29/08/2026
【社内×社外で磨く診断士力(第五回)】
企業内診断士の「リアル」に迫る本シリーズ。今回は、後藤高弘先生にご登場いただきます。
研究者としてのキャリアを歩みながら、現在は企業の経営企画に携わっておられる後藤先生。異なるフィールドで経験を重ねてこられた後藤先生は、どのようなきっかけで中小企業診断士と出会い、資格取得を目指されたのでしょうか。
その歩みと、企業内診断士としての現在に迫ります。ぜひご覧ください。
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本業を実践の場にする― 社内と社外を往復して磨く企業内診断士力/後藤 高弘
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1)企業内診断士としての現在地(立場・制約・目指す姿)
私は2023年7月に中小企業診断士として登録しました。現在は酒類製造企業の経営企画室で、中期経営計画の策定・進捗管理やプロジェクトの推進を担当しています。
もともとは研究部署に所属する研究員でした。大学院で博士号を取得し、研究そのものには大きなやりがいを感じていました。しかし、事業化や経営の議論になると、自分の知識や視野の不足を痛感することが少なくありませんでした。
そこで「研究だけでなく、経営も理解できる人材になりたい」と考え、中小企業診断士試験に挑戦しました。研究成果を事業へつなげる視点を身に付けたいと思ったからです。
何とか無事に合格し、その後、経営企画室へ異動することとなりました。
当時は戸惑いもありましたが、今振り返ると、この異動は私のキャリアを大きく変える転機でした。現在は全社的な視点で経営課題に向き合う毎日です。診断士資格は新しい肩書きを与えてくれたというより、「仕事を見る視点」を変えてくれたと感じています。
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2)「一番の壁」は何だったか
資格取得直後、私が最初に感じた壁は、「資格を取ったからといって、昨日までの自分が急に変わるわけではない」という現実でした。
試験に合格しても、すぐに経営コンサルティングができるわけではありません。企業内診断士には本業があり、協会活動や研修への参加にも時間的な制約があります。資格更新に必要な実務ポイントの確保に不安を感じる方も少なくないでしょう。私自身も、その一人でした。
「この資格を、どう活かしていけばよいのだろうか」としばらくの間、そんな思いを抱えていました。
そんななかで、私は「診断士はこうあるべきだ」という固定観念を見直してみることにしました。
診断士として登録した以上、外部企業を支援しなければならない。独立診断士のような活動をしなければならない。そんな考えを、いったん脇に置いてみようと思ったのです。
私の場合は、本業そのものが診断士としての実践の場になっています。
日々の業務の中で経営課題に向き合い、経営者や関係部署と議論を重ねながら、より良い会社の実現を目指して考え続けること。その舞台は、必ずしも社外である必要はありません。
そう考えられるようになってからは、「今の仕事の中で、診断士として何ができるだろうか」を意識するようになりました。
振り返れば、この発想の転換こそが、企業内診断士として最初の壁を乗り越えた瞬間だったように思います。
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3)壁の越え方:私がやっている“3つの工夫”
企業内診断士として活動する中で、私が大切にしていることがあります。
それは、「社外で学び、社内で実践する」ことです。
企業内診断士は、独立診断士のように多くの企業を支援する機会は限られています。しかし、本業には日々さまざまな経営課題があります。その一つ一つを診断士として考え、実践することが、自分自身の成長につながると考えています。
そのために、私は次の三つを意識しています。
① 学びを「自社ならどうだろう」と置き換えて考える
協会の研修や勉強会では、多くの学びを得ることができます。
その際、私は必ず「自社ならどうだろう」「自分の部署ならどう活かせるだろう」と考えるようにしています。
他社の成功事例をそのまま取り入れることはできません。しかし、本質的な考え方は自社にも応用できます。
学びを知識で終わらせず、自社に置き換えて考えること。それが、実践への第一歩だと考えています。
② 本業を診断士としての実践の場と捉える
経営企画室へ異動してから、仕事の見方が大きく変わりました。
中期経営計画の策定や経営課題の整理、プロジェクトの推進など、以前は「会社の仕事」と考えていたものが、今では「診断士として経営を支援する実践の場」に見えるようになりました。
診断士試験で学んだフレームワークや分析手法も、実務で使って初めて本当の意味を理解できます。教科書どおりに進まない現実と向き合い、試行錯誤を重ねることで、知識は少しずつ自分の力になっていきます。
私自身は、本業を実践の場として捉えることで、多くの学びを得ることができています。
③ コミュニティとのつながりを持ち続ける
企業内診断士は、自社の考え方や仕事の進め方が当たり前になりがちです。
だからこそ、私は社外とのつながりを大切にしています。
まず、中小企業診断士協会の研修や研究会、交流会では、多くの先輩診断士や仲間と出会い、大きな刺激を受けています。
また、個人的に全国の診断士との交流の場にも参加しています。そこには様々な立場の診断士が数多く参加しており、業種や立場を越えて活発な意見交換が行われています。
こうした交流を通じて感じるのは、自社だけが悩んでいるわけではない、ということです。同じような課題でも、会社や診断士によって考え方や解決方法はさまざまです。
その違いに触れることで、自社を客観的に見つめ直す視点が養われ、本業にも新たな気づきを持ち帰ることができます。
私にとってコミュニティは、人脈を広げる場というだけでなく、社外で学び、本業へ還元するための大切な学びの場になっています。
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4)具体例:このやり方で前に進んだ
経営企画室へ異動して間もなく、中期経営計画の策定に携わる機会がありました。
そのとき強く感じたのは、診断士試験で学んだ知識が実務と深く結び付いているということです。
外部環境分析や内部環境分析、戦略立案、数値計画の策定など、試験勉強では抽象的に感じていた内容が、実際の経営課題に向き合う中で一つにつながっていきました。
もちろん、実務は教科書どおりには進みません。だからこそ、試験で学んだ知識をどう応用するかを考え続けることが、自分自身の成長につながっていると感じています。
資格取得はゴールではなく、本当の学びのスタートでした。社外で学び、本業で実践し、その経験をまた次の学びにつなげる。この繰り返しが、今の私にとっての実務経験になっています。
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5)これからの人へ:企業内でも前に進めるチェックリスト
最後に、診断士登録後の企業内診断士の皆さんへ、私自身が意識していることをチェックリストとしてお伝えします。
<チェックリスト>
□ 資格取得後も、自分なりの学びや実践を続けられているか
□ 学んだことを「自社ならどう活かせるか」と考えているか
□ 本業を診断士としての実践の場と捉えているか
□ 協会活動や勉強会など、社外で学ぶ機会を持っているか
□ 業界や会社の枠を超えた人との対話を続けているか
私自身は、「本業」と「社外での学び」を行き来することが、企業内診断士としての成長につながっていると感じています。
協会活動や勉強会、診断士コミュニティで得た気づきを本業へ持ち帰り、本業で得た経験を再び社外で共有する。その循環が、診断士としての力を少しずつ育ててくれるはずです。
私自身もまだ道半ばです。
診断士としてまだ駆け出しの立場ですが、これからも本業を実践の場としながら、社内と社外を往復し、一歩ずつ成長していきたいと思います。
もし登録したばかりで、「何から始めればよいのだろう」と迷われている方がいれば、協会の研修や勉強会に足を運んでみるのも一つの方法かもしれません。
その小さな一歩が、新しい出会いと学びにつながり、自分らしい企業内診断士としての歩みを支えてくれると信じています。