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【ご報告】令和7年2月9日、拙著『「個」の幸せが「チーム」を変える!ウェルビーイング最強メソッド』を170冊、第78回済生会学会/令和7年度済生会総会(済生会滋賀県病院)へ寄贈・納品しました。(4箱+10冊、無事にお届け完了しました!)今回...
11/02/2026

【ご報告】
令和7年2月9日、拙著『「個」の幸せが「チーム」を変える!ウェルビーイング最強メソッド』を170冊、
第78回済生会学会/令和7年度済生会総会(済生会滋賀県病院)へ寄贈・納品しました。
(4箱+10冊、無事にお届け完了しました!)

今回の学会は、全国から多くの方が集う場です。
そこでこの本が170名の手に渡り、それぞれの職場・地域へ持ち帰られていきます。

そう考えると、ただ「170冊」ではなく、全国の現場に広がっていく170のきっかけだと思えて、胸が熱くなります。
医療・福祉の現場は、いつも誰かのために動き続けている場所です。

その分、しんどさを抱え込んでしまう人も少なくありません。
だからこそ、この本が
「少し肩の力を抜いていいんだ」
「自分の状態を整えることが、チームの力になる」
そんなふうに思える“きっかけ”になれたらと願っています。

そして、この寄贈は私ひとりでは実現できませんでした。
支援者のみなさまが背中を押してくださったから、ここまで来られました。

本当にありがとうございます。

寄贈先:第78回済生会学会/令和7年度済生会総会 事務局
(済生会滋賀県病院/滋賀県済生会在宅支援センター)
寄贈冊数:170冊

これからも、現場で働く方々の力になれる活動を、地道に続けていきます。
引き続き、応援よろしくお願いいたします。

#活動報告 #感謝 #済生会 #ウェルビーイング #働きがい #チームづくり #医療福祉を応援 #株式会社ラシク #個の幸せがチームを変える

【職場から笑顔が消えた夜】最終バスの発車ベルが鳴る。駅前の風は冷たくて、紙コップのコーヒーから出る湯気だけがやけに頼もしく見えた。三沢は、スマホの通知を親指で弾いて全部消した。部下たちの既読だけが、いつもより白々しい。「数字は達成。なのに、...
18/10/2025

【職場から笑顔が消えた夜】

最終バスの発車ベルが鳴る。駅前の風は冷たくて、紙コップのコーヒーから出る湯気だけがやけに頼もしく見えた。
三沢は、スマホの通知を親指で弾いて全部消した。部下たちの既読だけが、いつもより白々しい。

「数字は達成。なのに、誰も喜ばない。」

部長に昇進した春から、彼は“勝ち方”を変えた。朝のミーティングは短く、指示は明快、締切は動かさない。「やるか、やらないか」。その姿勢は、上には評判が良かった。
だが、フロアの空気は別だった。雑談が減り、Slackの雑チャンネルは止まり、報告は必要最低限だけが上がる。食堂で席は混んでいても、彼の隣だけは空いたままだった。

ある日、右腕の佐伯が退職願を置いた。机にボールペンを置く時の音が、やけに静かに響いた。
「三沢さん、私にとっては“正しいこと”でも、ここでは“怖いこと”になってしまって。すみません。」
謝る彼女に、三沢は「そうか」と短く言った。引き止める言葉が、喉の奥で粉になった。

その週末、母の病院へ向かう廊下で、白衣の気配が横をすり抜けた。ナースステーションから、落ち着いた声が聞こえる。
「——大丈夫、今はできることをひとつずつね。」
顔を上げると、年配の看護師が新米に目線を合わせて、ゆっくりうなずいていた。
それは指示じゃなかった。背中を押す手の温度だった。

母の枕元に座ると、彼女は幼い頃の話をした。
「小学校の運動会でリレー負けた日、あんた、泣いてたよね。帰り道で『なんで勝てなかったか』ばっかり言ってた」
三沢は苦笑した。
「覚えてないな」
「私は覚えてるよ。あのとき、お父さんが言ったの。『で、誰がバトン渡す時に一番“いい顔”してた?』って」
母は続けた。「あんた、しばらく黙ってから『健太』って答えた。そしたらお父さん、『じゃあ次は健太に“ありがとう”言っておいで』って。あれから、あんた、走り方が少し変わった」

帰り道、エレベーターの鏡に映る自分の顔は、妙に固かった。
——“いい顔”。
最近、誰の顔を見て仕事をしていただろう。

翌月、三沢のチームに大型案件の提案機会が舞い込んで来た。
予算規模は大きい。勝てば、部の来期が揺るがない。彼は計画を組み、役割を一方的に割り振った。抵抗の空気が漂っても、予定表はびっしり埋まっていく。
だが、初回レビューの日、仕様の前提に抜けが見つかった。資料を閉じ、沈黙が落ちる。誰かが咳払いをした。

「——やり直す。明日の朝までに、最新の数値と仮説で組み直す。よろしく」

解散の気配の中、若手の木村が小さく手を上げた。
「僕、ひとつ提案があって……」
三沢の視線は、無意識に“時間”の方を向いた。
「今は間に合わない。指示通り、急いでくれ」

その夜、眠れなかった。枕元で、病院の廊下の声がよぎる。
——今はできることを、ひとつずつ。
そして、母の言葉。
——誰が一番、いい顔をしてた?

翌朝の会議。始め方を、彼は変えた。
「数字の前に、30秒だけ。昨日、誰かに『ありがとう』を言いたい人、いる?」
室内の空気が、わずかに揺れた。最初に声を出したのは、意外にも無口な経理の相原だった。
「制作の山根さん。夜まで図表やり直してくれて、助かりました」
山根は照れ笑いした。
「……ありがとう、ございます」

三沢は木村を見た。
「で、木村。君の提案、聞こう」
木村の説明は粗かったが、要は「仕様の中心に“現場の人の動き”を置くべき」という話だった。
「数字の比較だけだと、相手の現場に“人の影”が出ない。動画で動線を見せて、困ってる場面から入る方が、向こうもイメージしやすいと思います」
それは、手間がかかる。今からやるには、無謀にも見えた。
でも、不思議と胃が軽かった。

「——やろう。数字の表は俺が引き取る。動画の骨子は木村主導。誰が一番“いい顔”で動けるか、そこで役割を決めよう」

チームが動き出した。
抵抗する者もいた。ベテランの梶原は眉をひそめた。
「見せ方を変えても、値段が勝負だろ」
三沢は頷いた。
「値段は勝負だ。でも“誰のために”を映さなきゃ、数字が正しくても負ける」
梶原は何も言わなかった。ただ、夜になっても席を立たなかった。

それから数日、会議室の空気は少しだけ温度を取り戻した。告白のような短い「ありがとう」が飛び交い、うまくいった瞬間を皆で言葉にした。
三沢は1on1の最初に必ず聞いた。
「最近、嬉しかったことは?」
そして最後に、
「来週、その“嬉しかった自分”を、どこで再現する?」
問いが変わると、話の向きが変わった。愚痴の行き場が、工夫の種になった。

——ところが、プレゼン当日、電源トラブルが起きた。
プロジェクターは沈黙し、会場の時計だけが進む。先方の担当者は腕を組み、同席の役員が時計を見た。
冷たい汗が背中を流れる。
「すぐ復旧します」
口が勝手にそう言った。しかし予備も動かない。もう、時間はない。

そのとき、木村が小声で言った。
「——スマホでやりましょう。動画は手元でも再生できます。映せなくても、伝えられます」
三沢は、迷った。
数ヶ月積んだ“正攻法”を捨てるのか。
だが、目の前の相手の顔は、待ち切れない表情になっている。

「お願いします。まず、現場の“朝の30分”から見てください」

会議室は、少しざわめいた。
木村がスマホを立て、机を囲む四人に身を寄せる形で説明を始める。
動線の渋滞、紙を探す無駄、現場の困り顔。
「このアングルは、先方の倉庫で実際に起きている想定です。ここで導入後の動きに切り替えると、待ち時間が3分短縮されます。数字では3分。でも“人の気持ち”では、出勤のイライラが一つ減ります」
役員が身を乗り出した。
「……続けてくれ」

プレゼンは、結局スマホの画面を皆で覗き込む形で終わった。
帰りのエレベーターで、三沢は木村の肩を軽く叩いた。
「よく持ちこたえた」
木村は息を吐いた。
「怒られると思ってました」
「俺も、怒るつもりでいたよ。昨日の俺なら」

その週の金曜、先方から連絡が来た。
「今回は御社にお願いしたい。ただし、最初の一ヶ月は“数字”じゃなく“現場の空気”の変化を見せてほしい」
電話口の担当者は言った。
「正直、あの状況で“続けます”と決めた顔が、今日まで残ってるんです」

受話器を置いた手が、少し震えた。
勝った、のか。
いや、違う。
“勝ち方”が、初めて自分の中で腑に落ちた。

その夜、三沢はフロアの灯りをひとつずつ消しながら、梶原の席の前で立ち止まった。
「梶原さん。来週、1on1させてください。あなたが、この仕事で一番“いい顔”していた瞬間の話を、聞きたい」
梶原は椅子にふんぞり返り、しばらく天井を見てから、ぽつりと言った。
「十年前、初めて契約をもらった日かな。客先の倉庫で“一緒に汗かいた”って言われた」
彼は、ほんの少し笑った。
「……その話、ずっと誰にもしてなかったよ」

月が変わる頃、チームの雑チャンネルは動き出した。
「今日の“いい顔”」というスレッドができ、誰かが撮った同僚の横顔が上がる。
相原が、昼の時間を使ってメンバーの家族の誕生日カレンダーを作った。
山根は、動画の撮り方講座を開いた。
三沢は、母の病室で聞いた言葉をスプレッドシートの上に置いた。
——今できることを、ひとつずつ。
——誰のために、どんな“いい顔”を増やすのか。

そして、ある夕方。
辞めたはずの佐伯から、短いメールが届いた。
件名は「近況」。本文は二行だけ。
「新しい職場で、初めて“ありがとう”を言われました。
三沢さん、あの時は、ごめんなさい。今なら、少しわかります。」
画面の文字が滲んだ。
彼女は戻ってこないかもしれない。それでも、その二行は、チームのどの数字より重たかった。

年度末、上層部からの打診が来た。
「本社の統括に来ないか」
出世のチャンスだった。
会議室の窓から見える街は、眠らないままだ。
三沢は、少しだけ考えてから、返事をした。
「ありがとうございます。もう一年、この現場で続けさせてください。今、芽が出たばかりなんです」
電話の向こうは意外そうに黙った後、「わかった」とだけ言った。

夜。フロアの照明は落ち、非常灯だけが薄く残る。
帰り支度を終え、エレベーターへ向かう廊下で、彼は立ち止まった。
窓ガラスに映る自分の顔は、知らない顔だった。
頬の力が抜けて、眼差しがやわらかい。
ようやく、誰かの上司ではなく、誰かの仲間の顔になった気がした。

ポケットから、名刺サイズの紙を取り出す。
片側には三つの問い。
——「今日、誰の“いい顔”を増やした?」
——「そのために、明日、何をひとつだけやる?」
——「うまくいったら、誰に“ありがとう”を伝える?」

裏側には、ただ一言。
「成果は“答え”で決まらない。毎日の“問い”で決まる。」

その紙を財布に戻し、彼はビルを出た。
外は、冬の匂いが近づいている。吸い込んだ息が白くなり、すぐに消えた。
どこかで笑い声がした。
その笑い声が、明日またこのフロアにも戻ってくる気がした。

――――――――――――――――――
『「個」の幸せが「チーム」を変える! ウェルビーイング最強メソッド』ご案内

笑顔のない職場は、成果の数字より先に、会話の数が減っていきます。
三沢の物語の裏側には、“人が動きたくなる場づくり”の手順があります。
本書はその手順を、心理学の知見と現場の実践で丁寧に言語化した一冊です。
数字だけを追うマネジメントから、“問い”と“習慣”で成果を積み上げるリーダーシップへ。
今日から現場で試せる具体策が、無理のないステップでまとまっています。

■この本で得られること
・「成果は答えでなく問いで決まる」を現場に落とし込む設計図
・1on1や定例会でそのまま使える“良い問い”の言い回しと流れ
・強みを再現させるフィードバックと、心理的安全性を育てる対話のコツ
・数字と意味(目的)をつなぎ直し、エンゲージメントを底上げする進め方
・小さな成功を循環させ、離職・不信のスパイラルを反転させる仕組み

■こんな方に
・結果は出るのに、チームの空気が重く、ついて来られていないと感じるリーダー
・「人はいるのに動かない」「右腕が育たない」原因を根から整えたい管理職
・会議が“報告の場”で止まり、納得と自発性が生まれない組織のご担当者
・数字と幸せの二者択一から抜け、長く続く成果をつくりたい経営者

■読後に起きる変化
・会話が変わる――問いが変われば、表情が変わる
・表情が変わる――表情が変われば、行動が変わる
・行動が変わる――行動が変われば、成果が続く
「誰の、どんな“いい顔”を増やしたいのか。」

その一点が、チームを前に進めます。どうか最初のページを開いてください。
最初の章は、あなたの現場から始まります。

Amazonにて好評発売中。

今日の一歩を、ここから。

武蔵野大学ウェルビーイング学部学部長・教授 ウェルビーイング学会代表理事 前野隆司氏 推薦! ウェルビーイングアワード2025(組織・チーム部門)GOLD受賞 滋賀県社会福祉学会第42回大会・奨励賞受賞 キラビトメンバー...

【職場から笑顔が消えた夜】最終バスの発車ベルが鳴る。駅前の風は冷たくて、紙コップのコーヒーから出る湯気だけがやけに頼もしく見えた。三沢は、スマホの通知を親指で弾いて全部消した。部下たちの既読だけが、いつもより白々しい。「数字は達成。なのに、...
18/10/2025

【職場から笑顔が消えた夜】

最終バスの発車ベルが鳴る。駅前の風は冷たくて、紙コップのコーヒーから出る湯気だけがやけに頼もしく見えた。
三沢は、スマホの通知を親指で弾いて全部消した。部下たちの既読だけが、いつもより白々しい。

「数字は達成。なのに、誰も喜ばない。」

部長に昇進した春から、彼は“勝ち方”を変えた。朝のミーティングは短く、指示は明快、締切は動かさない。「やるか、やらないか」。その姿勢は、上には評判が良かった。
だが、フロアの空気は別だった。雑談が減り、Slackの雑チャンネルは止まり、報告は必要最低限だけが上がる。食堂で席は混んでいても、彼の隣だけは空いたままだった。

ある日、右腕の佐伯が退職願を置いた。机にボールペンを置く時の音が、やけに静かに響いた。
「三沢さん、私にとっては“正しいこと”でも、ここでは“怖いこと”になってしまって。すみません。」
謝る彼女に、三沢は「そうか」と短く言った。引き止める言葉が、喉の奥で粉になった。

その週末、母の病院へ向かう廊下で、白衣の気配が横をすり抜けた。ナースステーションから、落ち着いた声が聞こえる。
「——大丈夫、今はできることをひとつずつね。」
顔を上げると、年配の看護師が新米に目線を合わせて、ゆっくりうなずいていた。
それは指示じゃなかった。背中を押す手の温度だった。

母の枕元に座ると、彼女は幼い頃の話をした。
「小学校の運動会でリレー負けた日、あんた、泣いてたよね。帰り道で『なんで勝てなかったか』ばっかり言ってた」
三沢は苦笑した。
「覚えてないな」
「私は覚えてるよ。あのとき、お父さんが言ったの。『で、誰がバトン渡す時に一番“いい顔”してた?』って」
母は続けた。「あんた、しばらく黙ってから『健太』って答えた。そしたらお父さん、『じゃあ次は健太に“ありがとう”言っておいで』って。あれから、あんた、走り方が少し変わった」

帰り道、エレベーターの鏡に映る自分の顔は、妙に固かった。
——“いい顔”。
最近、誰の顔を見て仕事をしていただろう。

翌月、三沢のチームに大型案件の提案機会が舞い込んで来た。
予算規模は大きい。勝てば、部の来期が揺るがない。彼は計画を組み、役割を一方的に割り振った。抵抗の空気が漂っても、予定表はびっしり埋まっていく。
だが、初回レビューの日、仕様の前提に抜けが見つかった。資料を閉じ、沈黙が落ちる。誰かが咳払いをした。

「——やり直す。明日の朝までに、最新の数値と仮説で組み直す。よろしく」

解散の気配の中、若手の木村が小さく手を上げた。
「僕、ひとつ提案があって……」
三沢の視線は、無意識に“時間”の方を向いた。
「今は間に合わない。指示通り、急いでくれ」

その夜、眠れなかった。枕元で、病院の廊下の声がよぎる。
——今はできることを、ひとつずつ。
そして、母の言葉。
——誰が一番、いい顔をしてた?

翌朝の会議。始め方を、彼は変えた。
「数字の前に、30秒だけ。昨日、誰かに『ありがとう』を言いたい人、いる?」
室内の空気が、わずかに揺れた。最初に声を出したのは、意外にも無口な経理の相原だった。
「制作の山根さん。夜まで図表やり直してくれて、助かりました」
山根は照れ笑いした。
「……ありがとう、ございます」

三沢は木村を見た。
「で、木村。君の提案、聞こう」
木村の説明は粗かったが、要は「仕様の中心に“現場の人の動き”を置くべき」という話だった。
「数字の比較だけだと、相手の現場に“人の影”が出ない。動画で動線を見せて、困ってる場面から入る方が、向こうもイメージしやすいと思います」
それは、手間がかかる。今からやるには、無謀にも見えた。
でも、不思議と胃が軽かった。

「——やろう。数字の表は俺が引き取る。動画の骨子は木村主導。誰が一番“いい顔”で動けるか、そこで役割を決めよう」

チームが動き出した。
抵抗する者もいた。ベテランの梶原は眉をひそめた。
「見せ方を変えても、値段が勝負だろ」
三沢は頷いた。
「値段は勝負だ。でも“誰のために”を映さなきゃ、数字が正しくても負ける」
梶原は何も言わなかった。ただ、夜になっても席を立たなかった。

それから数日、会議室の空気は少しだけ温度を取り戻した。告白のような短い「ありがとう」が飛び交い、うまくいった瞬間を皆で言葉にした。
三沢は1on1の最初に必ず聞いた。
「最近、嬉しかったことは?」
そして最後に、
「来週、その“嬉しかった自分”を、どこで再現する?」
問いが変わると、話の向きが変わった。愚痴の行き場が、工夫の種になった。

——ところが、プレゼン当日、電源トラブルが起きた。
プロジェクターは沈黙し、会場の時計だけが進む。先方の担当者は腕を組み、同席の役員が時計を見た。
冷たい汗が背中を流れる。
「すぐ復旧します」
口が勝手にそう言った。しかし予備も動かない。もう、時間はない。

そのとき、木村が小声で言った。
「——スマホでやりましょう。動画は手元でも再生できます。映せなくても、伝えられます」
三沢は、迷った。
数ヶ月積んだ“正攻法”を捨てるのか。
だが、目の前の相手の顔は、待ち切れない表情になっている。

「お願いします。まず、現場の“朝の30分”から見てください」

会議室は、少しざわめいた。
木村がスマホを立て、机を囲む四人に身を寄せる形で説明を始める。
動線の渋滞、紙を探す無駄、現場の困り顔。
「このアングルは、先方の倉庫で実際に起きている想定です。ここで導入後の動きに切り替えると、待ち時間が3分短縮されます。数字では3分。でも“人の気持ち”では、出勤のイライラが一つ減ります」
役員が身を乗り出した。
「……続けてくれ」

プレゼンは、結局スマホの画面を皆で覗き込む形で終わった。
帰りのエレベーターで、三沢は木村の肩を軽く叩いた。
「よく持ちこたえた」
木村は息を吐いた。
「怒られると思ってました」
「俺も、怒るつもりでいたよ。昨日の俺なら」

その週の金曜、先方から連絡が来た。
「今回は御社にお願いしたい。ただし、最初の一ヶ月は“数字”じゃなく“現場の空気”の変化を見せてほしい」
電話口の担当者は言った。
「正直、あの状況で“続けます”と決めた顔が、今日まで残ってるんです」

受話器を置いた手が、少し震えた。
勝った、のか。
いや、違う。
“勝ち方”が、初めて自分の中で腑に落ちた。

その夜、三沢はフロアの灯りをひとつずつ消しながら、梶原の席の前で立ち止まった。
「梶原さん。来週、1on1させてください。あなたが、この仕事で一番“いい顔”していた瞬間の話を、聞きたい」
梶原は椅子にふんぞり返り、しばらく天井を見てから、ぽつりと言った。
「十年前、初めて契約をもらった日かな。客先の倉庫で“一緒に汗かいた”って言われた」
彼は、ほんの少し笑った。
「……その話、ずっと誰にもしてなかったよ」

月が変わる頃、チームの雑チャンネルは動き出した。
「今日の“いい顔”」というスレッドができ、誰かが撮った同僚の横顔が上がる。
相原が、昼の時間を使ってメンバーの家族の誕生日カレンダーを作った。
山根は、動画の撮り方講座を開いた。
三沢は、母の病室で聞いた言葉をスプレッドシートの上に置いた。
——今できることを、ひとつずつ。
——誰のために、どんな“いい顔”を増やすのか。

そして、ある夕方。
辞めたはずの佐伯から、短いメールが届いた。
件名は「近況」。本文は二行だけ。
「新しい職場で、初めて“ありがとう”を言われました。
三沢さん、あの時は、ごめんなさい。今なら、少しわかります。」
画面の文字が滲んだ。
彼女は戻ってこないかもしれない。それでも、その二行は、チームのどの数字より重たかった。

年度末、上層部からの打診が来た。
「本社の統括に来ないか」
出世のチャンスだった。
会議室の窓から見える街は、眠らないままだ。
三沢は、少しだけ考えてから、返事をした。
「ありがとうございます。もう一年、この現場で続けさせてください。今、芽が出たばかりなんです」
電話の向こうは意外そうに黙った後、「わかった」とだけ言った。

夜。フロアの照明は落ち、非常灯だけが薄く残る。
帰り支度を終え、エレベーターへ向かう廊下で、彼は立ち止まった。
窓ガラスに映る自分の顔は、知らない顔だった。
頬の力が抜けて、眼差しがやわらかい。
ようやく、誰かの上司ではなく、誰かの仲間の顔になった気がした。

ポケットから、名刺サイズの紙を取り出す。
片側には三つの問い。
——「今日、誰の“いい顔”を増やした?」
——「そのために、明日、何をひとつだけやる?」
——「うまくいったら、誰に“ありがとう”を伝える?」

裏側には、ただ一言。
「成果は“答え”で決まらない。毎日の“問い”で決まる。」

その紙を財布に戻し、彼はビルを出た。
外は、冬の匂いが近づいている。吸い込んだ息が白くなり、すぐに消えた。
どこかで笑い声がした。
その笑い声が、明日またこのフロアにも戻ってくる気がした。

――――――――――――――――――

『「個」の幸せが「チーム」を変える! ウェルビーイング最強メソッド』ご案内

笑顔のない職場は、成果の数字より先に、会話の数が減っていきます。三沢の物語の裏側には、“人が動きたくなる場づくり”の手順があります。本書はその手順を、心理学の知見と現場の実践で丁寧に言語化した一冊です。数字だけを追うマネジメントから、“問い”と“習慣”で成果を積み上げるリーダーシップへ。今日から現場で試せる具体策が、無理のないステップでまとまっています。

■この本で得られること
・「成果は答えでなく問いで決まる」を現場に落とし込む設計図
・1on1や定例会でそのまま使える“良い問い”の言い回しと流れ
・強みを再現させるフィードバックと、心理的安全性を育てる対話のコツ
・数字と意味(目的)をつなぎ直し、エンゲージメントを底上げする進め方
・小さな成功を循環させ、離職・不信のスパイラルを反転させる仕組み

■こんな方に
・結果は出るのに、チームの空気が重く、ついて来られていないと感じるリーダー
・「人はいるのに動かない」「右腕が育たない」原因を根から整えたい管理職
・会議が“報告の場”で止まり、納得と自発性が生まれない組織のご担当者
・数字と幸せの二者択一から抜け、長く続く成果をつくりたい経営者

■読後に起きる変化
・会話が変わる――問いが変われば、表情が変わる
・表情が変わる――表情が変われば、行動が変わる
・行動が変わる――行動が変われば、成果が続く

「誰の、どんな“いい顔”を増やしたいのか。」
その一点が、チームを前に進めます。どうか最初のページを開いてください。最初の章は、あなたの現場から始まります。
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今日の一歩を、ここから。

武蔵野大学ウェルビーイング学部学部長・教授 ウェルビーイング学会代表理事 前野隆司氏 推薦! ウェルビーイングアワード2025(組織・チーム部門)GOLD受賞 滋賀県社会福祉学会第42回大会・奨励賞受賞 キラビトメンバー...

28/07/2025

【メンタル不調】過去最多…職場のストレス労災急増(前編)【第1章|第007話】

新作動画を公開しました。
今回は私がこの仕事をしている軸となる内容を取り上げました。
皆さんは、何のために仕事をしていますか?
決して、自分や周囲の人を苦しめるためではなく、自分も周囲も社会も豊かにするためではないでしょうか。
いつになく、熱く語っていますので、、、笑
今回の動画の感想や他の質問がありましたら、コメントいただけると嬉しいです。

#研修職人
#くろちゃん先生
#人財育成の新常識
#職場のウェルビーイング改革
#ポジティブ心理学
#メンタルヘルス
#ストレス

22/06/2025

YouTubeチャンネル「人財育成の新常識 研修職人くろちゃん先生」の一本目の動画のサムネイルができました。
動画の編集も終えていて、先週中にアップするつもりでしたが、アップするのにもいろいろな設定が必要で苦慮しています…💧
とはいえ、ちょっとずつですが作業が進んでいるので、間もなく一本目投稿できそうです。
コメント欄からチャンネル登録をお願いします✨

#人財育成の新常識
#研修職人
#くろちゃん先生
#ウェルビーイング
#ポジティブ心理学
#職場のウェルビーイング改革
#働きがい改革
#キャリアコンサルタント
#企業研修
#ラシクアカデミー

【チーム力アップのためのコミュニケーション】複雑多様化する企業の課題解決や目標達成のために、個々の能力だけでなく組織やチームをいかに機能させ、イノベーションを生み出すかが重要視されています。   本セミナーでは、グループワークやカードゲーム...
09/07/2024

【チーム力アップのためのコミュニケーション】
複雑多様化する企業の課題解決や目標達成のために、個々の能力だけでなく組織やチームをいかに機能させ、イノベーションを生み出すかが重要視されています。  
 本セミナーでは、グループワークやカードゲーム等の体験学習を通じて、成果を上げるチームづくりや多様性を活かして組織力を高めていくために必要なコミュニケーションスキルを体得していただきます。

Ⅰ.研修の目的
 ・ 研修の目的
 ・ 良いチームと悪いチームとの違い

Ⅱ.多様性の理解 
 ・ 自分の価値観
 ・ 他者の価値観
・ 価値観によるコミュニケーション

Ⅲ.多様性から生まれるイノベーション
・ 相手の意見を尊重し、活かすコミュニケーション
・ 互いのリソースでイノベーションを生み出す

Ⅳ.まとめ
・ 学び・気づき
・ 今後の活かし方

■日時
2024年7月10日(水)
13:00~17:00
(受付は12:40より開始)

■会場
大阪梅田池銀ビル 12階ホール 
大阪市北区茶屋町18-14

■受講料
特別法人会員 7,700円
法人会員   13,200円
一般     22,000円 

■お申込方法
自然総研HPよりお申込みください。

27/01/2024

住所

京都府京都市中京区錦小路通室町西入天神山町280番地
Kyoto-shi, Kyoto
604-8221

ウェブサイト

アラート

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