29/05/2026
2026.5.29
過去3回にわたって説明してきた裁判例は、M&A契約での売主会社と買主会社の間の紛争ではなく、M&A契約の際の取締役(役員)の経営判断に関して善管注意義務違反があったことを理由とする株主・取締役間の紛争が問題となったものです。
今回紹介する裁判例(東京地判平成23年2月18日)も、会社経営陣による買収であるMBO(マネジメント・バイアウト)を巡り、株主(原告意)が取締役(被告)の責任を追求した事案です。
この裁判では、MBOの実施に際して提示された買付価格が不当に低かったため、取締役が善管注意義務に違反したかが争われ、原告は、情報格差や利益相反が存在する状況下で、被告(取締役)には株主の利益を最大化する義務があると主張しました。
これに対し、裁判所は、株主と取締役との間で「構造的な利益相反」と「大きな情報的非対称性」が生じることから、取締役が自己の利益のみを図り、株主の共同利益を損なうようなMBOを実施した場合には善管注意義務に違反するとの基本的な考え方を示したうえで、結論としては取締役の義務違反を否定しました。
取締役には、MBOの実施に際し、株主に対して適正な情報開示・説明責任を果たす義務があることが示されたといえます。
作成:(株)事業承継支援センター 法務部・担当弁護士