YanoICT(矢野経済研究所 情報通信・金融事業部)

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YanoICTではICT産業分野を以下の15領域に分類。各領域のエキスパートが、主要企業の動向から関連する社会・経済トレンドまで、幅広い最新情報をつねにウォッチしています。

ビジネスプリンタ市場に関する調査レポートサマリー2026.08.042025年度のビジネスプリンタ市場はオフィス向けが減少、産業向けは微増となった。今後も世界市場規模は、カテゴリごとの方向性がより明確になるとみる。https://www.y...
07/08/2026

ビジネスプリンタ市場に関する調査
レポートサマリー2026.08.04

2025年度のビジネスプリンタ市場はオフィス向けが減少、産業向けは微増となった。今後も世界市場規模は、カテゴリごとの方向性がより明確になるとみる。
https://www.yanoict.com/summary/show/id/812

■■ビジネスプリンタ市場の概況
2025年度のビジネスプリンタ世界市場規模(メーカー出荷ベース)は、出荷台数が前年度比97.9%の1,083万7,146台、出荷金額が前年度比101%の1兆3,083億1,000万円となった。

カテゴリ別にみると、プロダクションプリンタは、出荷台数が前年度比101.0%の9万3,781台、出荷金額が前年度比103.0%の6,467億2,000万円となり、微増で推移した。LFP(インクジェット方式)は、出荷台数が前年度比101.0%の33万4,030台、出荷金額が前年度比100.8%の2,950億8,000万円となり、こちらも微増を維持した。一方、構成比の大きいページ中-低速プリンタは、出荷台数が前年度比97.7%の1,040万9,335台となり、オフィス需要の低下やペーパーレス化の進展を背景に減少基調が鮮明になった。

国内市場規模(メーカー出荷ベース)は、2025年度の出荷台数が前年度比99.2%の125万500台となった。ページ中-低速プリンタが前年度比97.2%の52万2,500台と減少した一方、MFPは前年度比100.7%の68万4,620台と微増に転じた。プロダクションプリンタは、出荷台数が前年度比98.9%の1万687台と微減となったものの、出荷金額は前年度比100.4%の573億1,500万円と微増を維持した。LFP(インクジェット方式)は出荷台数が前年度比101.2%の3万2,693台、出荷金額が前年度比101.3%の204億9,000万円と底堅く推移した。
https://www.yanoict.com/summary/show/id/812

■■ビジネスプリンタ市場の注目トピック
■プロダクションプリンタにおける高速インクジェット方式の拡大とデジタルシフトの加速
プロダクションプリンタ市場では、電子写真方式が依然として市場の大半を占めているものの、インクジェット方式の存在感が着実に高まっている。
世界市場では、2025年度のプロダクションプリンタにおける方式別出荷台数の構成比は、電子写真方式(カラー)と電子写真方式(モノクロ)が合計98.1%を占める一方、インクジェット方式は1.8%にとどまる。ただし、インクジェット方式は多品種・小ロット印刷や、宛名など一枚ごとに内容を変えて印刷するバリアブル(可変)印刷への対応力、色の表現性、刷版を製版して印刷するオフセット印刷に匹敵する品質を強みとして、緩やかながら拡大が続いている。

国内市場では、高速インクジェット機の2025年度出荷台数は増加基調を維持した。オフセット印刷からデジタル印刷への転換を検討するユーザーの拡大、ラベル印刷分野でのデジタル機へのリプレイス需要、軟包装をはじめとする産業印刷分野での小ロット対応ニーズが市場拡大を後押ししている。環境規制への対応意識の高まりを背景に、製版工程が不要でCO2排出量の削減にも寄与するデジタル印刷機への関心は引き続き高まっており、アナログ印刷からデジタル印刷へのシフトが今後も継続するとみる。また、ラベル印刷分野はアナログ印刷の比率が依然として高く、デジタル機への転換余地が大きい分野と言える。
https://www.yanoict.com/summary/show/id/812

■■ビジネスプリンタ市場の将来展望
2026年度以降のビジネスプリンタ世界市場規模は、カテゴリごとの方向性がより明確になるとみる。ページ中-低速プリンタは、オフィス需要の縮小とペーパーレス化を背景に減少基調が続き、2026年度の世界出荷台数は前年度比98.5%の1,025万1,500台(メーカー出荷ベース)と予測する。一方、プロダクションプリンタはインクジェット方式やラベル印刷分野を中心に緩やかな拡大が見込まれ、LFP(インクジェット方式)もインクを瞬時に硬化することで消費電力を大幅に低減できるUV系プリンタや環境に配慮した製品を中心に底堅く推移するとみる。

国内市場規模は、2026年度のプロダクションプリンタは出荷台数が前年度比99.5%の1万633台、出荷金額が前年度比100.5%の575億7,300万円(メーカー出荷ベース)と横ばいでの推移を予測する。MFPは印刷機としてだけではなく、ITサービスと組み合わせたソリューション提案の深化と業界再編による影響から、2026?2028年度にかけて前年度比101%前後での手堅い推移が見込まれる。

2028年度に向けた中期的な展望としては、オフィスプリンタの構造的な縮小を前提としつつ、MFPのITサービス等との連携強化、プロダクションプリンタの高付加価値化、LFP(インクジェット方式)の用途拡大・環境対応が市場維持の要素になるとみる。

ビジネスプリンタ世界市場規模は、2028年度にかけて出荷台数ベースでは緩やかな減少基調が続く一方、上位モデルやUV系プリンタ、業務支援ソリューションとの組み合わせにより、出荷金額ベースでは一定の下支えが期待される。ハードウェア単体の性能競争から、ワークフロー自動化・AI活用・環境対応・用途開発を含めたソリューション提案力が市場維持・拡大の鍵となる局面が続くとみる。
https://www.yanoict.com/summary/show/id/812

ECプラットフォーム市場に関する調査レポートサマリー2026.07.162025年度のECプラットフォーム市場規模は前年度比5.8%増の約2,398億円。生成AIやAIエージェントの活用拡大も中長期的な市場成長の要因に。https://ww...
05/08/2026

ECプラットフォーム市場に関する調査
レポートサマリー2026.07.16

2025年度のECプラットフォーム市場規模は前年度比5.8%増の約2,398億円。生成AIやAIエージェントの活用拡大も中長期的な市場成長の要因に。
https://www.yanoict.com/summary/show/id/811

■■ECプラットフォーム市場の概況
国内ECプラットフォーム市場は、EC(電子商取引)利用の定着や企業のDX推進を背景に拡大を続けている。近年はSaaS型ECプラットフォームの普及に加え、オムニチャネル(実店舗やECなどのあらゆる販売チャネルや流通チャネルを統合したデータ連携)対応や越境EC支援、データ活用支援などサービス領域の拡大が進んでいる。また、生成AIを活用した商品情報の生成や顧客対応、顧客情報や販売データ等を活用したマーケティング支援機能の実装も進み、EC事業者による業務効率化や顧客体験向上に向けた投資が活発化している。

一方で、新型コロナウイルス禍を契機とした新規ECサイト構築需要は一巡し、ECプラットフォーム市場は成熟化の局面を迎えている。そのため、市場成長の中心は新規導入から既存ECサイトのリニューアルや機能高度化、データを活用したマーケティング支援へと移行している。特に中堅・大手企業を中心としたリプレース(入れ替え)案件や企業間取引(BtoB向け)案件の増加により、EC事業者1社当たり売上高(ARPU)は向上しており、市場成長を支える要因となっている。

さらに、生成AIやAIエージェントの進展に伴い、AI対応基盤(AIがサイト内検索や情報収集をし、当該情報を適切に選択できるようにするための共通の仕組み)やデータ活用能力、API(Application Programming Interface)連携やMCP(Model Context Protocol)※への対応力などが新たな競争要因として重要性を増している。AIエージェントやAgentic Commerceへの関心も高まっており、市場環境は新たな変化の局面を迎えている。

以上のことから、2025年度の国内ECプラットフォーム市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比105.8%の2,397億5,000万円と推計した。

※MCP(Model Context Protocol)とはAIとEC(電子商取引)システムなどを接続するための標準プロトコルで、商品情報や在庫情報、注文情報などをAIへ適切に提供するための基盤技術であり、Agentic Commerce時代における重要な連携技術として注目されている。
https://www.yanoict.com/summary/show/id/811

■■ECプラットフォーム市場の注目トピック
■Agentic Commerceがもたらす新たな購買チャネルの形成
本調査では、Agentic Commerce市場を「AIエージェントが消費者に代わって商品またはサービスの探索、比較、予約、購入を支援または実行する一般消費者向け(BtoC)EC取引市場」と定義する。

日用品や消耗品などの日常的(定型的)な購買領域ではAIエージェントの活用が進展する一方、ブランド価値や体験価値が重視される領域では従来型ECサイトの重要性が維持されると考える。そのため、今後は「効率性を重視するAgentic Commerce」と「体験価値を重視する従来型EC」が併存する市場構造へ移行していくものとみる。

このような背景から、Agentic Commerceは既存ECを代替するのではなく、新たな購買チャネルとして段階的に市場が拡大していくものと予測する。

国内Agentic Commerce市場規模(AIエージェント経由の一般消費者向け(BtoC)EC取引額ベース)は、2026年度の1,500億円から2030年度には3兆円規模へ拡大し、2026年度~2030年度の年平均成長率(CAGR)は111.5%で推移すると予測する。市場規模は急速に拡大するものの、2030年度時点においても国内一般消費者向け(BtoC)EC市場全体に占める割合は8.9%にとどまる見通しであり、当面は既存ECを補完する新たな購買チャネルとして、日用品や消耗品を中心に利用が拡大していくものと考える。
https://www.yanoict.com/summary/show/id/811

■■ECプラットフォーム市場の将来展望
国内ECプラットフォーム市場は、一般消費者向け(BtoC)EC市場の成熟化や新規ECサイト構築需要の一巡を背景に、今後も成長を続けるものの、市場成長率はこれまでに比べて緩やかに推移すると予測する。

そのため、今後の市場成長は新規導入需要よりも、既存ECサイトのリニューアルや機能高度化、企業間取引領域におけるDX需要の拡大、オムニチャネル対応、越境EC対応への投資拡大などによって支えられると考える。

また、生成AIやAIエージェントの活用拡大も、中長期的な市場成長の促進要因になると考える。特にAIエージェントの活用が業務支援から業務自律化の領域へと広がることで、ECプラットフォームの高付加価値化が進み、EC事業者1社あたりの平均契約単価(ARPU)の向上を通じた市場規模の拡大が期待される。

さらに、API連携や外部サービスとの連携機能の充実、高いカスタマイズ性を備えたSaaS型サービスの拡大などを背景に、フルスクラッチ型からSaaS型・パッケージ型への移行が中長期的に継続することも、市場全体の安定成長を支える要因になるとみられる。

こうしたなか、国内ECプラットフォーム市場規模は事業者売上高ベースで、2025年度の2,397億5,000万円から、2030年度には2,940億円へ拡大し、2026年度~2030年度の年平均成長率(CAGR)は3.9%で推移すると予測する。
https://www.yanoict.com/summary/show/id/811

デジタルマーケティング市場に関する調査を実施(2026年)(レポートサマリー2026.07.16)https://www.yanoict.com/summary/show/id/810デジタルマーケティング市場規模は堅調に拡大。AIの活用を...
23/07/2026

デジタルマーケティング市場に関する調査を実施(2026年)
(レポートサマリー2026.07.16)
https://www.yanoict.com/summary/show/id/810

デジタルマーケティング市場規模は堅調に拡大。AIの活用を見据えたデータ整備需要を受け2026年は4,789億円、今後も市場は成長を見込む。

■■デジタルマーケティング市場の概況
2025年の国内デジタルマーケティング市場規模は、事業者売上高ベースで4,201億2,000万円と推計した。2026年の同市場は、前年比114.0%の4,789億円に成長すると見込む。

市場を牽引する最大の要因は、AI活用に取り組むユーザー企業でのデータ整備需要である。AIを高度に活用するには、データの質と量に大きく依存することが認識されるようになり、自社固有のデータを整備し、活用することの重要性が高まっている。なかでも、顧客データはAI活用における競争力の源泉となる。AIを活用し、個々の顧客に最適な営業・マーケティング活動を実践するため、顧客データを収集した上で蓄積し、活用するといった仕組みとしてのデジタルマーケティングツールへの投資意欲が一層高まっている。

また、この動きは、新規導入の拡大に直結するとともに、既存ユーザー企業においても活用の深化・定着が進むことで市場拡大に寄与している。従来、デジタルマーケティングツールは導入後における活用の定着が課題とされてきたが、AI活用を見据えたデータ整備の必要性が経営課題として認識されるようになったことで、これらを積極的に活用しようとする機運が高まっている。さらに、生成AIを活用したFAQや操作サポート機能の充実も相まって、ユーザー企業の自律的な活用を後押ししている。
https://www.yanoict.com/summary/show/id/810

■■デジタルマーケティング市場の注目トピック
■AIエージェントがツールのあり方を変える
2024年末以降、生成AI技術の進展やAIエージェントの普及を背景に、SaaS※1というビジネスモデルの持続可能性を問う議論が業界全体に広がった。AIエージェントが人間の代わりにタスクを自律的に実行するようになれば、従来の「シート数(ライセンス数)×月額」という課金形態が成り立たなくなる可能性がある。これに対して、既に一部のベンダーでは、利用量に応じた従量課金やタスク処理件数、生み出した成果に応じた成果報酬型といった課金形態への転換が進められている。また、システムの接続性とインターフェースの転換も避けられない課題となっている。AIエージェントはAPI※2やMCP※3を通じてツールを直接操作するため、これらへの対応が遅れたツールは、機能の優劣以前に選定候補から外れるリスクがある。従来は画面の使いやすさが差別化のポイントであったが、今後はAIエージェントとの接続性が、ベンダーの新たな評価軸になると考える。

※1 SaaS(Software as a Service):ソフトウェアをインターネット経由でサービスとして提供する形態
※2 API(Application Programming Interface):異なるソフトウェア同士がデータや機能をやり取りするための接続口
※3 MCP(Model Context Protocol):AIエージェントと外部ツールを統一された規格でつなぐための標準仕様

■■デジタルマーケティング市場の将来展望
デジタルマーケティング市場は、引き続きAI活用を見据えたデータ整備需要の高まりにより、拡大すると見込む。加えて、各ツールへのAI機能の実装・強化及びユーザー企業でのAIエージェントの普及が進むことで、より高度な営業やマーケティング活動を実践できるようになり、ツールの活用範囲と利用深度がさらに広がることも、市場拡大を後押しする要因になると考える。

AIエージェントが適切に機能するためには、顧客の行動履歴・購買背景・商談経緯といったコンテキスト(文脈情報)が不可欠である。質の高いデータを保有するツールほど、AIエージェントが参照し、活用する情報基盤として機能しやすいという優位性が生まれる。一方、AIエージェントの普及速度は企業規模やデジタル活用の成熟度によって異なる。大企業では自律型AIエージェントの本格的な活用が進む一方、中堅・中小企業では引き続きツールの導入や定着支援が重要な課題として残る。ユーザー企業が求めるものは状況によって大きく異なり、有効な戦略も変わる。ベンダーは、どのようなユーザー企業向けて価値を提供するかを起点に、製品・機能・サポート体制を一貫して設計することが求められる。
https://www.yanoict.com/summary/show/id/810

AI時代の新たなユーザー接点 ~AIスマートグラスからARスマートグラスへ進化する次世代市場~アナリストオピニオン2026.06.24https://www.yanoict.com/opinion/show/id/465■■AIが変えるスマ...
30/06/2026

AI時代の新たなユーザー接点 ~AIスマートグラスからARスマートグラスへ進化する次世代市場~
アナリストオピニオン2026.06.24
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/465

■■AIが変えるスマートグラス市場
これまでXRデバイス市場は、VRヘッドセットとMRデバイスを中心に発展してきた。VRヘッドセットは現実世界を遮断し、ユーザーを完全な仮想空間へ没入させることを目的としている。一方、MRデバイスは現実空間とデジタル空間を融合し、現実世界にデジタルオブジェクトを重ね合わせながら相互作用を実現するものであり、エンターテインメント用途に加え、設計、製造、医療、教育などのエンタープライズ分野でも着実に活用実績を積み重ねてきた。
対してスマートグラスは、VRやMRのような没入型デバイスではなく、AR(拡張現実)表示を活用しながら日常生活に溶け込むウェアラブルデバイスとして進化してきた。しかし、用途は映像視聴や業務支援などに限定されており、世界のスマートグラス出荷台数は少量に留まっていた。

こうした状況が2025年以降、大きく変化している。生成AIの進化を背景に、スマートグラスは単なるAR表示デバイスから、AIアシスタントを常時利用するためのウェアラブル端末へと再定義されつつある。ユーザーはスマートグラスを通じてAIアシスタントと自然な対話を行い、リアルタイム翻訳、情報検索、画像認識、スケジュール管理などの機能をハンズフリーで利用できるようになった。スマートフォンは画面を確認しながら操作する必要があるのに対し、AIスマートグラスは視線を前方に向けたまま利用できるようになった。また、搭載されたカメラやマイクから取得した映像・音声情報をAIがリアルタイムに解析することで、状況認識や行動支援、パーソナライズされた情報提供が可能になり、従来のウェアラブルデバイスにはない新たな価値を創出した。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/465

■■ARスマートグラスの課題
これまでのXRデバイス市場は、映像表示や空間コンピューティング体験の提供を主な価値として発展してきた。しかし、表示技術の制約に加え、バッテリー性能、重量、価格といった課題から、一般消費者の日常利用には適さないケースが多かった。結果、市場は製造業、物流、医療、保守点検などの業務用途を中心に形成されてきた。

バーチャルオブジェクトやデジタル情報をレンズに透過表示できる「ARスマートグラス」は、長年にわたりスマートフォンの次世代デバイスとして期待されてきた。実際、2026年以降、MetaやAppleを中心に次世代ARスマートグラスの早期市場投入への期待が高まった。しかし、大手メーカーによる市場導入は2030年頃が見込まれており、市場の期待とは裏腹に製品開発が大きく遅れているのが実情である。

主な要因として、①表示性能(視認性・光学系) ②発熱・消費電力対策 ③小型・軽量化と高性能化の両立 ④ユーザーインターフェース(UI/UX)といった技術課題が挙げられる。

① 表示性能
ディスプレイの進化が普及の鍵を握っている。AR表示を実現するためには、高輝度かつ低消費電力のディスプレイ技術や高性能な光学部品が必要であり、一般的な眼鏡に近い装着性との両立が難しい状況にある。現在主流となっているMicro OLEDに加え、将来的にはMicro LEDの実用化が期待されている。Micro LEDは高輝度、低消費電力、小型化といった特長を持ち、屋外利用を前提とするARスマートグラスに適した技術とされる。また、映像をレンズ内へ投影するWaveguide技術も進化を続けており、より薄型で自然な外観を実現するための重要な技術として注目されている。

② バッテリー性能
AR表示は常時映像を投影する必要があるため消費電力が大きく、十分な駆動時間を確保することが容易ではない。また、眼鏡型デバイスとして快適な装着性を維持するためには、重量増加を抑えながら十分なバッテリー容量を確保する必要がある。発熱対策は、小型・軽量化に伴い放熱スペースが限られるため、発熱対策が重要課題となる。主な対策として、低消費電力SoCの採用、ディスプレイや通信モジュールの省電力化、グラファイトシートや金属フレームによる放熱設計が進められている。また、AI処理のクラウドオフロードや動的電力制御により発熱を抑制し、装着時の快適性と安全性の向上が図られている。

③ 小型・軽量化と高性能化の両立
長時間装着時の快適性向上のため、小型・軽量化が重要課題である。一方で、ディスプレイ、SoC、カメラ、センサー、通信モジュール、バッテリーなど多くの部品を限られた筐体に搭載する必要があり、高性能化との両立が求められる。そのため、高密度実装技術や部品の小型化、軽量素材の採用が進められている。

④ ユーザーインターフェース(UI/UX)
スマートグラスでは、音声、視線追跡、ジェスチャー、タッチ操作など複数の入力手段を直感的に利用できるUI/UX設計が求められる。中でも音声認識技術はAI連携により劇的な向上を果たしたものの、誤認識や操作負荷が高いと利便性が低下するため、更なる高精度な認識技術と自然な操作性の実現が求められる。また、移動中や作業中でも安全に情報を提示できる表示設計や、利用シーンに応じた最適な情報量の制御も重要となる。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/465

■■眼鏡としての実用性も普及の鍵
AR×AIスマートグラスの普及においては、AI機能やAR表示性能だけでなく、眼鏡としての実用性も重要な要素となる。特に一般消費者市場では、度付きレンズへの対応やサングラスとしての機能性を考慮する必要がある。
現在のAIスマートグラスでは、度付きレンズへの交換に対応する製品が増えており、既存の眼鏡ユーザーでも違和感なく利用できる環境が整いつつある。一方、本格的なARスマートグラスでは、レンズ内部に映像を投影する光学部品(Waveguide)が組み込まれるため、度付きレンズとの両立が技術的課題となっている。今後は光学技術の進化により、AR表示機能と視力補正機能を統合したレンズの実用化が期待される。
また、屋外利用を前提とするARスマートグラスでは、サングラスとしての機能性も重要である。強い日差しの下でも映像を視認できる高輝度ディスプレイに加え、UVカットや調光機能、電子調光レンズなどの採用が進むとみられる。将来的には、眼鏡、サングラス、AIアシスタント、ARディスプレイを一体化した製品の登場も期待される。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/465

■■普及の見通し
今後の市場見通しとして、2027~2028年頃までは本格的なARスマートグラスの有力製品は限定的であり、市場はAIスマートグラスが牽引すると考えられる。この時期の製品は音声対話や画像認識、リアルタイム翻訳などのAI機能を中心とし、AR機能は通知表示やナビゲーションなど限定的な用途に留まる見込みである。

現在、AIスマートグラス市場を牽引しているのはMetaである。同社はRay-Banブランドを展開するEssilorLuxotticaとの協業により、一般的な眼鏡と変わらないデザイン性を維持したAIスマートグラスを投入し、市場拡大をリードしている。現時点では本格的なAR表示機能を搭載していないものの、AIアシスタントを中心とした「AIグラス」戦略を推進しており、将来的にはAR機能を備えた次世代製品への進化を目指している。

また、GoogleもGeminiを核としたAndroid XR戦略を推進しており、スマートグラス市場へ再参入している。さらに、中国メーカーも積極的な動きを見せており、XREAL、Rokid、Huawei、Xiaomiなどが価格競争力と技術力を武器に市場開拓を進めている。

一方、Appleは空間コンピューティング市場においてVision Proを投入し、高度なMR体験を提供している。現時点では一般消費者向けARスマートグラスを投入していないものの、独自チップ、光学技術、空間OSを活用したARグラスの開発を進めているとみられており、市場参入時には大きな影響力を持つ可能性が高い。

2028年以降は表示技術やバッテリー性能の向上に加え、生成AIとの融合が進むことで、より実用性の高いARスマートグラスが市場に投入され始めると見込まれる。特に生成AIとの融合は普及の鍵を握る要素であり、スマートグラスはユーザーが見ている映像や周辺環境をリアルタイムに認識し、翻訳、ナビゲーション、情報検索、業務支援などを自然言語で提供できるようになる。これにより、「画面を見る」のではなく、「視界そのものがインターフェース」となる新たなユーザー体験が実現する可能性が高い。

また、2030年以降は5G-Advancedの成熟化に加え、6GやNTN(Non-Terrestrial Network)の商用展開が進むことで、クラウドAIやXRコンテンツを低遅延かつ大容量で利用できる環境が整うと見込まれる。これにより、端末側の演算負荷をクラウドへ分散することが可能となり、スマートグラスの軽量化や長時間駆動にも寄与すると考えられる。さらに、AIエージェント技術の進化により、ユーザーの行動や状況を理解した高度なパーソナルアシスタント機能の実現も期待される。 市場拡大はまず物流、製造、保守点検、医療などの業務用途から進み、その後コンシューマ市場へ波及すると予想される。特に業務用途では、作業支援、遠隔支援、教育・訓練などの分野で導入が加速するとみられる。一方、コンシューマ市場では、ナビゲーション、コミュニケーション、エンターテインメント、ライフログなど日常利用シーンへの浸透が期待される。

主要プレーヤーとしては、Meta、Google、Appleなどの米国勢に加え、XREAL、Rokid、Huawei、Xiaomiなどの中国メーカーが市場を牽引すると見込まれる。長期的にはスマートフォンが担っている情報検索やコミュニケーション機能の一部を代替し、「AIを常時利用するためのユーザー接点」として定着する可能性がある。特に2030年代後半には、AIエージェントとの連携を前提とした新たなコンピューティングプラットフォームへと進化し、AR×AIスマートグラスが次世代デジタル体験の中心的なデバイスとなることが期待される。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/465
(賀川勝)

インフラ保全ではITソリューション活用が不可逆的に進むアナリストオピニオン2026.06.12https://www.yanoict.com/opinion/show/id/464■■今後、社会インフラ保全の継続が困難になる国内の社会インフ...
26/06/2026

インフラ保全ではITソリューション活用が不可逆的に進む
アナリストオピニオン2026.06.12
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/464

■■今後、社会インフラ保全の継続が困難になる
国内の社会インフラ※では、築後50年を経過したものが急速に拡大しており、老朽インフラ対応(点検・モニタリング、保全・補修対応、新規増設・更新など)は喫緊の課題である。特に、2030~2040年にかけて老朽インフラの増加傾向が加速する見通しであり、ここでの老朽インフラの保全対応は、大きな社会課題となってくる。

社会インフラの運営・管理は、従来はインフラ保全に精通した自治体の技術者が担っていた。現在でも、自治体の技術者に依存する部分は大きいが、インフラ保全に携わっていた自治体職員(現場技術者)の減少及び高齢化、さらには現場での技術力低下も課題となっている。合わせて、業務委託先である地場ゼネコンにおいても、人手不足/技術者の高齢化は不可逆的に進展している。こういった点を勘案すると、従来型の保全では、社会インフラの適切な管理が維持できなくなる蓋然性が高いのである。

※社会インフラ:道路、鉄道、港湾、空港、河川、ダム、上下水道、防災・消防、エネルギーなど
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/464

■■社会インフラ保全で注目されるデジタル活用
上述したような課題づくしを背景に、社会インフラを取り巻く環境は、年々厳しさを増している。
外部環境である「老朽インフラの増大」、「現場技術者の減少・高齢化(委託先でも同様な傾向)」、「予算不足」、「運用・管理コストの増加傾向」などを勘案すると、従来型の社会インフラ保全では対応に限界が迫っており、デジタル技術を使った社会インフラ保全の高度化が不可避となっている。国交省など国としても、デジタル活用を推奨する国土強靱化策を推進しており、社会インフラ保全対応をデジタルで効率化・高度化する流れが進んでいる。
さらに社会インフラ保全では、点検・モニタリングをベースにした設備の長寿命化、従来型の「事後保全 → 予防保全(CBM)」へのシフトといった次世代型保全志向も強まっている。また2010年代以降は、防災/減災対応といった点も社会インフラ保全における主要テーマとなっている。このような時代のニーズに合わせるためにも、社会インフラ保全におけるデジタル活用は必須となっている。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/464

■■「レガシー型社会インフラIT → 社会インフラ向けITソリューション※」への流れ
従来型の社会インフラIT(レガシー社会インフラIT)は、既存の社会インフラの更新・保全時を中心に、既設インフラの建て直し時、新規の社会インフラ構築時などにデジタル技術を組み込むもので、基本的に従来タイプのIT技術を使う。
一方、社会インフラ向けITソリューションは、IoTやAI(画像解析等)、クラウド、無線ネットワーク、3D、ドローン、ロボット、衛星データといったテクノロジーを活用した社会インフラ向けITソリューションである。用途は主に保全・点検/監視を対象としており、国交省/行政サイドの後押しもあって、2010年代後半から浸透が始まっている。
現在の社会インフラIT市場では、圧倒的に従来型の社会インフラITが主流である。しかし、国交省を始めとした行政サイドやNEXCOグループなどの高速道路事業者、JRグループ/私鉄大手などが設備保全や点検、設備モニタリングなどへのテクノロジー活用を進めている事もあり、社会インフラ向けITソリューションの適用領域が拡大している。
現状の社会インフラ向けITソリューションは、適用領域/マーケット規模ともに限定的である。しかし2030年度に向けた展望では、500億円規模のマーケットになる蓋然性は高いと考えており(工事費などは含まないソリューション市場)、弊社としても注目領域の一つである。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/464

社会インフラ向けITソリューションの一例として、防災/減災に向けた事例を考察する。
防災/減災向けのITソリューションでは、危険個所監視・モニタリング(道路等のアンダーパス監視、河川・ダムの水位監視、高潮監視、道路・鉄道の法面監視、崖・斜面などでの崩落監視など)や、豪雨時などでの自然環境計測(災害シミュレーション向け)といった部分で実装が進んでいる。ここでは、監視・モニタリングといった従来業務から進んで、「予防保全/予兆検知」、「シミュレーション」といった点に主眼が置かれている。

※社会インフラ向けITソリューション:IoTやAI、データ解析/画像解析、クラウド等を活用して、ITベンダーなどが提供するソリューション。インフラ保全の高度化(次世代保全/CBMなど)や最適化(効率化/省人化、省エネの最適化など)、政策立案/戦略立案での判断支援などで効果が期待される。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/464

■■国交省の取り組み
国交省では、「持続可能なインフラメンテナンス」の実現に向けて、2021年6月に第2次「国土交通省インフラ長寿命化計画(計画期間:2021~2025年度まで)」を策定。ここでのポイントは、以下の5点になる。

◎集中的な修繕実施による「予防保全(CBM)」への本格転換
→各分野の施設の修繕率をKPIとして設定
◎新技術や官民連携手法の導入促進
→インフラメンテナンス国民会議を通じた新技術シーズとニーズのマッチング支援
◎集約・再編の促進
→各分野の集約・再編の取組をKPIとして設定
◎個別施設計画の内容の充実化
→コスト縮減等の具体的な方針の記載を促進
◎点検要領などの基準類の充実
→新技術の普及状況や新たな知見を踏まえて適切に改定

また国交省では、「国土強靭化(防災・減災等を目的にインフラ監視のデジタル化、災害予兆AIなど)」や「i-Construction / i-Construction 2.0(ドローン測量・3Dデータ・CIM/BIM・ICT建機などの活用で生産性/安全性向上を推進)」、「インフラDX(i-Construction 2.0含む:デジタルツイン、点検の自動化・AI化、ロボット/フィジカルAI、データプラットフォームなど)」、「NETIS(新技術情報提供システム:新技術採用の普及促進)」、「国土交通データプラットフォーム(MLIT Data Platform:道路・河川・点検記録・災害情報などのインフラ関連データの提供)」といった施策を主導し、インフラ保全を始めとしたインフラ領域でのテクノロジー活用を推奨している。
こうした国の動きは、社会インフラ保全現場におけるITソリューション活用に向けて追い風になっており、民間の大手インフラ事業者と合わせた推進力の両輪となっている。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/464

■■社会インフラ向けITソリューションで期待される効果
社会インフラ向けITソリューションでは、様々な導入効果が期待される。
具体的には、暗黙知を始めとした現場状況の見える化の実現、現場における更なる生産性の向上、安全管理/健康管理の向上に起因した就労環境の改善、さらには行政や企業サイドでの意思決定のサポートなどが期待されている。
現状では、レガシータイプの社会インフラITが圧倒的に普及している。しかし前述したような社会インフラ保全業務に対する課題を考えると、中期的には社会インフラ向けITソリューションを発展的に深化させる必要がある。そしてその時期はそれほど先ではなく、2030年代の前半には一定の目途を立てる必要があると考える。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/464

■■社会インフラIT市場におけるメーカー別構成
2023~2024年度の2ケ年平均での社会インフラITメーカーシェアを見る。(※弊社資料「2026社会インフラ向けICT市場の実態と展望」より抜粋。
https://www.yano.co.jp/market_reports/C67107200
尚、数値は各社の落札金額ベース)

当該期間では、鉄道ITを始め、道路IT、空港IT、水関連ITなどでトップクラスの実績を残した三菱電機グループ(三菱電機、三菱電機システムサービス、三菱電機プラントエンジニアリング)がトップ。尚、同社は2024年に、本調査では最大の168.3億円の案件を獲得している。
2位グループには、三菱電機グループと同様に、道路ITや鉄道IT、空港IT、水関連ITなどで幅広い実績を持つ東芝グループ(東芝、旧東芝インフラシステムズ(現東芝)、旧東芝通信インフラシステムズ(現東芝テリー)、東芝デジタルソリューションズ)及び、防災IT(特に消防IT:2023年度には115.5億円の超大型案件を獲得)を始め、空港IT、道路ITなどに強みを持つNECグループ(日本電気、NECネッツエスアイ、NECネクサソリューションズ、NECプラットフォームズ)が続く。
この上位3社とは僅差で、鉄道ITや水関連IT、防災ITにおける有力企業である日立グループ(日立製作所、旧日立国際電気(現国際電気)、日立パワーソリューションズ、日立システムズ)が4位で続く。そしてこの上位4社で、ITベンダーベースで見た社会インフラIT市場の過半数を占める。
この他には、道路IT(特に高速道路のETC設備/料金収受系設備等)で強みを持つ三菱重工グループ(三菱重工、三菱重工機械システム)、道路ITや防災ITに強みがある富士通グループ(富士通、富士通ネットワークソリューションズ、旧富士通ゼネラル(現ゼネラル)、旧富士通エフサス(現エフサステクノロジーズ))、2023年度に道路ITで100億円超の超大型案件を獲得したパナソニックグループ(パナソニックコネクト、パナソニック環境エンジニアリング)が続く。

(早川泰弘)

自治体DXに関する調査を実施(2026年)レポートサマリー2026.06.24■■自治体DXの概況政府は自治体が抱えるコスト削減などを目的に2025年度末までに自治体の住民記録や税務、福祉等の20業務における基幹業務システムを統一・標準化し...
25/06/2026

自治体DXに関する調査を実施(2026年)
レポートサマリー2026.06.24

■■自治体DXの概況
政府は自治体が抱えるコスト削減などを目的に2025年度末までに自治体の住民記録や税務、福祉等の20業務における基幹業務システムを統一・標準化し、デジタル庁が調達するガバメントクラウドで運用するという方針を決定したことから、全国の自治体(市区町村)では基幹業務システムの標準化を進めてきた。

本調査は2025年11月~2026年1月末に全国の自治体(市区町村)354自治体に対してアンケート調査を実施し、自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組み状況について、住民記録、税務、福祉等の20業務における基幹業務システム標準化が進むなかでの現況と、標準化対応後に注力意向の高い領域を比較しながら分析した。ここでは一部の分析結果を公表する。

自治体DXの取り組みについて、現在の取り組み状況(横軸)と今後の注力意向(縦軸)を散布図で表すと、各領域は2つに大別される。セキュリティの強化やマイナンバーカードの普及・利用促進に代表される継続投資領域(現在も取り組みが進んでおり、今後も注力が続く領域)と、自治体職員向けの庁内業務DX、フロントヤード※1改革、地域社会DXに代表される成長領域(現在の取り組みは途上にあるが、今後の注力意向が高い領域)である。

成長領域に位置する「自治体職員向けの庁内業務DX」(現在40.9%:今後94.0%)および「フロントヤード改革」(現在37.6%:今後86.2%)は、いずれも今後の注力意向が9割前後に達しており、基幹業務システムの標準化対応後における自治体投資の中心となる領域である。「地域社会DX」「デジタル人材の確保」「データ利活用」も同グループに位置しており、中期的な需要の拡大が見込まれる。一方、継続投資領域に位置する「セキュリティの強化」(現在77.4%:今後85.6%)は、取り組みが広く進んでいるなかでも引き続き高い注力意向が示されており、安定した需要が継続する領域である。

※1. フロントヤードとは窓口での受付業務や相談業務、住民が利用する庁舎内スペースなど、住民と行政が直接関わるあらゆる接点をさす。

■■自治体DXの注目トピック
■フロントヤード改革の取組状況 今後は「ワンストップ窓口」や「書かない窓口」が高い意欲
成長領域の一つであるフロントヤード改革は、住民と行政との接点(フロントヤード)のあり方を抜本的に見直し、デジタル技術を活用することで住民の利便性向上と職員の業務効率化を同時に実現する取り組みである。「書かせない(手書きで書類を記入する手間を省く)」「待たせない(待ち時間を最小化する)」「迷わせない(必要な手続きを自動的に案内するナビゲーション機能の提供)」「行かせない(行政手続きのオンライン化や窓口業務の代替拠点の活用)」行政サービスの実現を目指し、自治体DX推進計画の重点取組事項の筆頭に位置づけられている。今後の注力意向が86.2%に達する一方、現在の取組済み割合は37.6%にとどまっており、今後の対応意欲の高い領域である。

フロントヤード改革について、取り組み内容別※2にみると、現下、実装済みと回答した割合が高いのは「証明書のコンビニ交付」(84.7%)、「行政手続きのオンライン化」(73.6%)、「キャッシュレス決済」(68.1%)であり、これらは広く普及した取り組みといえる。一方、「リモート窓口」(13.1%)、「移動窓口」(14.3%)は実装済みの割合が低く、「実装予定なし」と回答した割合がそれぞれ58.7%、67.6%に達しており、普及が限定的な取り組みであることがうかがえる。

今後の実装予定・検討中と回答した割合が高いのは「ワンストップ窓口」(36.3%)、「書かない窓口」(34.6%)であり、「手続き案内システム」(30.0%)、「AIチャットボット」(28.4%)、「リモート窓口」(28.2%)が続く。既に普及した取り組みの次の段階として、住民に対する円滑で利便性の高い行政サービス体制の改善や、来庁を前提としない住民対応の実現に向けた取り組みへの関心が高まっている。

※2. 調査時期:2025年11月~2026年1月末、調査(集計)対象:全国の自治体(市区町村)354自治体、なお各設問項目により回答した自治体数(n数)は異なる、調査方法:郵送アンケートおよび電話アンケート調査、設問項目ごとに「実装済み」「今後実装予定/実装検討中」「実装予定なし」の3択より単数回答

サイバーセキュリティ市場に関する調査を実施(2026年)(レポートサマリー2026.06.03)https://www.yanoict.com/summary/show/id/8082025年度のサイバーセキュリティ市場規模は前年度比9.2...
04/06/2026

サイバーセキュリティ市場に関する調査を実施(2026年)
(レポートサマリー2026.06.03)
https://www.yanoict.com/summary/show/id/808

2025年度のサイバーセキュリティ市場規模は前年度比9.2%増の1兆9,471億円。サイバーセキュリティへの認識は事業を継続するための経営基盤に。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内のサイバーセキュリティ市場を調査し、参入企業やユーザー企業の動向、将来展望を明らかにした。

■■サイバーセキュリティ市場の概況
これまでセキュリティ分野への投資は、平時を維持するための費用、すなわち負担(コスト)と認識されることが多かった。また、中堅・中小企業においては、その規模ゆえに攻撃者に狙われる可能性は著しく低いと認識する傾向が強く、セキュリティ分野への投資に消極的な姿勢を採る企業も散見された。

​しかし攻撃の民主化(生成AI等により必ずしも専門性を有してなくとも一般人が容易に攻撃できるような状況)や、低コスト化(専門的技術や高価なハードウェアは必ずしも要件とされないこと等)が進んでいること、クラウド化やIoTの進展、また働き方の変化によって、自社内だけでなく、社外におけるリモートワークで利用されるモバイル端末やネットワーク環境等が多様化したことで、攻撃の入口が増加していることなどから被害は拡大している。被害を受けた企業の報告から、攻撃手法や感染経路などが明らかになり、日常業務の継続困難、復旧までにかかる時間の長さなどから企業におけるサイバーセキュリティと事業継続(BCP)の重要性が改めて認識されることとなった。こうしたことから、経営層のサイバーセキュリティに対する意識は、IT部門が担う技術的な業務から、事業を継続するための経営基盤そのものにかわり、セキュリティ分野への投資は拡大傾向にあり、2025年度の国内のサイバーセキュリティ市場規模は事業者売上高ベースで前年度比9.2%増の1兆9,471億円と推計した。
https://www.yanoict.com/summary/show/id/808

■■サイバーセキュリティ市場の注目トピック
■サイバーセキュリティの成熟度の平均値は3.0
本調査では2025年6月末~9月初に国内民間企業(プロセス製造業、加工組立製造業、サービス業、流通業、金融業)495社を対象にサイバーセキュリティの成熟度に関する法人アンケート調査を実施した。

​本調査結果から、レベル1やレベル5の企業は1割未満となっており、多くの企業がレベル2~4にあることが示された。また、レベル1~5の回答の平均を算出すると3.0となり、「サイバーセキュリティについては、会社が定めた文書化されたプロセスや手順に基づいて部分的に取り組んでいる」(レベル3)程度の成熟度といえ、やや不安が残る結果になった。
https://www.yanoict.com/summary/show/id/808

■■サイバーセキュリティ市場の将来展望
2026年度の国内のサイバーセキュリティ市場規模は事業者売上高ベースで、前年度比9.0%増の2兆1,220億円を予測する。

今後、AIは重要なキーワードのひとつである。中長期的にみればAIエージェントを製品(ハードウェア/ソフトウェア)に搭載することが想定され、運用にもAIエージェントが組み込まれることから、AIによるセキュリティ分野における運用の自動化が進むと予測する。

また近年は、日本市場ではあまり進んでこなかったマーケットプレイス経由での販売が増加傾向にある。大手外資系企業などのマーケットプレイスの活用が見込まれ、こうした傾向は続くと考える。

​こうしたなか、2030年前後には量子コンピュータによる暗号解読リスクへの対応なども検討しなければならない可能性がある。ベンダー企業各社は、備えるべき機能、エコシステム(ユーザー企業を中心に、パートナー企業(ユーザー企業のシステム構築や運用維持に係るシステムエンジニア企業)、ベンダー企業の関連する経済圏)の方向性について考える必要がある一方、パートナー企業はユーザー企業のシステム環境に即時対応できる技術やノウハウを強化していくとともに、進化するセキュリティトレンドに追随できるベンダー企業を見極める必要がある。
https://www.yanoict.com/summary/show/id/808

重要システムのクラウド移行は進むか――注目集まるソブリンクラウド(アナリストオピニオン2026.06.02)https://www.yanoict.com/opinion/show/id/463■■主権の確立に向けた潮流デジタル化が加速し、...
04/06/2026

重要システムのクラウド移行は進むか――注目集まるソブリンクラウド(アナリストオピニオン2026.06.02)
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/463

■■主権の確立に向けた潮流
デジタル化が加速し、多くのデータがクラウド上で処理されるようになった現代において、企業のITインフラ環境は日々変化が求められる。かつてクラウド移行の主目的はコスト削減や拡張性の確保であったが、昨今の不安定な国際情勢や地政学リスクの顕在化により、新たな評価軸として「デジタル主権」の重要性が注目されるようになった。こうした背景から、特定の国や地域の法律・規制を遵守し、データの保管から運用までを自国内で完結させる「ソブリンクラウド」が、特定の要件を持つ企業にとっての新たな選択肢として浮上している。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/463

■■ソブリンクラウドとは
ソブリンクラウド(Sovereign Cloud)とは厳格な定義はないが、主に特定の国・地域の法律・規制に準拠し、データの保管・処理・運用がその国・地域内で完結するクラウドサービスを指す。従来のパブリッククラウドサービスが、グローバルな展開とスケールメリットを重視してきたのに対し、ソブリンクラウドは主権の確保と経済安全保障に重点を置く。
そもそも、「ソブリン(Sovereign)」とは英語で「主権」「統治者」「君主」「国王」などを意味し、IT分野においては、組織や国家が独立してデジタル基盤を管理および運用できる能力として解釈される。なお、現代のITインフラにおけるデジタル主権の議論では、主にデータ主権、システム主権、運用主権の3つの要素が中心となる。

また、これらの3つの主権に加え、クラウド基盤やOS、セキュリティなどの基幹技術を自国で開発・保守し、海外への依存を避ける「技術主権」や、自国のデータに対して他国の法律が優先的に適用される事態を回避し、法的な管轄権を自国内に維持することを指す「法的主権」、セキュリティ対策の実施主体を自国内に限定する能力を指す「セキュリティ主権」といった見解もある。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/463

■■需要拡大の背景??地政学リスクと法規制の圧力
このような主権確保の動きが世界的に加速している要因は、2020年代に入り顕著となった地政学的リスクにある。米中対立の深刻化やロシア・ウクライナ情勢、さらには中東や台湾海峡を巡る緊張など、国際秩序の不確実性はかつてないほど高まった。実際に、経済制裁の影響で特定の国におけるクラウドサービスが突如として停止し、企業の経済活動が麻痺する事態も発生している。加えて、国家の関与が疑われるサイバー攻撃が重要インフラを標的として激化しており、デジタル基盤を他国の技術や法制度に過度に依存することのリスクが再認識されている。

各国の法規制・制度もこの流れを後押ししている。米国ではクラウドセキュリティ認証制度である「FedRAMP」が運用されている。これにより、厳格なセキュリティ要件を満たしたクラウドサービスのみが政府調達の対象となる。大手クラウド事業者は、こうした政府が定める厳格なセキュリティ基準やコンプライアンス要件に準拠した専用のクラウドサービス基盤を構築・提供している。欧州ではGDPR(一般データ保護規則)による個人データの域外移転への厳格な制限に加え、データ主権と透明性を掲げた「Gaia-X」プロジェクトが推進されている。フランスの「Bleu」やイタリアの「PSN」といった国家主導のクラウド戦略が展開される中、AWSやMicrosoft、Google Cloudといったハイパースケーラー各社も、欧州市場向けにデータや運用の主権を強化した専用リージョンの提供を開始するなど、事業者の対応も急ピッチで進んでいる。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/463

■■日本の現状――法制度と事業者の取組み
日本国内においては、2026年現在、政府主導のソブリンクラウド構築に向けた具体的な動きは限定的である。しかし、2022年に成立した経済安全保障推進法の影響は極めて大きい。同法に基づき、電気通信や金融、エネルギーといった基幹インフラを担う257社(2026年4月1日時点)が特定社会基盤事業者に指定され、重要設備の導入に際して主務大臣への事前届出が義務付けられた。また、2026年10月から段階的に施行予定の能動的サイバー防御法でもセキュリティレベルの底上げが求められることから、既存のレガシー環境ではなく先進的なセキュリティ対策が行える環境の必要性が高まり、ソブリンクラウドが有力な選択肢となっている。
国内のクラウド事業者も、こうした需要を取り込むべく新たな展開を見せている。特に注目されるのは、外資系大手の技術と国内運用の信頼性を組み合わせたアプローチである。Oracle Alloyを活用した取り組みでは、NRIや富士通、NTTデータ、ソフトバンク、日鉄ソリューションズといった国内大手ベンダーがパートナーとなり、OCIの高度なスケーラビリティやAI機能を維持しつつ、ハードウェアの物理管理や運用を日本国内で完結させる体制を構築した。他方、さくらインターネットが提供するさくらのクラウドは、ガバメントクラウドではこれまで条件付きでの採択だったが、2026年3月に305項目すべての技術要件を満たし、正式に採択された。ガバメントクラウド=ソブリンクラウドではないが、同社は国内事業者としての高い信頼性を強みに各種主権要件への対応を行い、ソブリンニーズを取り込んでいる。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/463

■■ソブリンクラウドの展望
ソブリンクラウドを必要とするデータやシステムは、クラウドサービス市場全体から見れば限定的である。しかし、これまでセキュリティやガバナンス上の懸念からクラウド化が困難とされ、オンプレミスに留まり続けてきた重要システムこそ、スケーラビリティや運用効率、最新技術へのアクセスといったクラウドのメリットを最も享受すべき対象といえる。クラウド事業者による主権要件への対応が進み、重要システムがようやくクラウドの利便性を享受できる土壌が整いつつある。今後は技術・運用の高度化と関連制度の拡充が続くことで、ソブリンクラウド市場は着実に拡大していくと考える。
もっとも、サイバー脅威が常態化する現代において、重要となるのは「ソブリンクラウド」の定義や機能そのものよりも、その概念が指し示す「デジタル主権をいかに確立するか」という問いへの向き合い方である。求められる主権の要件や度合いは企業・団体によって異なり、すべての組織に同一の対策が求められるわけではない。組織にとってどの要件が必要か、どのレベルで対策を講じるべきかを冷静に見極めたうえで適用することが、何より肝要だ。運用の透明性や迅速な脆弱性対応を含めたデジタル・レジリエンスの構築が組織の持続可能性を左右する時代において、ソブリンクラウドはその問いに応えるための有力な手段となるだろう。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/463
(宮村優作)

27/05/2026

ラベルプリンタはデジタル印刷領域の新たな事業の柱となるか
(アナリストオピニオン2026.05.21)

食品、化学製品、医薬品、日用品、物流などの分野では、表示内容の頻繁な更新、多品種小ロット化、トレーサビリティ強化への対応が常態化している。こうした変化を背景に、商業・産業向けの中大型デジタルラベルプリンタへの関心が高まっている。ここでいう対象は、小型のラベルライターではなく、一定の生産性、耐久性、色再現性、基幹システム連携性を備えた本格的な業務用機である。では、この分野は各メーカーにとって新たな事業の柱となり得るのだろうか。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/462

■需要の起点は「印刷」ではなく「現場運用」の変化
足元の需要を押し上げているのは、単なるラベル枚数の増加ではない。EC拡大に伴う物流ラベル需要、食品・化学分野での法規制対応、製造現場における在庫・工程管理の高度化など、現場運用そのものが変化していることが背景にある。従来のアナログ印刷ラベルは、大量生産時には効率的である一方、表示変更時の在庫ロスや短納期対応の難しさを抱えやすい。これに対し、デジタル方式は必要な時に必要な内容を必要量だけ印字でき、可変情報への対応にも適している。加えて、通常の商業印刷と同様、版を必要としないため、立ち上げロスや試し刷りを抑えやすく、小~中ロット対応でも経済合理性を持ちやすい。環境負荷低減や廃棄削減の観点からも訴求余地がある。したがって、この市場の本質は「ラベルを印刷する機械」の販売ではなく、「ラベリング工程をどう再設計するか」という業務改善需要にある。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/462

■各社のラベルプリンタに関する動き
メーカー各社の動向を見ると、競争軸は印字速度や解像度だけではなくなっている。エプソンはColorWorksを軸に、食品、飲料、化粧品、医薬向けのオンデマンド・フルカラー印刷を展開し、自動貼付機との連携や遠隔管理まで含めた提案を進めている。キヤノンも、高画質8インチ機と高速4インチ機を投入し、ラベル内製化支援、GHS対応、RFID連携などを通じて、製造・物流現場の運用改善需要を取り込もうとしている。
一方、印刷会社やラベルコンバーター向けでは、SCREENの動向が注目される。SCREENグラフィックソリューションズは「Truepress LABEL」シリーズを展開し、バリアブル印字や小~中ロット案件への短納期対応を訴求している。色再現性や品質安定性の強化に加え、基材適性の拡張にも取り組んでおり、アナログ中心だったラベル印刷工程のデジタル化を支える立場を鮮明にしている。コニカミノルタも「AccurioLabel」シリーズで、小ロット・短納期化に対応する高生産性デジタルラベル印刷機を展開しており、ラベル印刷事業者の生産方式転換を取り込む戦略を強めている。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/462

■なお大きいアナログ市場、デジタル化の余地
ラベル印刷市場全体を見れば、依然としてアナログ機の比重は高い。大量印刷ではアナログ方式の優位性が強く、普通紙に印刷する一般的な商業印刷と比較しても、デジタル化の潮流は控えめである。ただし、表示内容の多様化、SKU増加、短納期化、可変情報対応、在庫削減ニーズを踏まえると、アナログでは非効率な領域は着実に広がっている。すなわち、デジタルラベルプリンタ市場の成長余地は、同内容のものの大量印刷や、納期の短縮化など、アナログ印刷のデメリットとともいえる点を払拭できる点にある。
しかし、上記の点で利用者にメリットを感じてもらうには、印刷の前後工程、ないしは業務全般に関わるコストや効率性を把握した上で、最適な提案が求められる。つまり、商業・産業向けの中・大型デジタルラベルプリンタは、単純なハード販売では「事業の柱」になりにくい。ハードの他、消耗品・保守・ソフトウエア・RFID・自動化設備・業務支援までを含めた継続収益モデルを構築することが重要といえるだろう。
ラベル機市場では、デジタル化への転換機会は今後も相応に残る。各社にとって本分野は、成熟市場の延長ではなく、業務変革需要を取り込む新たな成長機会として位置付けるべき段階に入っているとみる。

(山内翔平)

ラベル印刷市場では表示内容の多様化や短納期化などを背景に、デジタル印刷の領域が広がっている。ハード販売から生産工程の再設計へ、需要の起点にも変化が見られる。

生命保険の販売チャネルの転換点-チャネルが多様化する中で問われる保険の「売り方」-(アナリストオピニオン2026.05.11)https://www.yanoict.com/opinion/show/id/461■■はじめに-「選べるように...
25/05/2026

生命保険の販売チャネルの転換点-チャネルが多様化する中で問われる保険の「売り方」-
(アナリストオピニオン2026.05.11)
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/461

■■はじめに-「選べるようになった」は本当か
生命保険の販売チャネルは、ここ十数年で大きく変化してきた。かつてはいわゆる生保レディと称される営業職員が中心だったが、現在では銀行窓口や来店型保険ショップ、オンライン完結型まで、顧客が保険に触れる入口は確実に増えている。
こうした動きを受け、「消費者が自分にあった保険を選びやすくなった」「販売の形が多様化した」という評価を耳にすることも多い。一方で、保険業界側に目を向けると、依然として販売における課題が残されている。人口減少による新契約の伸び悩み、募集人の高齢化、多様化する商品の説明責任、個人情報保護の厳格化など、生命保険の販売を取り巻く悩みは、形を変えつつ存続している。
今回は、近年の生命保険の販売チャネルの動きを整理した上で、最近報道等で話題となっている販売チャネルの課題を振り返り、今後の生命保険のチャネル戦略について考えてみたい。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/461

■■多様化が進んだ生命保険の販売チャネル
生命保険の販売チャネルが広がってきた背景には、いくつか要因がある。1990年代の金融ビッグバンによる自由化や銀行窓販の解禁が代表例であるが、顧客のニーズの多様化や営業職員の確保が難しくなってきたことも無関係ではないだろう。
また、複数社の保険商品を比較できる乗合代理店や来店型保険ショップは、「中立的な立場で説明してもらえる」という安心感から支持を集めてきた。近年では、シンプルな保障内容を中心に、オンラインで完結できるチャネルも徐々に存在感を高めている。
こうして見ると、生命保険の販売チャネルは「営業職員か、それ以外か」という単なる二分では片づけられないほど多様化してきたといえる。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/461

■■成果報酬型モデルで見え始めた課題
販売チャネルが多様化しても、変わらない側面がある。成果に応じた報酬体系を採用するフルコミッション型のモデルは、高い意欲や専門性を持つ募集人が力を発揮しやすい一方で、募集人の行動や判断が、良くも悪くも報酬追及に寄るリスクをはらんでいる。
営業の裁量が大きいからこそ、提案内容や情報の取り扱い等は個人に委ねられやすい。実際、2026年に入ってからフルコミッション型を採用する生命保険会社において、顧客からの多額の不正受給や金銭トラブル等が相次いで報じられ、世間を賑わせた。稼ぐための意欲が個人の裁量を広げた結果、コンプライアンスが後回しになった側面は否定できない。また、代理店や銀行チャネルへ出向するケースも保険業界ではよくあることであるが、そこでの情報の持ち出しを巡る事案も相次いで保険会社が公表している。
これらニュースとして報じられた事案について、特定の企業や社員など個人の問題だけで片づけるのではなく、個人の力に過度に依存する販売モデルそのものが内包するリスクとして捉える必要がある。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/461

■■「売れる人」に依存するビジネスの限界
生命保険は、長期間に渡って保障が続く商品であり、契約時に顧客のライフプランを踏まえた丁寧な説明が求められる。そのため、必然的に説明能力と提案力が高い人間に成果が集中しやすい。
しかし、この構造は「売れる人に会社が依存している」状態でもある。管理を強化すれば「自由にやれる他社へ移る」という懸念があり、顧客も担当者についていってしまうリスクがある。営業職員の高齢化や、若手のなり手不足が指摘されて久しい中で、個人の力量に依存し続ける販売体制は、いよいよ限界に近づいているといえる。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/461

■■デジタルチャネルは解決策になるのか
ではこの個人への依存を、デジタルの活用で解消できるか。近年は、デジタル活用への期待も高まっている。スマホ完結型の保険商品がその代表例であるが、こういった保険はあくまで比較的わかりやすく、リスクも限定的な商品が中心である。死亡保障等の比較的高額であったり、保険金支払いの条件が複雑な商品については、依然として人を介した説明や相談のニーズは根強い。かといって人任せでは前述した通り利益重視の勧誘に偏るリスクもある。つまり、デジタルは万能の解決策ではなく、募集や申込、アフターフォローといったプロセスごとに、人による対応とデジタル対応をどう最適に組み合わせるか。その一連のプロセスの設計が今後のカギになるかもしれない。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/461

■■販売チャネル管理の在り方が問われている
さらにいえば、人であれデジタルであれ、その販売プロセスをどう統治(ガバナンス)していくかという視点が不可欠である。フルコミッション型のような、募集人の裁量が高く稼げる販売モデル自体を否定するわけではない。それがモチベーションとなり、これまで業績を支えてきた面もあるだろう。
ただし、その自由度を前提とするのであれば、行動規範や情報管理、説明責任など、「守るべきルール」を徹底していく必要がある。裁量があるからこそ、コンプライアンスの再徹底や他の仕組みとの組み合わせによる補完など、企業はこれまで以上の対応が求められる。
https://www.yanoict.com/opinion/show/id/461

■■おわりに-チャネルの多様化は一定程度進んだ、次は透明性へ
生命保険の販売チャネルは、「多様化する(増やす)」段階から、「どうガバナンスしていくかを考える」段階へと移行する時期に来ている。どのチャネルが正解という単純な答えはないが、少なくとも個人の力に過度に依存する構造を見直す必要性は高まっている。
募集時の一連のプロセスにおいて、何がどのように行われ、会社はそれをどう管理するのか。こうした販売プロセスの透明性を高めていくことが、今後の保険販売に求められる重要な視点といえるだろう。

※関連調査レポート
生命保険の販売チャネルに関する詳細な調査・分析については、以下のレポートを参照されたい。
「2025年版 生命保険の販売チャネル戦略と展望 -直販、Web、来店ショップ、訪問販売の実態-」
(小田沙樹子)

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