31/08/2026
全体構成、他システムとの連携方式、移行の手順、例外パターンの扱い、想定されるリスクとその対策。もれなく、正確に。45分かけて説明しました。お客様は最初うなずいていましたが、途中から相槌が「はい」「はい」と一定になり、最後にこう聞かれました。「……で、結局、うちは何をすればいいんでしたっけ?」。私たちは、これを説明が下手だったからではなく、全部説明したからこそ起きたことだと考えています。
認知負荷とは、何かを理解しようとするときに頭が使う容量のことで、教育心理学者ジョン・スウェラーが1988年に提唱しました。人が一度に頭に置いておける情報の数は、多く見積もっても4つ程度とされています。45分の説明で情報が30個出てきたとしても、相手の頭に残るのはそのうちのごく一部です。しかも詳しい人ほど、この失敗をします。自分の頭の中ではすでに知識が整理されていて容量をほとんど使わないため、「これくらいは前提として話しても大丈夫だろう」という判断が、ほぼ毎回ずれてしまうのです。
身近な例で言えば、初めて入った店の券売機の前で固まる、あの数秒です。ボタンが50個、写真もなく、後ろには人が並んでいる。選べなかったのは情報が足りなかったからではなく、多すぎたからです。多すぎる情報は、ゼロと同じ結果になります。お客様が提案の前で黙るのも同じで、理解できないからでも興味がないからでもなく、処理しきれていないだけです。「持ち帰って検討します」の正体は、たいていこれです。
対策は話し方の工夫ではなく、量を減らすことです。減らした分は資料に書いておけばよく、話す量と渡す量を分けるだけで、伝わり方は変わります。私たちの実践は3つです。提案の冒頭で「今日決めていただきたいこと」を1つだけ先に言う。一度に出す選択肢は3つまでにする。相手が黙ったら、説明を足さずに「いまの時点で、引っかかっているのはどこですか」と聞く。
営業や提案、社内での説明に携わる方は、ぜひ今回の記事をご覧ください。
前回は「正論は、正しいから嫌われる」という話でした。 認知的不協和を避けるために、相手は検討ではなく防御に入る。だから正しさは逃げ道とセットで出す、という結論でした。 今回は、まじめな人ほど深くハマるク....