中小企業診断士六角明雄事務所

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●市場シェアよりも顧客シェアを拡大する[要旨]公認会計士の金子智朗さんによれば、従来の顧客開拓型マーケティングは新たな市場や顧客を開拓していくことが目的ですから、市場シェアの拡大を目指していますが、それに対して顧客維持型マーケティングは、同...
10/06/2026

●市場シェアよりも顧客シェアを拡大する

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、従来の顧客開拓型マーケティングは新たな市場や顧客を開拓していくことが目的ですから、市場シェアの拡大を目指していますが、それに対して顧客維持型マーケティングは、同一顧客における当社との取引額の割合を増やすことを目指しており、これは市場シェアの拡大ではなく顧客シェアの拡大を目指すということであり、市場が拡大しない分野にいては、顧客シェアの拡大を目指すことが望ましいということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」( https://x.gd/OmMzO )を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、かつては、新しい顧客を開拓するためのマーケティングが行われてきましたが、現在は市場が飽和しつつあることから、これまで取引のあった顧客と継続的に良好な関係を築き、同一顧客が何度も自社製品を購入してくれるようにすることが重要になる、すなわち、顧客開拓型マーケティングから顧客維持型マーケティングに移行していくことが望ましいということについて説明しました。

これに続いて、金子さんは、市場シェアよりも、顧客シェアを拡大することが大切ということについて述べておられます。「従来の顧客開拓型マーケティングは新たな市場や顧客を開拓していくことが目的ですから、市場シェアの拡大を目指しています。それに対して顧客維持型マーケティングは、同一顧客における当社との取引額の割合を増やすことを目指します。市場シェアではなく顧客シェアです。たとえば町の花屋さんを考えてみましょう。この花屋さんが売上を増やすにはどうしたらいいでしょうか。

一つの方法は市場シェアを伸ばすことによって売上を増やすことです。その場合は、この街における他の花屋さんと顧客の争奪戦を繰り広げることになります。そのために、たとえば母の日やお盆、お彼岸の時期にチラシなどを大量に配って特別セールなどをやるかもしれません。うまくいけば、客足が増え、売上も増えるでしょう。ただ、他のお店も同樣のことをすることは容易に考えられます。そうすれば、他店にもお客さんが流れますから、思ったほど客足は伸びないかもしれません。

その上、チラシなどの広告宣伝費は増加しますから、利益はむしろ減少する可能性もあります。もし他店が値下げでもしようものなら、価格競争に巻き込まれて、それこそ利益が減少します。また、売上が増えたとしても、絶えず他のお店と顧客の争奪戦をしていますから、売上の増加が一過性のもので終わる可能性も十分にあります。このような方法以外に、花屋さんが売上を増やす方法はもう一つあります。それは特定の顧客との取引量を増やすことです。

ある男性顧客が奥様の誕生日に花を贈ったとしましょう。花屋さんはその奥樣の誕生日を記録しておき、翌年からはその誕生日の1か月前にハガキを送るのです。そして、奥様の誕生日が近いこと、今までに贈った花の種類、今年のお薦めなどを知らせ、今年も花を贈る場合は電話一本で配達する旨を知らせます。このようにすれば、たった一度きりの取引で終わってしまう可能性のある顧客との取引を、継続的に反復させることができるようになります。

もし、その誕生日がお彼岸やクリスマスなどの他のイベントと近ければ、ハガキにはそれらのイベントにお薦めの花の広告と値段も載せておきます。そうすれば、毎年1回の取引量を、年間を通じて複数回にすることができます。さらに顧客との関係が深まれば、他の家族の誕生日や記念日を知ることもできるでしょう。そうなれば、さらに取引量は増加していきます。これが顧客シェアを伸ばすアプローチです。新たな顧客を追い求めるのではなく、既存顧客を維持し、取引量を増やしていくアプローチです」(71ページ)

金子さんのご説明からもわかる通り、顧客シェアは市場シェアの対義語です。かつて、シェアと言えば、市場シェアのことを指していました。しかし、経済環境が飽和状態になり、市場そのものが拡大しにくい時代になってきたことから、顧客シェアという考え方が注目されるようになってきました。それは、市場が拡大しない条件で、自社製品の販売額を増やそうとするには、既存の顧客への販売数を増やすしかないという考え方によるものでしょう。

これは裏を返せば、時代を問わず、市場が拡大している製品については、顧客シェアを狙うよりも、市場シェアを狙う方が得策ということでもあり、例えば、インバウンド需要による国内宿泊市場は拡大していることから、新しいホテルの建設計画は旺盛のようです。ちなみに、顧客シェアの計算式は、顧客シェア=特定の顧客の自社製品の支出額÷特定の顧客の特定の分野への支出額×100(%)とされています。

例えば、ある人が、1か月間で吉野家で5,000円、すき家で3,000円、松屋で2,000円の食事をしたときは、吉野家の顧客シェアは50%(=5,000円÷(5,000+3,000円+2,000円)×100%)ということになります。ただし、これは牛丼店という特定分野に限定した顧客シェアですので、その人の1か月間の外食の総額が2万円であれば、外食におけるその人の吉野家の顧客シェアは25%になりますし、その人の1か月間の食費が5万円であれば、食費におけるその人の吉野家の顧客シェアは10%ということになります。

話を戻すと、金子さんが挙げた花屋さんの例は、それほど複雑な仕組みではないと思います。すなわち、中小企業でも実践が可能な働きかけだと思います。ところが、一見すると、いわゆるどぶ板営業の方が労力が少ないと感じられることから、売上を増やそうとするとき、従来の方法を踏襲してしまう会社は少なくないと思います。ところが、前述したように、市場が拡大しない時代は、かつてのような方法は効果がないわけですから、顧客シェアを高める活動の方が、労力がかかるように見えて、比較的効率的な活動と言えると私は考えています。

2026/6/11 No.3466

#中小企業診断士 #六角明雄 #市場シェア #顧客生涯価値 #ライフタイムバリュー #顧客関係管理 #CRM #ワントゥワンマーケティング #顧客シェア #LTV

●マーケティングは開拓型から維持型へ[要旨]公認会計士の金子智朗さんによれば、かつては、新しい顧客を開拓するためのマーケティングが行われてきましたが、現在は市場が飽和しつつあることから、これまで取引のあった顧客と継続的に良好な関係を築き、同...
09/06/2026

●マーケティングは開拓型から維持型へ

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、かつては、新しい顧客を開拓するためのマーケティングが行われてきましたが、現在は市場が飽和しつつあることから、これまで取引のあった顧客と継続的に良好な関係を築き、同一顧客が何度も自社製品を購入してくれるようにすることが重要になる、すなわち、顧客開拓型マーケティングから顧客維持型マーケティングに移行していくことが望ましいということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」( https://x.gd/OmMzO )を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、財務会計は、製品の原価を把握できますが、会社の利益は顧客の購入意思決定によってもたらされるという観点からは、財務会計だけでは適切な経営判断はできないことから、管理会計によって顧客ごとの利益額を把握しなければ、適切なマーケティングを行うことはできないということについて説明しました。

これに続いて、金子さんは、市場が飽和しつある現在は、顧客開拓型のマーケティングから、顧客維持型へのマーケティングに移ることが望ましいということについて述べておられます。「従来の伝統的なマーケティングは、市場におけるチャンスを発見し、狙った市場に対して製品を投入するという考え方です。このようなマーケティング・パラダイムは、基本的に新規顧客を開拓することに重点が置かれています。新しい市場機会の発見や新規顧客の開拓は企業の成長にとつて必要不可欠です。

また新規ビジネスや新規製品の場合は、新たに顧客を開拓するしかありません。ですから、伝統的な顧客開拓型マーケティングの必要性がなくなることはありません。ただ、このような顧客開拓型マーケティングは、ぬり絵のまだ塗られていない白い部分を探し続けるようなものです。これだけ多くの企業がさまざまな製品によってぬり絵に色を塗り、場合によっては何重にも重ね塗りしてきたことを考えると、新たに白い部分を探し出すのはどんどん難しくなってきているはずです。

そこで、市場全体をぽやっと捉えるのではなく、個々の顧客をターゲットにし、同一の顧客から得られるキャッシュ・フローを最大化しようという考え方が出てきました。そのためには、一度引き付けた顧客と継続的に良好な関係を築き、同一顧客が何度も自社製品を購入してくれるようにすることが重要になります。これは顧客開拓型マーケティングに対して、顧客維持型マーケティングと言うことができます。

ワン・トウ・ワン・マーケティングやリレーションシップ・マーケティング、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)などが顧客維持型マーケティングの具体例です。企業の立場から見た顧客維持型マーケティングのポイントは、優良顧客の発見とその顧客との継続的な関係性の構築と維持です。良好な関係を築くことによって、優良顧客を自社のファンとでも呼ぶベきロイヤルティを持った顧客にしていくことです」(70ページ)

CRMの事例はたくさんあるのですが、私は、まず、高知県高知市にある自動車販売外車のネッツトヨタ南国の事例を思い浮かべます。同社では、顧客データベースを充実させていおり、店内にいる従業員の方は、自動車で来客があったときは、まず、自動車のナンバーを見てデータベースを検索するそうです。そして、その自動車のオーナーの名前と予約内容をインカムで他の授業員の方に伝えるそうです。

そこで、その自動車を出迎えた従業員の方は、「ようこそ○○様、本日はオイル交換でご来店ですね」と伝えることができるそうです。その他に、顧客ごとに、前回の来店時に飲んだ飲み物や、子どもが見たビデオも記録しているので、きめ細やかな接客ができるようにしているそうです。こうしたプロセス管理をしていれば、サービスの質も高くなるということは、誰でも容易に理解できると思います。

しかし、ここで、「ネッツトヨタ南国を見習って、CRMを構築しましょう」と伝えても、現在は、CRMはそれほど真新しい手法とは感じてもらえないと思います。市場飽和は、ほとんどの経営者の方が感じていることであり、だからこそ、より深い顧客対応の必要性を理解していると思います。しかしながら、CRMを実践している会社の割合は、依然として低いと思います。それは、価格戦略のところでも述べましたが、価格引き下げは実践が容易な対応策であることから、多くの会社が安易に実践してしまいます。

でも、特に中小企業は、それでは利益を得ることが難しく、まずます業績を悪化させてしまいます。逆に、CRMど導入し、それが奏功していれば、価格を引き下げる必要性が低くなります。確かに、CRMの導入は、少し労力がかかる面もありますが、情報技術の進展によって、かつてよりも導入が容易になってきています。こう考えると、経営者の方がCRMを導入し実践するかどうかという決断に帰結するということになると私は考えています。

2026/6/10 No.3465

#マーケティング #中小企業診断士 #デジタルトランスフォーメーション #データベース #顧客満足 #六角明雄 #DX #顧客体験価値 #CRM #ワントゥワンマーケティング #顧客シェア #CX #LTV

●管理会計なしにマーケティングは不可能[要旨]公認会計士の金子智朗さんによれば、財務会計は、製品の原価を把握できますが、会社の利益は顧客の購入意思決定によってもたらされるという観点からは、財務会計だけでは適切な経営判断はできないことから、管...
08/06/2026

●管理会計なしにマーケティングは不可能

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、財務会計は、製品の原価を把握できますが、会社の利益は顧客の購入意思決定によってもたらされるという観点からは、財務会計だけでは適切な経営判断はできないことから、管理会計によって顧客ごとの利益額を把握しなければ、適切なマーケティングを行うことはできないということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」( https://x.gd/OmMzO )を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、ルイ・ヴィトンの製品が高いのは、原価が高いからではなく、製品の価値が高いからであり、製品を値上げし、利益を増やそうとする場合は、原価ではなく価値を高めなければならないということについて書きました。

これに続いて、金子さんは、利益は顧客別に管理すべきということについて述べておられます。「くどいですが、利益の源泉は顧客です。製品ではありません。ところが、会計の仕組みとなると、圧倒的多数の会社は製品別に利益を管理しています。顧客別に利益を管理している会社はほとんど見たことがありません。なぜ、そこまで多くの会社が製品別の利益管理をしているのでしょうか。(中略)会社における会計管理の仕組みが制度の影響を強く受けているとはいえ、根底には『利益の源泉は製品』という考えが、意識的か無意識的かを問わず、根強く横たわっているように思います。

逆に、カタチは人の思考を無意識のうちに規定します。製品別の利益管理というカタチを使っていると、知らず知らずのうちに、『利益の源泉は製品』と思うようになってしまいます。だから、会計に限らず、カタチは非常に重要です。その中でも会計は、数字という有無を言わさぬ強力なカタチをしていますから、そのカタチを間違えると人の行動が間違った方に進んでしまいます。そもそも、会計には2つの種類があります。

1つは制度的な決算を目的にした財務会計です。何も言わずに『会計』といえば、通常はこの財務会計を指すのが普通です。もうーつの会計は、管理会計です。これは文字通り、経営管理のための会計です。経営管理において用いるベきはこの管理会計です。財務会計ではありませんし、はっきり言って、財務会計では経営はできません。管理会計は経営管理のための会計ですから、拠り所とすベきは制度ではありません。

その会社が経営において何を重視しているかということです。大袈裟に言えば、経営思想であり価値観です。利益の源泉が顧客であるならば、管理会計は顧客別に利益を管理できるカタチにすベきです。『何がどれだけの利益をもたらしているか』ではなく、『誰がどれだけの利益をもたらしているか』が見えるようにするのです。そうすることによって、顧客に焦点を当てた戦略的なマーケティングも初めて可能になります」(50ページ)

言うまでもなく、財務会計は、事業活動で得られた利益を報告するための会計であることから、経営者が行う意思決定に必要な情報を十分に提供することはできません。これは、財務会計の目的が、異なることによるものであり、財務会計に問題があるということではありません。

一方で、金子さんのご主張は、利益は、顧客の意思決定によって会社は利益を得ることができるということですので、そのよううな観点から鑑みれば、製品を製造するためにどれくらいのコストがかかっているのかをどれだけ分析しても、顧客の購入の意思決定を促すための方法を見つけることはできないということは事実です。そこで、「誰がどれだけの利益をもたらしているか」を管理会計によって明らかにすべきという金子さんのご指摘は極めて妥当と言えます。

この、管理会計による顧客の分析に関して私が思い浮かぶ事例は、経営コンサルタントの山田修さんが、山田さんのご著書、「プロフェッショナルリーダーの教科書」( https://tinyurl.com/yck47hxm )で述べておられた、ABC分析です。山田さんは、かつて、業績を立て直すために、米国の製紙会社のミードの日本法人の社長に就任したとき、同社の顧客は120社あったそうですが、これを販売額で、Aグループ5社、Bグループ25社、Cグループ90社に分けたそうです。

AグループとBグループについては、そのグループに入れる会社の基準はわからないのですが、Cグループは年間販売額が1,000万円以下の会社にしたそうです。そして、山田さんは、C社には営業マンを訪問させず、すべて、電話で注文を受けるようにしたそうです。また、同社がCグループの会社の工場に設置している包装機が故障しても、自社の従業員を派遣して修理させることはせず、自社が紹介したメンテナンス会社に顧客から電話してもらい、修理代も顧客に負担してもらうようにしたそうです。(ミードは、複数の缶飲料などをまとめて手にかけてぶら下げて持てるようにする紙パックを販売しており、顧客の工場には製品をパック詰めする機械を貸していたようです)

その結果、1年以内に、Cグループの顧客のうちの半分が、取引解消になったそうです。しかし、このような方針転換で、山田さんが社長に就任する前年の同社の業績は、売上が約40億円、経常赤字は約22億円でしたが、社長に就任した後の半年間で、売上は前年比で20%改善し、利益も黒字になったそうです。そして、翌々年から、売上高経常利益率は8%に改善したそうです。

このミードの事例がどんな会社にもあてはまるとは限りませんが、同社では製品そのものを変えずに、管理会計で分析した結果に基づいて、販売先を選別しただけで業績が改善しました。このように、管理会計で顧客を分析することは、事業改善のための重要な要素であることは間違いないと言えるでしょう。

2026/6/9 No.3464

#中小企業診断士 #意思決定 #経営判断 #管理会計 #財務会計 #六角明雄 #原価計算 #原価管理 #顧客関係管理 #CRM #採算管理 #ABC分析 #パレート分析

●原価ではなく価値が高いから値上できる[要旨]公認会計士の金子智朗さんによれば、ルイ・ヴィトンの製品が高いのは、原価が高いからではなく、製品の価値が高いからであり、製品を値上げし、利益を増やそうとする場合は、原価ではなく価値を高めなければな...
07/06/2026

●原価ではなく価値が高いから値上できる

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、ルイ・ヴィトンの製品が高いのは、原価が高いからではなく、製品の価値が高いからであり、製品を値上げし、利益を増やそうとする場合は、原価ではなく価値を高めなければならないということです。さらに、利益を増やそうとする場合、価格を下げる方法は後から汗をかくことになるので、先に汗をかくことになる価格を上げる方法の方が望ましいということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」( https://x.gd/OmMzO )を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、他社との競合のために、製品価格を下げることがありますが、これは、容易に実行できるものの、価格を下げた状態から利益額を維持・増加するには、かなりの販売数量を増やす必要があるので、安易に価格を下げることは避けるべきだということについて説明しました。

これに続いて、金子さんは、製品価格を値上げすると利益を増やすことができるが、そのためには、製品の価値を高めることが前提になるということについて述べておられます。「一方、値上げ戦略はどうでしょうか。一般的に、値上げに対しては多くの企業が購躇します。なぜなら、値下げと違って値上げには理由が必要だからです。納得できる理由がなければ、顧客は怒ります。もしくは、怒ることもなく默って去っていくことでしょう。顧客が納得できる理由とは競合製品とは違う何かです。

性能が優れている、色がいい、デザインがおしゃれなど、競合製品とは違う何かがあって、かつ、その違いに価値を認めてもらえなければ、値上げは容認されません。そこには生みの苦しみがあります。しかし、ひとたび何らかの差別化要因を創り出し、それを価値として顧客に認めてもらえれば、高い価格も正当化されます。差別化要因が製品や企業のイメージと結び付けば、プランドという価値になります。

価格とは顧客が製品に対して認めた価値の表れです。コストが高いから価格を高くするのではありません。価値が高いから価格を高くできるのです。企業側から見れば、価格は顧客に対する企業からのメッセージでもあります。本当に価値があって自信がある製品なら、むしろ高い価格で売るベきです。その方が、『高級品を買った』という顧客の満足感にもつながります。安ければいいというものではありません。価値があれば、価格はコストに関係なく決まりますから、コストをはるかに上回る価格で売ることができます。

そうなれば、利益の増大という点では非常に有利です。いわゆるブランド品のバッグや財布を考えてみてくだきい。確かにいい材料を使っていますし物もしっかりしていますから、それなりにコストはかかっているでしょう。しかし、コストが高いからあの価格なのではありません。それでもみんなが買うから、あの価格なのです。実際、ルイ・ヴィトンやタグ・ホイヤーなどを傘下に持つ仏モエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)の原価率はわずか35%しかありません。

同じく時計を扱うセイコーやシチズンの原価率は67%、G-SHOCKなどの比較的安価な時計を展開するカシオ計算機は、日本の製造業平均を若干下回る77%です。プランド品の価格がいかにコストと無関係に決まっているかが分かるでしょう。値上げ戦略の行きつく先は、このようなプランド戦略です。それができれば、利益は非常に楽に出るようになります。値下げ戦略は、値下げをすること自体はいとも簡単にできますが、それによって利益増大という最終目的を達成するためには、後で営業が走り回って売りまくらなければならない戦略です。

一方の値上げ戦略は、値上げというその行為をするために、まず理由を考えなければなりません。理由というのは、他社とは違う何かです。それは頭を使う楽ではない仕事かもしれませんが、理由を創り出せれば、最終目的である利益増大は非常に楽になります。値下げ戦略と値上げ戦略を対照的に言えば、値下げ戦略は、『先に楽して、後で肉体的に汗をかく戦略』であるのに対し、値上げ戦略は、『先に頭で汗をかいて、後で楽する戦略』と言うことができます。どちらがいいと考えるかは、人それぞれだと思いますが、やはりまずは先に頭で汗をかきたいところです」(46ページ)

ほとんどのビジネスパーソンは、「ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではなく、穴である」という、米国の経済学者の言葉をご存知と思います。すなわち、製品を買う人は、製品そのものではなく、製品から得られるベネフィットに対して代金を支払うという考え方です。この考え方は、現在は、「モノ消費」から「コト消費」に移りつつあるということであり、最近は、顧客体験価値(CX)という言葉でも表現されるようになってきています。

したがって、金子さんが、「価格とは顧客が製品に対して認めた価値の表れ」と述べていることは、現在のビジネスの基本的な考え方ということでもあります。その一方で、未だに、「顧客は自社の製品を評価してるから購入してくれている」と考えている経営者の方は少なくありません。したがって、自社の製品のベネフィットはどういうものであるのかを分析し、それを高めたり顧客に訴求したりすることが大切であり、そのことが、製品の価値を高め、利益を増やすことになります。

このような活動の事例としては、獺祭があげられると思います。同社会長の桜井博志さんは、かつて、同社が知名度が低かったことから、販売店で取り扱ってもらえず、直接、東京都内の居酒屋へ出向いて販売したそうです。さらに、「どのような料理に合うか」、「どう保管すれば味が落ちないか」を直接伝えることで、獺祭の評価を高めていったそうです。同社にとっては、卸売店や飲食店の知識不足が、同社製品の価値を下げる要因になっていたことから、これらを改善することで正しく顧客に認識してもらえるようになったと考えることができます。

2026/6/8 No.3463

#中小企業診断士 #ブランド戦略 #値上げ #ベネフィット #六角明雄 #コト消費 #商品価値 #顧客体験価値 #CX

●値下は簡単だが利益維持は相当に難しい[要旨]公認会計士の金子智朗さんによれば、他社との競合のために、製品価格を下げることがありますが、これは、容易に実行できるものの、価格を下げた状態から利益額を維持・増加するには、かなりの販売数量を増やす...
06/06/2026

●値下は簡単だが利益維持は相当に難しい

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、他社との競合のために、製品価格を下げることがありますが、これは、容易に実行できるものの、価格を下げた状態から利益額を維持・増加するには、かなりの販売数量を増やす必要があるので、安易に価格を下げることは避けるべきだということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」( https://x.gd/OmMzO )を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、かつて、iPadは、OSをつくりなおしたことで、動きが軽くなり、顧客から支持を得ることができましたが、このように、前例を踏襲しようとすると顧客からの支持を得ることが難しくなるので、違うモノを売ることをもっと考えるべきだということです。

これに続いて、金子さんは、価格を引き下げて売上を増やそうとすると、利益は減少するということについて述べておられます。「利益の源泉に関する誤解という意味では、価格についても誤解が多いものです。たとえば、多くの企業がよくやる値下げについて考えてみましょう。値下げをするのは、売れ残った商品の在庫処分が目的のこともありますが、一般的には値下げによって需要を刺激し、利益の増大を図るというのが典型的な目的の一つでしょう。その場合は、値下げが利益の源泉だと考えていることになります。

価格を下げただけでは売上が減るだけですから、利益を増やすためには、値下げによって需要を喚起し、販売量を増やす必要があります。では、巷でもよく見かける10~20%程度の値下げをした場合、販売量が何%増えたら利益が増えるのでしょうか?『10~20%程度の値下げなんだから、10%~20%ぐらい販売量が増えればいいんじゃないの?』と簡単に思うかもしれません。

実際には製品のコスト構造によって変わってきますが、一般的なコスト構造を前提にすると、従来よりプラス30%以上、場合によっては従来の2倍以上も販売量が増えないと利益は増えません。値下げが販売量というポリュームに与えるインパクトは、かくも大きいのです。果たして、どれだけの人がこの事実を知った上で値下げという手段を採っているでしょうか?

値下げという行為自体は確かにとても簡単です。なぜならば、値下げに対して文句を言う顧客は基本的にいないからです。しかし、値下げをして利益を増やすという戦略は、値下げだけして中身は何も変わっていない製品を、後は営業の努力で今までより30%増、場合によっては2倍以上売って来いという戦略です。利益増大という最終目的の達成は、そう簡単ではありません」(45ページ)

ある会社の月間売上(月商)が1,000万円で、売上に占める利益の割合(利益率)が40%の場合、利益額は400万円です。10%値下げをしたときは、月商は100万円減少して900万円に、利益も同額の100万円減少して300万円になりますので、利益率は33.3%になります。この33.3%の利益率で400万円の利益を得るために必要な売上高は、1,200万円(=400万円÷33.3%)です。すなわち、1,000万円から、その20%分の200万円の売上を増やす必要があります。

ただし、値下によって販売単価は減っていますので、数量で言えば、33%増やさなければなりません。もし、その会社の利益率が20%のときは、利益額が20万円なので、10%値下げしたときに同じ利益を得るために必要な売上高は2,000万円で、1,000万円の2倍の売上が必要になります。ただし、数量で言えば、2.2倍の商品を売らなければなりません。

確かに、こういった見積もりを考えれば、安易な値下げは避けなければならないと感じるでしょう。では、大手の会社は、物価が上昇している中でも、値下をしてくることがあります。これは、ローコストオペレーション(LCO)を実施していることで、値下を可能にしています。

これは、人工知能などを駆使して需要予測の精度を高めている、店頭の販売状況を製造工程で迅速に把握し、それを製造計画に反映させて無駄が出ないようしている、複数の向上をスマート化して連携させ、効率的なサプライチェーンを構築する、規模の拡大により材料等の仕入れ条件を改善するなどの対応をとることで、価格の引き下げを可能にしています。ここで大切なことは、価格の引き下げを行っても、利益率は下がらないようにするということです。したがって、大手の会社は、値下をしたからといって、利益が減るわけではなく、逆に、値下によって売上が増えれば、利益も増えると言うことです。

しかし、中小企業ではLCOを行えないか、行ったとしても限界があり、大手の会社には太刀打ちできないことが多いようです。そこで、中には無理をして利益率を減らして値下げをする会社もあるようですが、そのような方法は体力勝負であり、早晩、大手の会社に敗れてしまうでしょう。したがって、中小企業は価格勝負は避けなければなりません。ところで、LCOについて、ときどき、誤った理解をしている経営者の方に会うことがあります。

LCOは前述のように、仕組みを改善して価格を下げ、利益を維持、または、増やす活動です。しかし、単に、製造個数を減らさずに、工場の稼働時間だけを短縮して製造原価を下げたり、材料の価格を値切って製造原価を下げたりという活動は、製品価格の引き下げはある程度は可能ですが、真のLCOと言うことはできないでしょう。ましてや、単に利益額を減らして価格を下げることは、その場しのぎに過ぎず、自分で自分の首を絞めるようなものであり、避けなければならない対応です。

とはいえ、それが分かっていても、価格以外の面で競争力を高めることは容易ではないことも現実です。価格勝負をしている中小企業も、やりたくて価格勝負をしているわけではないでしょう。しかし、何ら、対策がないというわけではないということも事実だと思います。例えば、前回、ご紹介したアンバンドリングもそのひとつだと言えます。こういった、戦略の変更は、逆に、大手より中小企業の方が優れていると思います。

2026/6/7 No.3462

#中小企業診断士 #価格戦略 #六角明雄 #価格競争 #低価格戦略 #ローコストオペレーション #LCO #EDLP

●大勢に従って成功した者は一人もいない[要旨]公認会計士の金子智朗さんによれば、かつて、iPadは、OSをつくりなおしたことで、動きが軽くなり、顧客から支持を得ることができましたが、このように、前例を踏襲しようとすると顧客からの支持を得るこ...
05/06/2026

●大勢に従って成功した者は一人もいない

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、かつて、iPadは、OSをつくりなおしたことで、動きが軽くなり、顧客から支持を得ることができましたが、このように、前例を踏襲しようとすると顧客からの支持を得ることが難しくなるので、違うモノを売ることをもっと考えるべきだということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」( https://x.gd/OmMzO )を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、事業活動はコストを発生させるだけであって、顧客から製品の購入の意思決定をされなければ利益は得られないので、事業活動を目的化せず、顧客に購入の意思決定をしてもらうためにはどのように事業活動を行うべきかを念頭に置いて臨まなければならないということについて説明しました。

これに続いて、金子さんは、iPadはOSを軽くしたことで成功したということについて述べておられます。「ゲーム、パソコン、そして携帯端末のケースに共通していることは、新製品は機能を増やさなければならないと売り手側が勝手に思い込んでいることです。そして、他社が機能を増やしたら、それに追随せずにはいられない横並び意識です。快進撃を続けるアップルのiPadの成功は、OSを軽くしたことに一因があります。

iPadはいろいろな面で使い勝手がいいですが、特に起動の速さはテレビ並みです。それが可能になったのは従来のOSを捨てて、新しいOSを一から作り直したからです。一から作り直したことによって、非常に軽いOSができたのです。iPadの成功は、あくまでも顧客の視点に立って余計なものを捨てたことにあります。他社が機能を増やし続けている中で、自社だけがそれに逆行する行動を取るというのは簡単なことではありません。

しかし、他社と同じことばかりやっているだけでは、1つのパイの食い合いになるだけです。同じモノを売っているのに儲からないことを嘆く前に、違うモノを売ることをもっと考えるべきです。日本企業は昔から横並びが大好きですから、どこかのメーカが携帯にカメラを付ければみんなカメラを付け、どこかのメーカが音楽を聴けるようにすればみんな音楽を聴けるようにするという競争ばかりしています。

今や、携帯で写真が撮れるのも音楽が聴けるのも常識と言われそうですが、そんな常識は誰が決めたのでしょうか。投資家として成功したジム・ロジャースは、『人生と投資で成功するために娘に贈る12の言葉』(日本経済新聞出版社)の中で、『常識はそれほど常識ではない、ほとんどの常識は間違っている』と言っています。また、『大勢に従って成功した者は、今までだれ一人としていなかった』とも言っています。

そもそも、人と同じことをするのが競争なのでしょうか?かつて、横並びばかりの日本企業に戦略と呼ベるものはないと言ったのは、ハーバード・ビジネス・スクール教授のマイケル・ポーターでした。従来の常識に囚われずに、顧客の声に耳を傾け、自分の頭でちゃんと考えることが重要です。周りに流され、目先の顧客に安直に迎合していては、利益を上げられません」(40ページ)

iPadは、OSを独自のものに変えたことで、顧客から支持を得ることができました。これは、iPhoneのと共通だったOSを切り離し、再度、iPad専用のOSを搭載したことから、リバンドリングと言われます。一方、機能を分離することを、アンバンドリングといいます。これは、かつて、IBMが、コンピューターと、OS・アプリケーションを一体化して販売していたところ、それぞれを分けて販売するようにしたことを指していました。

その後、他の製品についても、機能を分けて販売することをアンバンドリングと言われるようになりました。その代表的な例は、LCCです。LCCは、機内食や荷物の預かりはオプションとし、運賃を最低限の価格としたことから、多くの支持を得ました。もうひとつの例をあげると、QBハウスもアンバンドリングと言えます。これも、一般的な理容店から、洗髪と顔剃りを省き、散髪だけを提供するかわりに、料金を低価格としたことで、顧客から支持を得ました。

ここで鍵となることは、ジム・ロジャースの「大勢に従って成功した者は、今までだれ一人としていなかった」という言葉だと思います。リバンドリングも、アンバンドリングも、機能の切り離しと再結合であり、技術面での課題は少ない手法です。したがって、従来のやり方を変えるかどうかという、経営者の決断によるものであり、それは、財務分析だけでは得ることができない結論だと思います。

2026/6/6 No.3461

#中小企業診断士 #六角明雄 #前例踏襲 #横並び #カスタマーオリエンテッド #アンバンドリング #LCC #リバンドリング #QBハウス

●顧客の購入の意思決定で売上が生まれる[要旨]公認会計士の金子智朗さんによれば、事業活動はコストを発生させるだけであって、顧客から製品の購入の意思決定をされなければ利益は得られないので、事業活動を目的化せず、顧客に購入の意思決定をしてもらう...
04/06/2026

●顧客の購入の意思決定で売上が生まれる

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、事業活動はコストを発生させるだけであって、顧客から製品の購入の意思決定をされなければ利益は得られないので、事業活動を目的化せず、顧客に購入の意思決定をしてもらうためにはどのように事業活動を行うべきかを念頭に置いて臨まなければならないということです。

[本文]

公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」( https://x.gd/OmMzO )を拝読しました。金子さんは、同書で、「会社はコストを生み、顧客が売上を生む」ということについて述べておられます。「会社が本社ビルや生産設備、もしくは従業員という仕組みを持っていても、それだけで売上が生まれるわけではありません。

会社の仕組みが生み出すのは製品やサービスです。以下では、製品やサービスをまとめて、簡単に『製品』ということにします。会社は、その仕組みが生み出す製品を販売することによって売上を生み出します。では、製品が売上を生み出すのでしょうか?それはノーです。製品がなければ売上は生まれませんが、だからといって製品があるだけで売上は生まれません。

製品の価値が顧客によって認められ、顧客が買うという意思決定をして初めて売上は生まれるのです。つまり、売上を生み出すのは顧客です。製品はその手段に過ぎません。このことは、『儲かる』ということを真剣に考える上で、とても重要なポイントです。先に説明した通り、収益性の代表的指標であるROAは売上高事業利益率と総資本回転率に分解できます。ROA=事業利益÷総資本=(事業利益÷売上高)×(売上高÷総資本)=売上高事業利益率×総資本回転率。会計上の分解はここまでです。

しかし、ここでお話しした考え方を加味すれば、総資本は製品を生み出すに過ぎず、製品が顧客に認められた結果、顧客が売上を生み出すと考えるべきです。こう考えると、会社が直接的に生み出すのはコストで、売上は生み出しません。売上を直接的に生み出すのは顧客だけです。私が教えているビジネス・スクールのクラスでは、グループ毎に仮想的に会社を経営して利益を競うビジネス・ゲームをやっています。そのゲームでは、各グループが複数の製品に対して販売価格や広告宣伝費を決めて、入札します。

売れ行きは、入札条件の相対的優位性で決まるようになっています。このゲームで高い利益を獲得するのは、決まって他グループの動向に目を向けて、柔軟に価格や広告宣伝費を変えるグループです。一方、『自己資本比率は30%以上が基本だから、これ以上借入はしない』とか、『マージン率は通常これ位のはずだから、それを目安に販売価格を決める』などと考えて行動するグループは、利益を上げられません。

教科書的な固定観念ばかりにとらわれたり、手持ちの内部データを見るぱかりで、市場にいる顧客を全く見ていないグループは、資金ショートを起こして倒産することはなくても、利益を出せないのです。ビジネス・ゲームは、現実世界に比ベれば単純な内容ですが、売上は顧客が生み出すということをあらためて実感させられます」(17ページ)

私は、会計的な観点からは、「売上は顧客が生み出す」という表現は賛同しないのですが、適切な事業判断をするためには、金子さんのように考えるべきだと思います。金子さんは、「製品の価値が顧客によって認められ、顧客が買うという意思決定をして初めて売上は生まれる」とご指摘しておられますし、このご指摘は多くの方がご理解されると思います。しかし、このような視点が忘れられていることも少なくありません。

例えば、自動車業界では、現在でも、見えないところに傷があり、それらが安全性などに影響がない場合でも、不良品としている場合があります。顧客に見えない(影響がない)品質を高めても、その品質を高めるためのコストは、顧客が購買する意思決定には影響しないので、無意味と言えます。ただし、自動車業界でも、この過剰品質( https://x.gd/epqjw )については問題という認識をしており、現在、これらを是正しようという取り組みが行われています。

逆に、顧客の購買しようとする意思決定を促そうとする事例もあります。例えば、ヤンマー( https://x.gd/aE2vU )は、イタリアの高級車メーカーのフェラーリなどで設計をした経験のある工業デザイナーの奥山清行さんにトラクターの開発を依頼し、ボンネット部分をスポーツカーのようなデザインにしたトラクターを製造しています。トラクターは、本来は、馬力などの性能で評価されるべきものですが、デザイン性を高めることで、農業のイメージを向上させたいと考えている人からの支持を狙ったものと思われます。

ここまでの話をまとめると、事業活動はコストを発生させるだけであって、顧客から製品の購入の意思決定をされなければ利益は得られないので、事業活動を目的化せず、顧客に購入の意思決定をしてもらうためにはどのように事業活動を行うべきかを念頭に置いて臨まなければならないということです。

2026/6/5 No.3460

#中小企業診断士 #利益 #意思決定 #売上 #コスト #収益 #費用 #支出 #六角明雄 #事業活動 #購買意思決定 #総資産利益率 #売上高営業利益率 #総資本回転率 #総資本 #購買決定

●手形貸付廃止による影響はほとんどない[要旨]金融庁の約束手形の利用の廃止の方針にともない、銀行は、2027年4月以降、手形貸付の取扱いをやめるようですが、これにともなう融資利用者への影響はほとんどないと考えられます。なお、いわゆる短コロを...
04/06/2026

●手形貸付廃止による影響はほとんどない

[要旨]

金融庁の約束手形の利用の廃止の方針にともない、銀行は、2027年4月以降、手形貸付の取扱いをやめるようですが、これにともなう融資利用者への影響はほとんどないと考えられます。なお、いわゆる短コロを利用している会社は、当座貸越契約の利用を打診されることになると思われますが、その際、契約額の増額を打診する機会とすることで、それに応じてもらえる可能性があります。

[本文]

金融庁は、2021年に約束手形の利用の廃止の方針( https://x.gd/Fv8yN )を打ち出しており、その一環として、ほとんどの銀行は、2027年4月以降の手形貸付の取扱いを廃止するようです。私は、個人的には、手形貸付を廃止する必要はないと思っています。

その理由の1つ目は、手形貸付を利用する会社が、融資を受けるときに振り出す手形(貸付専用約束手形)の支払場所(手形の決済を行う銀行支店のこと)は、融資を行う銀行の支店なので、融資をした銀行支店で、融資が返済されるまで保管します。すなわち、本来の決済手段として振り出される約束手形のように、手形交換を使って取り立てされることはないので、手形交換所が廃止されてもなんの支障もありません。

理由の2つ目は、決済手段としての約束手形の廃止は、電子記録債権で代替され、それによってペーパーレス化が進みますが、短期貸付が手形貸付から証書貸付に変わっても、ペーパーレス化は進みません。このような理由から、手形貸付を廃止する必要はないと私は考えますが、金融庁などは、手形貸付用の約束手形も廃止しないと、約束手形がなくなったことにならないと考えたのでしょう。

話を本題に戻すと、手形貸付が廃止されることで、中小企業への影響はまったくないと、私は考えています。その根拠を示すために、手形貸付と証書貸付の違いについて説明します。手形貸付と証書貸付は、どちらも法律的上は、金銭消費貸借契約です。もちろん、手形貸付は、金銭消費貸借契約証書(いわゆる借用証書)の代わりに約束手形を銀行に差し入れます。

しかし、金銭消費貸借契約証書は、要物契約(目的物の引き渡しによって成立する契約)なので、金銭消費貸借契約証書を交わさなくても、銀行から融資相手の会社に融資金の引き渡しが行われれば、金銭消費貸借契約が成立します。では、なぜ、手形貸付では、金銭消費貸借契約証書ではなく約束手形を差し入れるのかというと、一般的には、同じ金額の融資を受けた時に、印紙代が少なくてすむからと言われています。

例えば、1,000万円の融資を受けるとき、金銭消費貸借契約証書には1万円の印紙を貼りますが、約束手形は2,000円で済みます。それでは、すべての融資を手形貸付にすればよいという疑問が生じると思います。しかし、約束手形は、融資契約に関する事項は、金額と支払期日しか記載されいので、金利や支払い方法などが記載されている金銭消費貸借契約証書よりと比較して、厳格性に欠けると言えます。そこで、1年以内に返済される短期貸付に限定して手形貸付は行われてきたと考えられます。

もうひとつの疑問点として、約束手形は金銭消費貸借契約証書の代わりになるのかということですが、手形貸付は、融資の返済を請求するときは、銀行は手形債権として請求することが可能であり、このことをもって、金銭消費貸借契約証書の代わりになると考えられてきました。(手形貸付の融資金の返済は、実際は、約定通りに返済が行われることが多いので、その限りでは、銀行が手形債権の請求を行うことはありません)

ここまで、手形貸付と証書貸付の違いについて述べてきましたが、これまで短期間の借入を手形貸付で調達してきた会社から見れば、それが証書貸付に変わってもそれほどの影響はないと考えられます。念のために言及すると、融資期間などの条件が同じであれば、手形貸付と証書貸付では、融資審査に違いはありません。どちらを利用するかは、手続きの違いでしかないからです。もうひとつ、言及しておきたいことは、いわゆる「短コロ」融資です。

短コロとは、短期転がし融資の意味で、例えば、1,000万円の融資を、期間1年、期限一括返済の条件で利用していた時、融資期限が到来した際に、反復して1,000万円の融資契約を行い、その融資金によって従来の融資金の返済にあて、利息の支払いだけを行う取引をいいます。このような取引は、今後は、貸付専用当座貸越契約に変わって行くと思います。当座貸越契約とは、本来は、当座預金の残高が不足していたとき、予め契約しておいた金額まで、小切手や手形の決済を行う契約です。

例えば、当座預金の残高が100万円、当座貸越契約が500万円のとき、200万円の約束手形の取り立てがあれば、銀行は預金100万円と貸越100万円をあてて手形を決済します。そして、貸付専用当座貸越契約は、預金取引とは切り離して、融資を行うためだけの契約です。イメージとしては、「枠」の契約です。前述の短コロの例で言えば、1,000万円の当座貸越契約をしておけば、その枠の1,000万円の融資を利用したまま、定期的(多くの場合は1か月ごと)に利息だけを支払うという利用が可能です。

ちなみに、当座貸越契約は、通常は1か年で、特に銀行と利用者からの申し出がなければ、自動延長されるものが多いです。ただし、銀行は、契約期間の到来の前に、契約を延長するかどうかを審査します。そのため、もし、会社の業績が悪化しているときは、契約の継続を停止するか、または、契約金額の減額などを融資相手の会社に伝えてきます。

話を短コロにもどすと、現在、手形貸付で短コロを利用している会社は、銀行から当座貸越契約の打診を受ける可能性があります。その際は、例えば、現在の短コロの利用額が1,000万円であれば、2,000万円などに増額することを打診することをお薦めします。この増額は、今後、依頼する可能性のある長期借入金の分も含めるという主旨で依頼すれば、応じてもらうことができるかもしれません。

2026/6/4 No.3459

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●事業性融資推進法と企業価値担保権[要旨]新しい担保権である企業価値担保権は、会社の将来性を担保として銀行に認識してもらうことで、スタートアップなど、資産の少ない会社が銀行から融資を受けやすくしようという趣旨の制度ですが、制度が複雑で難解で...
03/06/2026

●事業性融資推進法と企業価値担保権

[要旨]

新しい担保権である企業価値担保権は、会社の将来性を担保として銀行に認識してもらうことで、スタートアップなど、資産の少ない会社が銀行から融資を受けやすくしようという趣旨の制度ですが、制度が複雑で難解であること、会社の将来性の評価は主観が入る余地が大きく、融資を受ける会社の希望通りに評価してもらえるとは限らないことなどから、利用される事例は増えないと思われます。

[本文]

事業性融資推進法( https://x.gd/GLoVl )が、令和8年5月25日から施行されました。これは、実質的には、企業価値担保権という制度を定める法律なので、その制度に関する私の所感を述べたいと思います。まず、結論として、この制度はあまり活用されないと私は考えています。活用されない理由は、企業価値担保権が、銀行の融資を促進する要因にはならないからです。

少し話がそれますが、私は、銀行が融資を促進するようになるには、信用リスク(融資相手の会社から融資を回収できなくなるリスク)に見合った金利を銀行が受け取ることができるようになることだと、私は考えています。では、なぜ、いま、それができないのかというと、政府系金融機関が、業績の悪い会社、すなわち、信用リスクの高い会社に対して、低利融資をしているからです。

業績の悪い会社に低利融資をすることは、一見すると、融資相手の会社を支援しているように見えますが、実は、融資を受けにくくしているという皮肉な面があります。話をもどすと、企業価値担保権は、有形の不動産などに限定されず、ノウハウ、顧客基盤等の無形資産も担保として「認識可能」とすることで、不動産担保に偏重した融資から、将来性を評価した融資を促そうとする概念によるものです。

そして、その企業価値担保権とはどのような契約なのかというと、それは、信託契約を基本とする契約です。これを噛み砕いて説明したいと思ったのですが、まず、「信託契約」に関する知識をお持ちの方でないと理解が難しいと思われるので、この説明は割愛します。そして、この制度の難解さも、企業価値担保権の普及を難しくする要因になると、私は考えています。

繰り返しになりますが、企業価値担保権は、ノウハウ、顧客基盤等の無形資産も担保として認識可能とすることで、銀行の融資を促そうとする主旨は理解できますが、これは融資を促す根本的な要因にはならないと、私は考えています。もう1つ、企業価値担保権の短所として感じることは、企業価値の評価には主観が入る余地が大きいという面があります。

このことから、金融庁も企業価値担保権を不動産などと同様の担保として扱うことは困難という見解を示しています。さらに、その担保価値を高めるためには、融資を受ける側からの説明の負担が増加することになります。すなわち、「将来性」を評価してもらうためには、融資を受ける会社は、その将来性があることをそれなりの根拠をもって説明する必要があり、会計などの知識が乏しい経営者にとっては、このような説明は負担と感じることになるでしょう。

ここまでの話をまとめると、企業価値担保権は、資産が少ないベンチャーなどが、会社の将来性を担保として評価してもらうことで融資を受けやすくするという趣旨の制度です。しかし、担保権の仕組みが難解であること、将来性の評価は難しく、融資を受ける会社の意向にそって評価してもらうためにはそれなりの労力が必要なこと、銀行の視点からは、企業価値担保権が融資を促す要因としては弱いことなどの短所があり、今後、利用される事例はあまり増えないのではないかと、私は考えています。

2026/6/3 No.3458

#中小企業診断士 #ベンチャー企業 #潜在能力 #銀行融資 #ポテンシャル #六角明雄 #融資審査 #企業価値担保権 #事業性融資推進法 #目利き能力 #スタートアップ

●マネージャーにしかできない仕事をする[要旨]立命館大学ビジネススクール教授の山本真司さんは、かつて、コンサルティング会社のマネージャーをしていたとき、事業がうまくまわるようになってから、山本さんのやることがなくなり、疎外感を感じ、その暇に...
01/06/2026

●マネージャーにしかできない仕事をする

[要旨]

立命館大学ビジネススクール教授の山本真司さんは、かつて、コンサルティング会社のマネージャーをしていたとき、事業がうまくまわるようになってから、山本さんのやることがなくなり、疎外感を感じ、その暇に恐怖を感じることになったのですが、マネージャーにしかできない仕事、たとえば、外部のネットワークづくりに注力するようになってから、さらにチームの業績の向上に貢献できるようになったということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、立命館大学ビジネススクール教授の山本真司さんのご著書、「忙しすぎるリーダーの9割が知らないチームを動かすすごい仕組み」( https://x.gd/axni3 )を読んで私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、山本さんによれば、マネージャーは、経営判断をするにあたっては、常に白黒をつけることができないため、、時にはグレーな判断をしなければならないことがありますが、そのような判断をしたときは、その判断の理由を丁寧に説明すべきであり、そうしなければ、マネージャーは部下からの信頼を失い、ますます窮地に立つことになるということについて説明しました。

これに続いて、山本さんは、マネージャーはマネージャーにしかできない仕事をするべきだということについて述べておられます。「チームがうまく回るようになると、マネジャーが使える時間は徐々に増えていきます。(中略)自分が何もやらないほうが、チームメンバーは育つ。だから自分は手を動かさないほうがいい。理屈ではわかっていても、ヒマとは怖いものです。

仕事に追われていた頃はあんなに時間をほしがっていたのに、ヒマになった瞬間、むしろ不安になってしまうのです。その一番の要因は、もうこの組織に『自分は必要ない』という思いに耐えられないからでしょう。自分がヒマでも仕事が回るということは、自分が不要だということと同義です。いままで最前で必死に働いてきたマネジャーほど、耐えられないものかもしれません。

私もそうでした。周りにはさっさと帰ってしまうマネジャーもいましたが、私はメンバーに任せることができるようになり、ヒマが作れるようになっても、どうも自分に自信が持てず、必要ない人と思われるのが怖くて、いつまでもダラダラと会社に残ってしまいがちでした。早く家に帰ったら帰ったで、どうも落ち着きません。

友人から『打ち込める趣味を持て』と言われ、いろいろ始めてみたものの、気もそぞろでどうしても集中できませんでした。そんな自分を変えられたのは、『空いた時間で、メンパーにはできないことをしよう』と決意してからでした。まず行ったのは、いまの顧客のもっと上のポジションの人と会食をしまくることでした。そうして、次の仕事の営業の種を時くのです。

それだけでなく、外部のネットワーク作りにも注力するようになりました。コンサルティングの仕事で大型のプロジェクトを受注するためには、日頃から新規開拓対象の大企業の経営トップ層とのネットワークを築くことが大事でした。また、仕事に役立つかどうかではなく、自分が面白いと思う人と、昼夜を間わず積極的に会うようにしました。ふと気がつくと、結構な数の人とのネットワークができ上がっていました。

そして、まったくピジネス上のつながりがない人から、いま手がけている仕事についての面白い見方を教えてもらったりもしました。自分ではまるで仮設が思い浮かばないような時に、そういう人たちに電話しまくったことで、いうの間にか仮説ができてしまうこともありました。そうしたネットワークの中から、新しい顧客もどんどん生まれていきました。

そして何より、そうした人たちとつき合ったり一緒に飲んだりするのは、とても楽しいことでした。すると、そんな私をメンバーも当てにするようになってきたのです。『山本さん、××業界の人と話をしたいんですが。ヒアリングできますかね?』などと。そう、まさにこうしたネットワーク作りは、『メンバーにはできない仕事』だったのです」(266ページ)

山本さんがご経験したように、マネージャーが暇になる組織は理想的です。そのような状態になるのは、かなりの割合で権限委譲が進んでおり、さらに、その状態で事業活動が奏功しているからです。しかしながら、山本さんもそうであったように、マネージャーが暇になると、自分の存在意義を感じなくなってしまうという方も少なくないようです。

私も、これまで多くの中小企業の事業改善の手伝いをしてきましたが、あえて、経営者自身に属人的な仕事を残しておく方も少なくありませんでした。そのようなことをする経営者の方には、理由が2つあると私は考えています。その1つ目は、事業活動に自分の出番を残しておくことで、自分がいなければ事業は回らない状態を維持する、すなわち、自分の評価を、属人的な仕事を手放さないことによって維持しようと考えているからだと思います。

2つ目は、経営者が、経営者本来の仕事をしなければならないことはわかりつつ、それを遂行することに自身がないので、事業活動に自分の出番を残しておくことで、経営者本来の仕事に本腰を入れないでよい理由を残しておこうとしているからだと思います。しかし、そのような経営者がいる組織は、トップダウン型ということであり、VUCAの時代に適さない組織になってしまうことになりかねません。

そこで、山本さんのように、マネージャーが暇であることは望ましい状態であること、そして、マネージャーはマネージャーにしかできない仕事に徹するということは、業績を高めるために重要な考え方だと思います。ただ、感情の面で、なかなか現場から離れたくないと考える方も多いようです。ただ、そのような会社は、実態は個人事業主と同じ状態であり、組織的な活動ができない状態であることから、事業拡大も頭打ちになってしまうということに注意が必要です。

2026/6/1 No.3456

#経営者 #マネジメント #中小企業診断士 #マネージャー #ティール組織 #六角明雄 #権限委譲 #マネジメントスキル #経営者の役割 #マネジメント能力 #フラット型組織

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