに労働時間を増やし、気力で乗り切ろうとします。しかし、これは非常に危険な、そして真面目な経営者ほど陥りやすい最大の誤解です。こうした『努力が空回りしている状態』は、実は特別なものではありません。中小企業、とくに社員数が数名から数十名規模の会社では、ごく一般的に起きている構造的な現象です。

そして多くの場合、その原因は経営者の努力不足でも、気合が足りないからでもありません。問題の根本は、会社に『戦略がない』、もしくは『戦略がまったく機能していない』ことにあります。中小企業の経営現場には、『まずは動く』、『とにかく頑張る』、『四の五の言わずに売上を上げることが先決だ』という精神論が根強く残っています。もちろん、頭で考えてばかりで行動しなければ何も始まりませんし、日々の泥臭い努力が不要だと言いたいわけではありません。

ただ、明確な戦略という土台がないまま努力の量だけを積み重ねると、そのエネルギーは必ず四方八方に分散し、成果に結びつかなくなります。物理学の法則と同じで、いくら強い力を加えても、方向がバラバラであれば全体としての推進力はゼロになってしまうのです。戦略とは、極めてシンプルに言えば『自分たちはどこで戦い、どうやって勝つのかを決めること』であり、裏を返せば『どこでは戦わないのか、何をやらないのかを決めること』です。

ところが多くの中小企業では、この『やらないこと』が明確に決まっていないまま日々の経営が進んでいます。その結果、何が起きるかというと、目の前の仕事に追われ、少しでも利益につながりそうな話があれば深く考えずに手を出し、現場が回らなくなれば場当たり的に人を増やし、関連しそうな事業があれば次々と風呂敷を広げてしまうのです」(16ページ)

ビジネスパーソンはしばしば「経営戦略」という言葉を口にしますが、経営戦略の明確な定義はないようです。私は、事業活動を長期間にわたる旅に例えるなら、経営理念は「目的地」、経営戦略は「目的地までの経路」、経営戦術は船や飛行機、自動車などの「移動手段」、事業計画は「タイムスケジュールや役割分担」だと考えています。もちろん、これは私なりの捉え方であり、他にもさまざまな考え方があると思いますが、大きく外れてはいないはずです。

これらが明確になっていれば、多くのメリットが生まれます。その一つが、組織の足並みを揃えられる点です。事業活動は組織的な活動であるため、経営理念や経営戦略を共有することで、経営者と従業員が一丸となり、より効率的な活動が可能になります。横井さんも、「明確な戦略という土台がないまま努力の量だけを積み重ねると、そのエネルギーは必ず四方八方に分散し、成果に結びつかなくなる」と述べています。

その一方で、経営戦略を積極的に活用していない中小企業経営者は少なくありません。その理由は一つではないでしょうが、失礼を承知で申し上げれば、経営者の「慢心」も一因だと感じています。つまり、「自分の考える事業は間違いなく成功する、だから、あえて経営戦略を明確にしなくても、従業員が自分の指示に従っていれば事業は成功する」と考えているように見えるのです。正直なところ、そうした経営者が思い描く「経営戦略」の多くは、実際には「自分がやってみたい事業」や「販売してみたい商品」のイメージに留まっています。

すなわち、根拠に基づいて策定された戦略というよりも、単なる「主観的な願望」に過ぎないことが多いのではないでしょうか。もちろん、経営者が自信を持って進める事業ですから、まったく成功しないわけではありません。だからこそ、組織の足並みを揃えるために経営理念、経営戦略、経営戦術、事業計画を明確にすべきです。そうすれば、より早く成功にたどり着くことができるはずです。横井さんの「努力が空回りしている状態は特別なものではない」という指摘の通りにならないためにも、経営戦略を明確にすることは、これからの事業活動に欠かせないものです。

2026/9/8 No.3555

#マネジメント #中小企業診断士 #経営戦略 #事業計画 #経営理念 #企業理念 #経営計画 #六角明雄 #環境分析 #戦略策定 #組織的活動 #管理活動 #経営戦術 #戦略的活動

●クールジャパンはガバナンスが欠如[要旨]早稲田大学の入山章栄教授によれば、クールジャパン機構の累積赤字が540億円に達するなど、事実上の失敗に終わったのは、役所主導の事業は責任の所在が曖昧になり、適切にガバナンスが行われないからだというこ...
06/09/2026

●クールジャパンはガバナンスが欠如

[要旨]

早稲田大学の入山章栄教授によれば、クールジャパン機構の累積赤字が540億円に達するなど、事実上の失敗に終わったのは、役所主導の事業は責任の所在が曖昧になり、適切にガバナンスが行われないからだということです。これは役所主導の事業に限らず、あらゆる組織に共通する課題であり、事業を成功させるにはしっかりとしたガバナンスが行われることが欠かせません。

[本文]

早稲田大学大学院教授の入山章栄さんのポッドキャスト番組( https://x.gd/rECUxx )を聴きました。番組では、「経済産業省がクールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)を廃止の方向に動き出すと発表したが、2013年の設立以来、投資実績が振るわず、2025年度の累積赤字が540億円にのぼった」ことについて、入山さんが「役所の行う事業は失敗しやすい」と分析していました。

私はクールジャパン機構については詳しくないため、その是非を判断することはできませんが、役所の行う事業が失敗しやすい傾向にあるということには共感します。とはいえ、これは役所だけが批判されるべきものではなく、民間企業であっても同様の事例はあると思います。入山さんは、役所の行う事業はガバナンスが行き届かず、責任の所在が曖昧になるからだと述べておられます。当然、そのようなガバナンスの組織は、役所の行う事業に限らず、うまく行かないでしょう。

この「責任の所在が曖昧になると事業がうまくいかない」ということは、多くの方が感覚的にご理解できると思います。責任の所在が曖昧な組織は、活動が遅れていたり、成果が低かったり、あるいは誤った方向に進んでいたりするときに、迅速な軌道修正ができないからです。私は中小企業に1か月単位でのPDCAの実施をお薦めしているのは、まさに前述のような状態になることを防ぐためです。しかし、中小企業で実際にPDCAを行っている会社は少ないようです。

その理由は、事業計画を立てること、毎月業績を把握すること、そして業績を確認してその改善方法を考えることに、多くの労力がかかるからでしょう。しかし、計画なしに効率よく業績を高めるためには、PDCAを行うよりもはるかに多くの労力がかかります。結果的にはPDCAを行う方が効率的なのですが、それでも実施する会社が少ないのは、経営者自身にPDCAを行った経験が少ないことや、関心が薄いことが原因だと考えています。

ここで本旨から少しずれますが、私としては、PDCAやそれに代わる管理活動を行わないとすれば、それは経営者の役割を果たしていないということになると言えるでしょう。少し厳しい言い方ですが、経営者がPDCAなどの管理活動を行わず、成行的に事業活動に臨んでいるのであれば、そもそも経営者の本来の役割を投げ出していることになってしまいます。

話を戻すと、責任の所在が曖昧な組織は適切な管理活動が行われないため、成果が悪化してしまうのは当然です。では、これほど容易に理解できることが改善されない事例が多いのはなぜなのでしょうか。結局のところ、根底には「責任を負いたくない」という心理があるのだと思います。人間である以上、責任から逃れたいという心理が自然と働いてしまうのは仕方のないことかもしれません。

また、「事業が成功する要因は管理活動だけに限らない」という考え方もあるでしょう。確かに、どのような事業を選択するのかも成功の重要な要素です。しかし最近は、同じ業種であっても会社によって業績に大きな差が出る時代です。これは、どのような事業を選択するかということ以上に、組織をどのように管理・運営していくかという「管理活動」の重要性が高まっている証拠と言えます。ぜひ多くの方にこのポッドキャスト番組で入山さんのお話を聴いていただき、管理活動の重要性を改めて認識していただければと思います。

2026/9/7 No.3554

#マネジメント #リーダーシップ #中小企業診断士 #ガバナンス #内部統制 #品質保証 #六角明雄 #責任の所在 #経営品質 #PDCA #責任の明確化 #権限責任一致の原則

●松屋フーズが松屋銀座で成功した理由[要旨]6月10日に、老舗百貨店「松屋銀座」地下食品売り場内に、持ち帰り弁当専門「松屋PREMIUM」がオープンし、予想を越える売上を得ているそうですが、これはマーケティングの4Pの観点から適切な出店であ...
05/09/2026

●松屋フーズが松屋銀座で成功した理由

[要旨]

6月10日に、老舗百貨店「松屋銀座」地下食品売り場内に、持ち帰り弁当専門「松屋PREMIUM」がオープンし、予想を越える売上を得ているそうですが、これはマーケティングの4Pの観点から適切な出店であることがわかります。したがって、新たな事業に進出する際は、マーケティングの4Pのようなフレームワークを活用することが成功する確率を高めるためには大切と言えます。

[本文]

9月1日に、フリーライターの圓岡志麻さんが、東洋経済オンライン( https://x.gd/TBOJG )に、牛めし店をチェーン展開する松屋フーズが、百貨店の松屋銀座に出店したことに関する記事を寄稿しておられました。記事の要旨は、(1)2026年6月10日、銀座の中心部に、高級食材の神戸牛や国産黒毛和牛などを使用した牛めしを販売する、百貨店向けの店舗、「松屋PREMIUM」を出店した、(2)店舗限定の神戸牛牛めし(1,390円(税込))や国産黒毛和牛のうまトマハンバーグ(1,681円(税込))など、人気メニューの高級版を販売、(3)初日には1階の化粧品売り場まで列が伸びるほどの盛況ぶりで、オープン後も予想売り上げの約110%を達成するなど大健闘している、というものです。

では、なぜ予想を超える売り上げが得られたのかということについては、直接的な要因には言及されていないものの、松屋フーズ側が工夫したこととして、(1)これまで店舗を利用したことがなかった「牛めしを食べたことがない」という百貨店のコアな女性客層の開拓、(2)高級牛めしを開発し、さらに松屋銀座の持つ高級感や包装・店舗デザインの知見を活用して、百貨店の品質を実現したということが挙げられています。

ちなみに、今回の出店のきっかけは、昨年の松屋銀座開店100周年のときに、地下食品売り場の1週間限りの催事として、松屋銀座から松屋フーズに出店を打診したことでした。結果として「松屋銀座の食品売り場における催事の過去最高売り上げ」となったため、今度は松屋フーズから松屋銀座へ常設店としての出店を依頼し、今年、それが実現したようです。なお、松屋銀座は神田にあった松屋呉服店がルーツで、一方、松屋フーズは1966年に練馬区で開業した中華飯店松屋がルーツとなっており、店名以外に共通するものはなかったようです。

話を本題に戻すと、松屋フーズの松屋銀座への出店が成功したことについて、私はマーケティング・ミックスが適切だったからだと考えています。マーケティング・ミックスとは、米国の経営学者マッカーシーが1960年に公表した考え方で、マーケティングを最適化するための活動の組み合わせのことです。具体的には、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販売促進(Promotion)の4つの活動(4P)ごとに最適な施策を選択し、それらを組み合わせることでマーケティングの効果を最大化するというものです。

松屋フーズの松屋銀座への出店成功の事例にこれを当てはめると、以下のように考えられます。製品(Product):百貨店で販売する商品として品質を高め、包装や店舗でも高級感を出した。価格(Price):牛めしの価格は一般の松屋の3倍程度にしたが、松屋銀座の食品売り場の価格帯としてはリーズナブルに感じられる価格とした。流通(Place):ファストフード店を利用したことがない層が集まる百貨店に出店し、新たな顧客を開拓した。販売促進(Promotion):松屋フーズと松屋銀座という、店名が共通する会社同士のコラボという話題性で注目を集めた。

とはいえ、この私の分析は後付けであり、松屋フーズと松屋銀座が計画段階でこのようなフレームワークを使ったのかどうかはわかりません。ただ、当然のことですが、成行的に活動を行うよりも、根拠が明確になっている活動の方が成功の確率を高めることは間違いありません。

また、マーケティングの4Pのようなフレームワークを通して適切さを検討する中で、試みようとしている新たな活動をより研ぎ澄まされたものにすることが可能になるでしょう。今回、松屋フーズの松屋銀座への出店についてマーケティングの4Pを当てはめて分析してみましたが、事業計画の段階でこうした分析ツールを活用することは重要であると私は考えています。

2026/9/6 No.3553

#マーケティング #中小企業診断士 #マーケティング戦略 #ポジショニング #ターゲティング #六角明雄 #セグメンテーション #マーケティングの4P #マーケティングミクス #STP分析 #マッカーシーの4P

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104-0061

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