新価値創造研究所

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橋本元司の「AI時代の価値創造の知」第382夜:AI時代に求められる「学校・企業・地域の教育転換の基盤」2026年8月16日 価値創造の奥義・秘訣は「二つでありながら一つ」*全文・全図解は、新価値創造研究所HPコラムに掲載されています。[プ...
16/08/2026

橋本元司の「AI時代の価値創造の知」第382夜:AI時代に求められる「学校・企業・地域の教育転換の基盤」

2026年8月16日 価値創造の奥義・秘訣は「二つでありながら一つ」

*全文・全図解は、新価値創造研究所HPコラムに掲載されています。

[プロローグ]
 第381夜(前夜)に、「顕」と「密」のあいだを跳躍し、往還するための知のOSである「顕密思考 ── AI時代の価値創造に向けた認識工学 ──」をお伝えしました。
 「顕」と「密」は「二つでありながら一つ」なのです。
これが、「価値創造」の奥義です。

 それでは「二つでありながら一つ」が、これからの学校・地域やビジネスの場でどのように力を発揮いくのかを、私が紹介している複数の事例をご覧いただいて、その共通項を体感されてから、最後に「顕密思考」への理解へとつなげてお伝えします。

根幹:「二つでありながら一つ」

A. ビジネスの場:「共感(LOVE)」と「違い(POWER)」
B. SDGsの場:「SDGs17の目標」と「本業」
C. 経営とは?:「あり方」と「やり方」
D. 空海両界曼荼羅図:「慈悲」と「智慧」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

A. ビジネスの場:「共感(LOVE)」と「違い(POWER)」
 (「二つでありながら一つ」)
 『ビジネスで最も大切なコト』は、「違いを創るコト」と「共感を生み出すコト」を一つに統合し、継続的かつ高いレベルで結合させることです。
 これら2つの要素を切り離して考えるのではなく、両立させて高みを目指すことが価値創造の本質です。

【価値創造の本質】

違いを創る(差別化):
→他にはない独自のモノやサービス、独自の視点を提供し、競争力を生み出す。

共感を生み出す(本質追求):
→無駄な要素を削ぎ落として核心や本質にたどりつき、人々の心やニーズを強く捉える。

継続的な結合:
→一度きりではなく、独自の価値と深い共感を連動させながら回し続ける。

 つまり、「違いと共感」の新結合です。上図の赤丸が「価値創造の本丸」になります。

[解説]
 さて、『違いと共感』です。
最初に『違い』(第 65 夜~第 78 夜参照)ですが、他と違いがなければ、「低い 提供価値」になります。そうなると、顧客の関心・興味が薄れて対価が減り、次 の価値づくり、投資が出来なくなります。継続の維持が危ぶまれてます。
 ただ、「総合研究所や技術研究所」でよく見かけることですが、「違い」ばかりに 目を奪われて、それが世の中に、顧客に、本当に役立つのか、共感するのか を見極めないで突っ走り、結局何も成果が出せなかったという数多くの事例を現場で体験してきました。

「研究開発・技術開発」だけが先行して、研究者や技術開発者が、「この研究・ 技術が何かに役立たないかな?」とつくり始めてからプランナーやマーケター に相談することが多々あります。
 その理由は、研究開発の前にテーマを相談すると、「市場にそのようなニーズ はない」という声が上がり、そのテーマ自体が潰されることがあるからです。ポ イントは後述する「顧客の『NEXT 共感』」を捉える想像力の有無にあります。

 次に、『共感』(第 2 夜、第 63 夜、第 64 夜参照)です。
共感度が低ければ対 価も下がります。現在の市場の短期的な「共感」にだけフォーカスしていると 「違い」への逸脱ができ辛くなります。
 「共感」にもグラデーションがあって、慣れ てくると価値が薄れてきます。他との「共感度」に差がなくなれば、図解の左側 の低い「共感」に向かいます。

 顧客の「NEXT 共感」を明確にして顧客を捉える 想像力が必要です。(価値創造イニシアティブ:2.他者を愛する「幸せ創造力」 参照) “ドラッカー”が言うように、「企業の目的は、“顧客価値”をつくること(=顧客価 値創造)」にあります。それを維持・継続できなければ、企業は存続できませ ん。

その“顧客価値”をつくることができる、ただ二つの機能が『違いと共感』です。 図解の様に、この二つを“二つでありながら一つ”の高みに持っていくことがポ イントです。

 それではもう少し紐解いていきましょう。
この二つの拠り所を説明します。
 企業の中において、
『違い』をつくるのは、「技:イノベーティング」で、
『共感』を生み出すのは、「心: マーケティング」です。
 *イノベーションの進行形、広がりとして、「イノベーティン グ」という言葉を使用しています。第 32 夜参照) 企業では、「イノベーティング」は、主に研究開発・技術開発部門が担当し、「マ ーケティング」は主にマーケティング部門が担当します。
 マーケティングは『心 (Will&Smile)』を扱い、イノベーティングは『技(Skill&Style):新結合』(第 32 夜)が拠り所になります。

 下記「新価値創造イニシアティブ(第 77 夜)」のプロセスの中で、ビジネスと創 生で『違いと共感』がどのように活用されているのかを皆様イメージしてみてく ださい。
1.自分を変える:危機意識・情熱力
2.他者を愛する:幸せ想像力
3.余白をつくる:本質創造力
4.舞台をつくる:仕組構想力
5.関係をつくる:伝える力・伝わる力
6.信頼をつくる:巻き込む力・巻き込まれる力
7.成功をつかむ:すぐやる力・やり抜く力

『違い』は、1~7の全ての項目にあり、『共感』も1~7の全てにあります。その 双方が顧客に「伝える・伝わる」&「巻き込む・巻き込まれる」の『「違いと共感」 の物語(Story)』となります。

 この二つを別々にしないで、両立することがビジ ネスで最も大切なコトと納得いただけたでしょうか。
「イノベーティング(イノベーション)部門」「マ ーケティング部門」の双方は、上記に向けて逸脱・新結合することが必要です。

 さて、その二つの機能(『違いと共感』)を創り・生み出す心得と方法が、『ト リニティ・イノベーション』(第 21 夜)になります。「心得(Will&Smile)と方法 (Skill&Style)」を是非、ご活用ください。

B. SDGsの場:「SDGs17の目標」と「本業」
  (「二つでありながら一つ」)

 「価値創造の知」において、「愛」と「力」は価値を生み出して持続させるための両輪です。
 「愛(慈悲・真善美)」と「力(智慧)」とは、社会課題の解決(愛=LOVE)と事業や変革を推し進める実行力(力=POWER)を対立させず、統合の知恵によって「二つでありながら一つ」として両立させる実践的プロセスです。
 下図は、公立私立を問わず、中学・高校で「SDGs」に取り組んでいる活動です。
(私は、SDGsのファシリテーター、ナビゲーターをしてきました)

 SDGsは、私たちが「あり続けるため(サステナブル)」に、17の社会課題(Goals)をどう解決(ディベロップメント)するかを考え、「社会性」と「経済性(利益)」を両立(二つでありながら一つ)する思想であり実践です。図の右上の高い点数を目指したいですよね。
 学生はこのような学習を学校の授業で体験してきています。
・学生たちは、○○○の社会課題を解決(LOVE)したいが、POWERがない
・社会人は、POWER(能力)の一部を持っているが、LOVE(利他)に向かわない。

 この「愛と力」の二つを「両立させること」が、社会にも会社にも自治体にもベストなのです。
 下図が、企業・学校・地域でご覧いただいている「SDGs成長」の図解になります。

【愛と力の本質】

愛(慈悲・心・志):

物事や他者、社会に対する創造的肯定。

挑戦の源泉となる熱意や決意、ありたい姿。 [1, 2]

力(智慧・技・実行):

現実を動かし、課題を解決する推進力やスキル。

成果を生み出すための具体的な方法論やシステム。

らせん的プロセスによる統合

片方だけでは不十分であり、愛(志)と力(方法)を一体化させる。

思考と情動を循環させながら、未だ存在しない価値を自ら編集・創造していく。

■ 参考として、「愛」と「力」のSDGs成長経営事例を3つ紹介しますので、理解・納得に役立ててください。
(詳細は「価値創造の知」第364夜に記していますので、関心のある方たちは是非そちらをご覧ください)

1. 本業(佐藤製作所)× SDGs(女性採用、働き甲斐)

2. 本業(北星鉛筆)× SDGs(つくる責任、つかう責任)

3. 本業(旭鉄工)× SDGs(エネルギー、新産業基盤)

C. 経営とは?:「あり方」と「やり方」
  (「二つでありながら一つ」)

 経営とは、「経(たて)」という縦糸(あり方・being・理念)と、「営(いとなむ)」という横糸(やり方・doing・行動)を組み合わせ、一枚の布のように価値を織りなす営みです。
 両者をしっかり編み込むことで、時代に合わせた持続的な価値創造が可能になります。

縦糸(経)の役割

あり方(Being): 会社の理念、パーパス、大切にする価値観。

不変の軸: 時が経っても変わらない企業の原点や伝統。

存在意義: なぜこの会社が存在するのかを示す道しるべ。

横糸(営)の役割

やり方(Doing): 日々の事業活動、戦略、具体的な行動。

変化への対応: 時代や市場のニーズに合わせて柔軟に変えていく部分。

実行力: 縦糸の理念を現実のカタチにするための営み。

価値創造のポイント

経営が行き詰まる時は、横糸の「やり方」が時代に合わなくなっていることが多いのです。

変化に対応するためには、ぶれない縦糸の「あり方」に立ち返り、新しい横糸を編み直すことが重要です。

詳しくは、新価値創造研究所・コラム「価値創造の知」(第364夜、第367~369夜)に綴っていますので、是非参考にされてください。

 コラム第364夜の「新成長を生み出す3つの知」には、旭山動物園のプロセス事例を上げていますので、さらに理解が進むと思います。

D. 空海両界曼荼羅図:「慈悲」と「智慧」
  (二つでありながら一つ)

両界曼荼羅図は、空海が伝えた密教の宇宙観や仏たちを絵にしたものです。
【両界曼荼羅の基本構造】
 弘法大師空海の真言密教における「両界曼荼羅」は、

・胎蔵界曼荼羅
 → 原理・可能性・生成・慈悲・内面世界
・金剛界曼荼羅
 → 構造・知・実践・智慧・外化された働き
この二つの世界を分けつつ、同時に不可分なものとして捉える宇宙観です。 

重要なのは、「真理は一つだが、見る次元・働かせる次元が異なる」 という点です。
 つまり「両界曼荼羅の本質」は、同じ世界を異なる次元で表現したもので、胎蔵界と金剛界は上下関係ではありません。(「二つでありながら一つ」です)

 これって、私が公表してきた上図の「価値創造らせんプロセス体系」と全く同じなので、出逢った時に驚きの連続でした。
・胎蔵界曼荼羅:「気立て→見立て→仕立て」(=人間の内側から駆動する内的な力)
・金剛界曼荼羅:「切実→逸脱→別様」(=価値が生まれる外的プロセス)

再整理: 両界曼荼羅の二つの世界

胎蔵界(たいぞうかい):大日如来の慈悲と理(ことわり)の世界。
→価値創造における「気立て・見立て・仕立て」といった内側から駆動する力を象徴します。

金剛界(こんごうかい):金剛石のように硬く鋭い大日如来の智慧の世界。
→価値創造における「切実・逸脱・別様」という外的なプロセスや変革の動きに対応します。

価値創造への応用

二項対立の統合:社会性と経済性、暗黙知と形式知など、相反する要素を「二つでありながら一つ」として結びつける智慧とします。

顕密思考の往来:言葉や理論(顕)の背景にある体験や身体性(密)を往来することで、AI時代に人間が主体的な問いや価値を創るための思考OSとして活用しています。

新価値創造研究所では、価値創造の知・思考フレームワークにおいて、この曼荼羅の構造が人間の内発的な力と外的なイノベーションプロセスの統合を示すものとして応用しています。

 [エピローグ]
 上記A.B.Cの「二つでありながら一つ」をご覧いただきましたが、それは、1200年前に弘法大師空海が表現した「両界曼荼羅図」と同じ構造です。

 特筆されるのは、弘法大師空海が日本が誇る「イノベーター(=価値創造者)」であったことです。空海は「目に見えない意味を、構造として可視化し、現実世界で機能させる知のあり方」をビジュアル化し、展開し、実践して広めました。

 イノベーションとは「胎蔵界で生まれ、金剛界で実装され、再び胎蔵界を更新する循環」です。この循環が止まると、改善止まりか、空理空論になります。

⇒ 日本の産業界で多いのが、金剛界だけによる「改善・模倣・価格競争」です。その多くは、顕在化しているオペレーションに時間をかけて、胎蔵界の「意味・問い・可能性」を突き詰めていないことが原因です。
⇒「両界往復」が「本質的イノベーション」につながります。

■ ワーク例

それでは、ワークとして使う一例を提示します。
Step 1(胎蔵界:慈悲)

この事業が「救おうとしている苦」は何か?

それは言葉になっているか?

Step 2(金剛界:智慧)

その苦は、「どの構造で解消」できるか?

技術・制度・体験の設計は?

Step 3(往復)

実装して「ズレた感覚」はどこか?

問い自体を更新できているか?

◆ 一言でまとめると

イノベーションとは、
・胎蔵界(意味)を忘れず、
・金剛界(構造)に閉じこもらず、
・その往復を続ける「知の修行」である。
空海の両界曼荼羅を「イノベーションの原型構造」 と確信してお伝えしています。

■ 「両界曼荼羅」の現代展開版が「らせんプロセス体系」!
 新価値創造研究所は、「両界曼荼羅」を現代に具現化展開しているのが、価値創造の「らせんプロセス体系」及び、「らせんプロセス体系図」とご縁を感じると共に、確信しています。

 是非、この「両界曼荼羅」「らせんプロセス体系」を下記の様に活用されてみてください。
例えば、「生命サステナブル」には、SDGsの17の社会課題があります。「AIデジタル」にもたくさんの課題があります。先ず、身の回りの「小さな課題」から挑戦されてください。
・「らせんプロセス体系」×「生命サステナブル」(第366夜)
・「らせんプロセス体系」×「AIデジタル」(第363夜)
・「らせんプロセス体系」×「日本流コネクタブル」(第362夜)
・「らせんプロセス体系」×「課題:○○○○○」
・「らせんプロセス体系」× Others

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「AI時代の価値創造の知」第381夜:「顕密思考」という新地平 —— 表層と深層を往還する価値創造https://shinkachi.biz/2026/07/13/%e6%a9%8b%e6%9c%ac%e5%85%83%e5%8f...
13/07/2026

橋本元司の「AI時代の価値創造の知」第381夜:「顕密思考」という新地平 —— 表層と深層を往還する価値創造
https://shinkachi.biz/2026/07/13/%e6%a9%8b%e6%9c%ac%e5%85%83%e5%8f%b8%e3%81%ae%e3%80%8cai%e6%99%82%e4%bb%a3%e3%81%ae%e4%be%a1%e5%80%a4%e5%89%b5%e9%80%a0%e3%81%ae%e7%9f%a5%e3%80%8d%e7%ac%ac381%e5%a4%9c%ef%bc%9a%e3%80%8c%e9%a1%95/
投稿日: 2026年7月13日
2026年7月13日: 「顕密思考」誕生

1. 新たなパラダイム「顕密思考(けんみつしこう)」の誕生 
 -「問いを立てる」の、その先へ、奥へ-
 コラム第378~380夜では、AI時代において「答えを出すこと」の価値が暴落し、「問いを立てること」こそが人間の仕事になる、という話をしました。
(「立つ」という動詞がこれまで以上に意味を持ってきます)

 しかし、最近学生たちと話していて、一つの壁にぶつかりました。
「先生、問いを立てるのが大事なのは分かりました。
でも、ChatGPTに『面白い問いを5つ考えて』と頼めば、それなりの問いを出してくれちゃうんです。
僕たちが立てる問いって、AIの問いと何が違うんですか?」

 鋭い指摘です。そうなのです。
「問いを立てる」ことすら、すでに当たり前のスキル(顕在化されたテクニック)になりつつある。
AIにプロンプトを打ち込めば、それらしい「問い」が返ってくる時代に、私たちはその一歩先、一歩奥にある「問いの源泉」に触れなければなりません。

 生成AIがあらゆる「答え」を瞬時に導き出す時代、私たちが日々目にする情報は平坦化し、表層的な最適化ばかりが加速しています。誰もが同じ正解にたどり着ける世界で、真の価値創造はどこから生まれるのでしょうか。 
 AIが絶対に真似できない、人間だけの「価値創造の入り口」はどこにあるのか。

 第378夜「AI時代の価値創造教育プログラム」をまとめている最中に、その答えの強力なヒントをくれたのが、私の師である松岡正剛師匠の「編集工学」、師が遺した不朽の名著『空海の夢』、そして私の前職パイオニア社時代のヒット商品開発プロジェクト体験でした。

 その鍵は、
・「目に見える記号やデータ(顕)の背後に潜む、言語化されない本質や気配(密)を読み解く力にある」
という確信です。

 本夜は、これからの知性・感性・脳性のあり方を決定づける新たなパラダイム「顕密思考(けんみつしこう)」の誕生をお伝えします。
 表層と深層を自在に往還するこの思考法こそが、AI時代における価値創造の新たな地平を切り拓くことをお伝えします。

2. 「編集工学」と『空海の夢』が教えてくれたこと
 正剛師匠の「編集工学」の本質は、世界のあらゆる情報を「つなぎ、重ね、新たな意味を創り出す」ことにあります。そして師匠がその編集思想の究極のモデルとして生涯追いかけ続けたのが、1200年前の天才、空海でした。
 空海は、仏教を「顕教(けんぎょう)」と「密教(みっきょう)」の二つに分けました。

「顕教(顕)」:言葉やテキスト、論理で明確に説明できる教え。
「密教(密)」:言葉では表現しきれない、身体の感覚、イメージ、実践そのもの。
 正剛師匠は『空海の夢』の中で、空海が成し遂げたのは「言葉(顕)」の背後に、決して言葉では語り尽くせない広大な「シンボルや身体性(密)」の海が広がっていることを、両界曼荼羅(まんだら)という壮大なシステムで可視化したことだと見抜きました。

 上図を見てください。
 私たちが普段使っている言葉やデータ、テキスト(顕)は、巨大な海に浮かぶ「氷山の一角」にすぎません。その海面下には、言葉にできない「体験・身体性・実践」という、底知れない巨大な「密」の海、そして、「密」から生まれる未来の源・種が広がっています。

 AIという存在は、人類が過去に生み出した「言葉(顕)」をすべて編集・足し算して作られた、いわば「氷山の一角のマスター」です。データ化されたロジックの編集なら、人間が逆立ちしても敵いません。

 ですが、AIには絶対にアクセスできない領域があります。それが、海面下に沈む「密」――すなわち、私たちが日々感じている生々しい身体の感覚、痛み、喜び、そして現場の空気感という「ナマの感覚」です。

 さて、私は35歳の時に、ビートルズにも影響を与えた「マハリシ・ヨッギの超越瞑想」(第6夜、第235夜、第289夜)の門をご縁によりたたきました。生業としている「音・音楽」が人間に与える波動・影響を体感したかったからです。
 そこに入門して驚いたのは、大手の企業経営者が多いことでした。彼らは、「(自分の)心を空にする」ことで経営の方向性や生き方を見出しているようでした。(第33夜)

 そう、そこでは雑念をなくす、私心をなくすことを体得して、大事なコトは何か?そして、大事なものにつながることを体験してきました。
その体性、知性、心性を研ぎ澄ます、磨いたことが自分の将来に大きな影響を与えてくれました。

 禅(ZEN)、超越瞑想は、「顕」と「密」を往還する優れた方法なのです。 

3. 氷山を90度回転させる「顕密思考」
 正剛師匠はかつて、情報には「地(背景・文脈)」と「図(目に見えるデータ)」があり、この2つがダイナミックに入れ替わることで新しい意味が生まれると説きました。(参照:https://note.com/discover21/n/n4238e6e02702)

 この「編集工学」のエッセンスを、「AI時代の価値創造」に引き受けて、私は氷山の図を「左回りに90度」ゴロリと回転させてみることにしたのです。

 さて、ここに誕生したのが、私が提唱する「顕密(けんみつ)思考」のOSです。

 左端の「過去」という原点(氷山の頂点)には、目に見える小さな「顕(言葉)」がある。しかし、その背後には常に膨大な「密(体験・身体)」が地続きで控えています。

「問い創造」とは、マニュアル(顕)を読むことから始まるのではありません。
自分の身体感覚や現場の違和感(密)にダイブし、それを「編集」して言葉(顕)へと海上に引き上げる瞬間に、AIには絶対に真似できない「本物の問い」が誕生するのです。
 

4. 顕密思考を具現化する「基本」と「応用」
 では、この「顕密思考」のOSを、私たちは日々どうやって駆動させればいいのでしょうか。学生の皆さんが今日から実践できる、具現化の「基本」と「応用」の一部を伝授します。

【基本編】自分の「モヤモヤ(密)」を言葉(顕)に翻訳する

 基本は、日々の生活や学びの中で感じる「言葉にならない違和感(密)」を見逃さず、言葉(顕)の氷山として削り出す習慣です。

 たとえば、大学の講義を受けているとき、あるいはSNSを見ているとき、「データ(顕)は正しいと言っているのに、なぜか胸のあたりがモヤモヤする、腑に落ちない(密)」と感じる瞬間はありませんか?

そのとき、AIに答えを聞く前に、自分の身体(密)にダイブするのです。
「私はなぜ今、心がざわついたのか? どの言葉に引っかかったのか?」
と内省する。
 そして、そのモヤモヤの正体に「自分だけの名前(言葉)」を付けてみる。(ラベリング)

 これこそが「密」から「顕」への往来であり、AIには絶対にインプットされていない、あなただけの「独自の問い」が誕生する基本のステップです。

【応用編】他者の「身体・感情(密)」にダイブし、社会の価値(顕)を創る

応用は、ビジネスやプロジェクトなど、社会の中で「新しい価値創造」を行うときの駆動法です。「顕(ロジック)」のフレームワークをあえて捨て、他者の「密(ナマの体験)」に深く共感し、それを新しい仕組み(顕)へと昇華させます。

 たとえば、ヒットしている新しいサービスを思い浮かべてください。それらは「市場データ(顕)」の分析だけで生まれたのではありません。
・「夜遅く、一人で帰宅するときに感じる、言葉にできない寂しさと心細さ(密)」
・「育児中に、一瞬だけ社会から取り残されたように感じる孤独(密)」
 といった、人間の生々しい感情や体験の深淵(密)に、開発者が自らの身体を通じてダイブしたからこそ生まれたものです。

 [参考事例-1]
 事例として、セミナーでよく紹介する「アルコールフリービール」をアップします。
 キリン(株)は、アルコールフリーという画期的な製品で新しいビール市場を開拓しました。
その女性開発者の“大切にした想い”を紹介します。
 「2007年は、飲酒運転撲滅の雰囲気が世間にありました。いくつかの大きな事故があり、警察の取り締まりが強化されるなど、飲酒運転はダメという消費者の意識が強くありました。お酒が原因で悲しい事故が発生するのが嫌だったんです」
 開発者の大切で切実な願いは、
 ・「飲酒運転がなくなる幸せ」(密)
 でした。
 その“あり方”(密)が土台にあることで、技術開発やマーケティングの“やり方”も変わって成功につなげました。

[参考事例-2]
  私は、前職のパイオニア社時代、
・アナログレコード→CD
・FM放送→カセットテープ→CD-R
 という「Hi-fi(忠実再生):顕」で成長してきたオーディオ業界が限界を迎えた「真っ只中(1993年)」にいました。その時、下図の様に、2005年に大きな変化があるコト(パッケージ系、通信系、放送系)をプロジェクトで予見、洞察しました。

 その時(1995年)、音・音楽の「Hi-fi(忠実再生):図(ず)」ではなく、別流の「音・音楽の新しい楽しみ方:地(じ)」を社長直訴で提案して、連続して下記「ヒット商品」を創出しました。(第126夜、第370夜:ヒット商品緊急開発プロジェクト)
 「カラオケ」「CDJ」等の文化創造は、機械側の「Hi-fi(忠実再生)」ではなく、「人間の側の楽しみ・喜び(密)」を軸足にして企画開発したものです。

[参考事例-3] 
 事例の3つ目として、「北海道旭川市にある旭山動物園」(第28夜、第364夜)を上げます。
時は1997年にタイムシフトします。その頃、全国の動物園の来園者数は右肩下がりで減り続けていました。

 当時、旭山動物園の獣医係長(現園長)の坂東元さんは、従来の“パンダやコアラという奇獣、珍獣で来園者を集めるやり方や動物の姿を見てもらうための「形態展示」(顕)”ではなく、“普通の動物の本来の行動や生活を見てもらう「行動展示」(密)”へと転換を図りました。メディアにたびたび取り上げられ、国内外からたくさんの観光客がくるようになりました。

 さて、坂東園長が転換を決意した“最も大切にした想い”は何でしょうか?
ここは大事なので、皆さん少し考えてみてくださいね。

⇒旭山動物園が掲げる永遠のテーマは、「伝えるのは命」(密)です。

そこには、坂東さんが獣医として“動物の命”の大切さにずっと寄り添ってきたことが込められています。そのテーマによって、これからの時代の主役になる子どもたちが、動物たちの未来や地球の未来を真剣に考える場所になっています。

 旭山動物園が大事にする赤枠の中に入る言葉は「命の大切さ(を伝える):密」でした。

 ここで重要なことは、経営の“あり方(目的・縦軸):密”が変わることで、“やり方(手段・横軸):顕”が変わることです。
 それまでの「形態展示」から、「普通の動物の“行動展示”」というやり方に転換しました。そのことで、右肩下がりの来園者数が急激な右肩上がりになり、旭川市を含めて経済価値(利益)が上昇しました。

 詳細は、第28夜、第364夜に綴っています。

 上記の3つは、これまで業界が常識としていた「顕(ロジック)」のフレームワークをあえて捨てた事例です。
アルコールフリーも、一番大事だと思っていた「アルコール」を捨てました。
日本が、得意な「引き算の美学」(第6夜、第364夜)です。
それは、日本人が継承してきた「才能」(第340夜)です。

  さて、1997年、正剛師匠から私に、
これからの時代は、
・「性能→機能→効能」
の流れを深く考えなさい、との指南がありました。
→性能は「顕」で、効能は「密」です。

 いかがでしょうか?
これらの参考事例が少しでも「顕密思考」理解・実践の参考になれば幸いです。

 データやマニュアル(顕)を並べるだけのプレゼンはAIに任せましょう。
皆さんは、ターゲットとなる人(地域・社会・顧客)の「日常の痛みや喜び(密)」の海に深く潜り、そこから「これこそが、あの人や社会が本当に求めていた価値だ」という新しい製品や言葉(顕)をすくい上げる。これこそが、顕密思考の応用である「価値創造の編集」です。

5. 時と共に広がる「智慧と慈悲」のイノベーション
 この「顕密思考」のOSを起動し、中心の水平な時間軸(現在から未来へ)を進むと、何が起きるか。

「顕密思考図」の右側を見てください。三角形の稜線が未来に向かって四方八方にダイナミックに広がっています。
 「顕(論理)」だけで考えたビジネスは、一時的に流行ってもすぐにAIに模倣され、コモディティ化(陳腐化)してしぼんでしまいます。しかし、正剛師匠が『空海の夢』で描いたように、言葉(顕)を丸ごと包み込む巨大な宇宙の全OSとして「密」を捉え、そこから汲み上げられた問いは、時が経てば経つほど、より多くの人の心に響き、価値を大きく広げていきます。

 空海が曼荼羅で示した宇宙の広がりは、現代でいう「価値創造の無限の可能性」そのものです。それは単に「儲かる仕組み」を作ることではありません。
物事の本質を見抜く「智慧」と、他者の痛みや社会の課題に寄り添う「慈悲」が、時間と共にどこまでも拡大していくプロセスです。(第369夜)
 空海の「両界曼荼羅図」は、「智慧」と「慈悲」を可視化(顕)して、その両立と実践を説いています。

■「顕密思考」大整理

A. 正解のコモディティ化と「情報の平坦化」
 現代の情報環境は、空前の「最適化」を迎えている。AIの前に問いを投げかければ、数秒のうちに極めて論理的で、破綻のない「正解」が返ってくる。しかし、この圧倒的な利便性の裏側で進行しているのは、「知の激しいコモディティ化」です。

 AIが導き出す回答は、人類がこれまでに記述してきた膨大な過去データの統計的パターンの集約にすぎない。つまり、誰もが同じ強力なAIツールを使うようになれば、必然的に行き着く結論やアイデアもまた均一化していきます。
 世界から「ノイズ」が削ぎ落とされ、あらゆる知の輪郭が滑らかになる。この「情報の平坦化」が進む世界において、他者と異なる真の独自性、すなわち新しい価値を創造することは極めて困難になりつつあります。

B. 「顕(けん)」の世界と「密(みつ)」の世界

 この閉塞感を打破するために、私たちはかつて日本仏教などが探求した「顕(けん)」と「密(みつ)」という、二次元の視座を現代の知性へと蘇らせる必要があります。

 まず「顕」の世界とは、目に見えるもの、すでに言語化されたデータ、そして客観的なロジックで説明がつく領域を指す。AIがその処理能力を爆発的に発揮するのは、まさにこの「顕」の領土です。
 一方で「密」の世界とは、未だ言葉にならない気配、数字に還元できない人間の情動、歴史や文化が重ねてきた文脈の重みなど、表層には現れてこない深層の領域を指す。それは論理の網の目からこぼれ落ちる、隠された本質です。

C. なぜAIは「密」に触れられないのか

 なぜ、どれほどLLM(大規模言語モデル)が進化しても、AIはこの「密」の領域に触れることができないのでしょうか。理由は、AIの存在本質が「記述されたものの処理」にあるからです。

 AIが学習できるのは、すでに誰かが言葉にし、記号化し、インターネットの海に放流した「顕」のデータだけです。しかし、人間の営みや自然の摂理、ビジネスにおける真のインサイトの多くは、言語化される手前の「暗黙知」として深層に埋もれています。
 データに還元できない「密(ひそ)やかなるもの」を感知し、その意味を察知するセンサーは、生身の身体を持ち、文脈を生きる人間にしか備わっていません。
 AIは「顕」の王者ではあっても、「密」の探索者にはなれません。

D. 顕密思考の真髄 —— 表層と深層の「往還」

 本夜、このコラムで提唱する「顕密思考」の真髄は、単に「密」という深層の世界に引きこもり、直感や神秘主義に頼ることではありません。真の価値創造は、表層の「顕」と深層の「密」をダイナミックに、かつ高速に「往還(おうかん)」するプロセスから生まれます。

 深層に潜り、まだ誰も言語化していない社会の違和感や気配(密)を掴み取る。そして、それをただの感覚で終わらせず、AIをも巻き込めるような明晰な言葉やロジック、プロダクト(顕)へと変換して表層へと引き揚げる。
 この往還のループを繰り返すことによってのみ、コモディティ化された「平坦な正解」を飛び越えた、圧倒的にユニークで深い価値がこの世界に誕生します。

5. 結び:顕密思考を実装する「問い」の作法

 「顕密思考」を自らの知性・感性・脳性として実装するために、私たちは「問い」の作法を変えなければなりません。
  目の前のデータや、AIが提示したスマートな回答(顕)を見たとき、私たちは常にこう自問するべきです。「この綺麗に整えられた言葉の背後で、削ぎ落とされた『密』なる気配は何だろうか」と。

 効率性の網をすり抜けるノイズにこそ、次の時代の意味が眠っています。
表層の正解を疑い、深層への潜水を恐れない。
この「顕密思考」という新地平へ足を踏み出すことこそが、AI時代を生きる私たちが創造性を失わないための、唯一の羅針盤となるはずです。

■ AI時代を生きる学生の皆さんへ
 画面の中のロジック(顕)だけにこもるのをやめましょう。
正剛師匠が空海に見出したように、自分の身体、五感、そして現場の違和感(密)という巨大な海に飛び込んでください。そこからあなただけの言葉を紡ぎ出す(編集する)とき、あなたの未来は、図の右側の三角形のように、未来に向かって無限に広がっていくはずです。 

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司「AI時代の価値創造の知」第380夜:『顕』から『密』へ、そして「価値創造」へ ― 見えている世界を超え、まだ顕れていない価値に気づく認識論-(新価値創造研究所HPコラムに全データがあります。https://shinkachi.bi...
11/07/2026

橋本元司「AI時代の価値創造の知」第380夜:『顕』から『密』へ、そして「価値創造」へ ― 見えている世界を超え、まだ顕れていない価値に気づく認識論-
(新価値創造研究所HPコラムに全データがあります。https://shinkachi.biz/category/%e3%82%b3%e3%83%a9%e3%83%a0/)

2026年7月11日:人間は「密(まだ顕れていない世界)」に気づき、新しい問いを創る

 前夜(第379夜)は、前前夜(第378夜)の「5位一体価値創造教育プログラム」に、「問い」創造の認識段階として、“「顕」は出発点、「密」は問いの源泉“を組み込んで更新しました。

 AI時代に肝要となる「問い」に、それに先立つ「認識の段階」として、

顕(見えている世界)
密(見えない可能性の世界)
を置くと、教育プログラム全体が次のような一本の流れになります。

顕を見る → 密に気づく → 問いを創る → 未来を構想する → 偶然を活かす → 三つの知で意味を統合する → 新たな価値を創造する

 上記は、これまで構築してきた
・「問い創造 → シナリオプランニング → セレンディピティ → 3つの知 → 価値創造」
という五位一体のナビゲーションの「入口」として、「顕」と「密」を配置することで、
教育プログラム全体が一つのブラシュアップストーリーとして完成しました。

 これまで「五位一体プログラム」をまとめ、顕在化させたことが、その奥に隠れていた「密」を呼び起こすことにつながり顕在化させた、と思っています。
 また、、この「顕」と「密」は、「問い創造工学」の前段階ではなく、価値創造教育の「認識の教育」として位置づけるのが最もわかりやすい、美しい型・構造になるのでは、という洞察です。

 それは、これまで本コラムで一貫して追究してきた
・「価値創造を再現可能な知として体系化する」
という構想に、新たな基礎層を与える理論になったのではないかという嬉しさを感じています。

 それでは、これらを具現化する「教育プログラム案」を提示いたします。

■価値創造教育プログラムコンセプト
→「AIは「顕(見えている世界)」を処理する。
人間は「密(まだ顕れていない世界)」に気づき、新しい問いを創る」

AI時代に大学教育、アントレプレナーシップ教育が育てるべき能力は、「知識を覚えること」ではなく、
「見えていない価値に気づき、意味を創ること」です。

第1段階 「顕」を見る

テーマ:「当たり前」を観察する力

学生への問い

今日一日で「当たり前」だと思ったことは?
なぜそれが当たり前なのか?
誰がその当たり前を作ったのか?
演習:「大学キャンパスの中にある『当たり前』を20個書き出す」

例えば、

教室がある
時間割がある
試験がある
コンビニがある
ここではまだ評価しません。

目的は
「顕」を意識化すること
です。

第2段階 「密」に気づく

テーマ:「見えていない価値」を探す

学生への問い

本当に他の方法はないのか?
なぜ昔から変わらないのか?
誰も困っていないのか?
本当は何が欲しいのか?
演習

一つの「当たり前」を選び、
「他にもあり得た世界」
を書き出します。

例えば、
・教室→「教室が存在しない大学」
・試験→「試験のない大学」
・卒業→「卒業のない大学」

ここから
「密」
が現れてきます。

第3段階 問い創造

ここで初めて
「問い」
を作ります。

例えば、
・「大学は本当に教室で学ぶ場所なのか?」
・「卒業とは何のためにあるのか?」
・「地域は若者を失っているのか、それとも新しい価値を生み出しているのか?」

第4段階 シナリオプランニング

作った「問い」を使って、
「複数の未来の姿(像)」
を考えます。

例えば、
軸①:AI依存←→人間中心
軸②:地域密着←→世界連携

この2軸から4象限の未来が生まれます。

第5段階 セレンディピティ

異なるチーム同士で「問い」を交換します。

そこで
・偶然
・発見
・融合
を起こします。

ここでは「答え」ではなく
「予想外」「想定外」
を歓迎します。

第6段階 3つの知

最後にアイデアを三方向(価値創造の「3つの知」)から立案・構想・評価します。

・深い知:本当に人間にとって意味があるか?
・広い知:新しい組み合わせになっているか?
・高い知:未来を変える可能性があるか?

第7段階 価値創造

最後に学生自身が「新しい価値」を一枚にまとめます。

例えば、
テーマが「緑茶」(第370夜、377夜)なら、
「飲み物」
ではなく、

「人と人をつなぐ時間」
として再定義する。

ここで「価値」が生まれてきます。

[教育目標]
学生は知識を覚えるのではなく、
次の流れを体験します。

顕を見る
↓
密に気づく
↓
問いを創る
↓
未来を描く
↓
偶然を活かす
↓
意味を統合する
↓
価値を創る

■ AI時代に育てる7つの力

段階(プロセス)& 育成する力
顕→ 観察力
密→気づく力
問い創造→ 問題設定力
シナリオ→ 構想力
セレンディピティ→ 創発力
3つの知→ 意味構築力
価値創造→ 実践力

■このプログラムの独自性

 ここで特に強調したいのは、「顕」と「密」を単なる「見える/見えない」の区別で終わらせず、
・「価値創造の出発点となる認識の転換」
として位置づけることです。

整理すると、

顕=現実をそのまま受け入れる認識(観察)
密=現実の奥に潜む可能性や文脈に気づく認識(洞察)
となり、この「密」があってこそ、初めて「問い」が生まれます。

つまり、
・「顕から密へと認識が深まり、密から問いが生まれ、問いから価値創造が始まる」

この一連の流れは、これまで提唱してきた「切実→逸脱→別様」という価値創造プロセスとも自然につながります。

この考え方を新価値創造研究所の新しい柱として、「顕密(けんみつ)思考」と名付けたいと思います。
次夜は、この「顕密(けんみつ)思考」を深堀し、顕在化していきます。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司「AI時代の価値創造の知」第379夜:『顕』から『密』へ ― AI時代に「問い」はどこから生まれるのか-2026年7月9日: 見慣れた世界を「あたり前」と思わない力 生成AIは、質問に対して驚くほど優れた答えを返してくれるようになり...
10/07/2026

橋本元司「AI時代の価値創造の知」第379夜:『顕』から『密』へ ― AI時代に「問い」はどこから生まれるのか-

2026年7月9日: 見慣れた世界を「あたり前」と思わない力

 生成AIは、質問に対して驚くほど優れた答えを返してくれるようになりました。
しかし、AIは「問い」を与えられて初めて動く存在です。

つまり、AI時代に最も重要になる能力は、「答えを知ること」ではなく、
「何を問うか」
です。

では、その「問い」はどこから生まれるのでしょうか。
出発点として、「日常世界の顕在意識」、
そして、
問いの源泉となる「密(みつ)」にあると考えています。

 本夜は、これまでまとめてきた「AI時代の価値創造教育プログラム」に、その前段階のプロセスを追加して、更新していきます。
 ここで、下記二つのキーワードと新ロゴマークを提示します。
・「顕」は出発点
・「密」は問いの源泉

■ 「日常世界の顕在意識」
◆ 私たちは「あたり前」の世界に生きている
毎日歩く道
毎日飲むお茶
毎日交わす挨拶
毎日使うスマートフォン
これらは、私たちにとって「あたり前」です。

しかし、本当に「あたり前」なのでしょうか。
「あたり前」と感じている瞬間、私たちの思考は止まっています。
「価値創造」は、この「あたり前」が崩れた瞬間から始まります。

◆ 顕在意識とは何か?

 顕在意識とは、
私たちが普段、自覚しながら見ている世界です。

しかし、顕在意識は
「見えている」のではなく、見慣れてしまっている世界
でもあります。

だからこそ、価値創造の第一歩は
「見慣れた世界を、もう一度見ること」
なのです。

◆「問い」は驚きから生まれる

私はこれまで、価値創造とは
「切実 → 逸脱 → 別様」

であると述べてきました。
その前段階には、もう一つ重要な出来事があります。

それは、
「驚き」「好奇心」です。

「あれ?」
「なぜ?」
「本当にそうなのか?」
この小さな違和感が、「問い」を生みます。

◆ 問いは世界の見え方を変える

同じ緑茶(第370夜、第377夜)でも、
「どう売るか」
という問いと
「なぜ人は緑茶を飲むのか」
という問いでは、
見える未来が全く違います。

・問いが変われば、未来が変わる。

だから私は、問い創造を
「価値創造のOS」
と呼んでいます。

■ AI時代の教育の在り方
これからの教育は、知識を覚える教育ではありません。
「問い」を見つける教育です。

そのためには、学生に「答え」を教える前に、
日常世界を
「あたり前ではない」
という
「見る力(知性)」
「感じとる力(感性)」
「考える力(脳性)」
 を育てる必要があります。

◆ もう一つの世界、別様の世界への気づき
  価値創造は、特別な才能から始まるのではありません。
毎日の生活の中で、「あたり前」に隠れている
“もう一つ(別様)の世界”
に気づくことから始まります。

 めったに起こらなそうなレアな事態ばかりが偶然性ではありません。
現実のすぐ目の前にあるそのことにいかに驚くか、
『あたり前』の世界に控える『他にもあり得た』世界を想像して、
目前の情景をいかに『あたり前でない』世界として見ることができるのか。

 それを、本コラムで繰り返し綴ってきました。

つまり、「問い」とは、
・「世界を見直す勇気」であり、
・「未来を創る最初の一歩」です。

■「顕」と「密」が、問い創造の入口

「価値創造の知」のこれまでの体系を整理すると、

・問い創造 → シナリオプランニング → セレンディピティ → 3つの知 → 価値創造
となっています。
しかし、その前にはもう一段階、
「問いはどこから生まれるのか」
という根源的な問題があります。

私は、その答えが
「顕」から「密」へ向かう認識の転換
ではないかと洞察しました。

◆あらためて、「顕」とは何か?

「顕」とは、表面に現れている世界です。
つまり、

日常
常識
習慣
データ
事実
見えているもの
 AIは、この「顕」の世界を非常に得意とします。
大量の情報を整理し、知識を要約し、最適解を導きます。
しかし、それだけでは価値創造には至りません。

◆「密」とは何か?
「密」は「まだ現れていない意味の世界」
と考えます。
そこには

違和感
気配
可能性
関係性
文脈
人間の想い
があります。

つまり「密」は、
・「価値の種が眠っている世界」
なのです。

◆「顕在」と「潜在」との関係

ここで、心理学でいう
・「顕在意識」
・「潜在意識」
を重ねることもできます。

◎顕在

人が意識している世界
「こう思う」
「こう見える」
「こうあるべき」

◎潜在

まだ言葉になっていない世界
「何か違う」
「説明できない」
「気になる」
「なぜだろう」

つまり、「問い」は、
潜在意識から浮かび上がってきます。

◆問いは「顕」からではなく、「密」から生まれる

 例えば、学生が
「地方は人口減少しています」
というのは「顕」です。

しかし
「なぜ地方に帰りたくなる人がいるのだろう」
これは「密」です。

さらに
「人口減少を止めるには?」
ではなく
「人口減少を前提にすると、どんな新しい豊かさがあるのか?」
となると、「問い」は完全に「密の世界」へ入ります。

■ AI時代だからこそ「密」が重要

AIは「顕」を整理できます。
しかし「密」を感じることはできません。

だからこれからの教育では、学生に、
「密を見る力」
を育てる必要があります。

■「顕」と「密」を価値創造プロセスに組み込む
そのうえで「価値創造の知」のAI価値創造教育プログラム体系は、
次のように整理して、わかりやすい演習と実例を習得していくと、アントレプレナー・イノベーター(イントレプレナー)志向者には、更に扱いやすい流れ・内容に近づくようになります。

顕(日常・常識)
   ↓
違和感
   ↓
密(可能性・気配)
   ↓
問い創造
   ↓
シナリオプランニング
   ↓
セレンディピティ
   ↓
3つの知
   ↓
価値創造

つまり
・「顕」は出発点
・「密」は問いの源泉
になります。

◆「顕在」と「潜在」より、「顕」と「密」が良い理由

一般的には「顕在」「潜在」という言葉が使われますが、
本コラムでは「顕」と「密」を採用しました。

理由は、「潜在」は心理学では「意識されていないもの」
という意味で理解されがちですが、
「密」はもっと広く、

まだ顕れていない可能性
見えない関係性
熟していない価値
将来芽吹く兆し
まで含むことができます。

つまり、
・「密」は「価値が凝縮されている世界」
という独自の意味づけが可能になります。

■ 参考:「密」を紐解く

密教の「密(みつ)」という文字には、仏教の教義的な意味と、漢字そのものが持つ意味の、大きく分けて3つのレイヤー(意味合い)があります。

1. 「隠されていて、簡単には見えない・分からない」という意味

もっとも一般的な意味は、「秘密」「隠密」の密です。
言葉や文字、論理(=顕教)だけで、表面的な説明をいくら重ねても、世界の真理や宇宙の本質は捉えきれません。

そのように「人間の浅い知恵(言語や理屈)ではうかがい知ることができない、奥深くかすんだ領域」を指して「密」と言います。

2. 「仏と分が、隙間なくピッタリ重なり合っている」という意味

漢字の「密」には、「濃密」「親密」「精密」のように、隙間(すきま)がない状態を表す意味があります。密教では、宇宙の真理そのものである仏(大日如来)と、私たち人間は、本来は一つのものであると考えます(即身成仏)。

護摩(ごま)を焚き、手で印を結び、真言を唱えることで、仏の身体・言葉・心(三密)と、自分の身体・言葉・心(三密)が、隙間なく1対1でピタッと一体化する(三密加持)。
この「仏と人間の距離がゼロになる状態」を「密」と表現しています。

3. 松岡正剛師匠の解釈:「関係性が畳み込まれている」という意味

 松岡師匠の視点を重ねると、ここでの「密」とは単に「隠す」という意味ではなく、「まだ開かれていない(フォルダが閉じている)状態」を指します。
すべての現象や意味がギュッと凝縮され、重ね合わされてそこに在る状態です。
これを緻密にデザインされたフレーム(曼荼羅など)を使ってパッと展開(解凍)すると「顕(目に見えるもの)」になり、また収束すると「密」に戻る。

つまり、密教の「密」とは、たんに「ケチって教えを秘密にしている」という意味ではなく、「言葉を超えた奥深い真理であり、仏と自分が隙間なく一体化する、極めて濃密で高度なシステムである」ということを表しています。

■ まとめ
 本年1月に、弘法大師空海が誕生した香川県善通寺にお参りしました。
そのご縁が、本コラムで私の背中を押して「AI時代の価値創造教育プログラム」の発信を促すように、と感じています。

 本コラムが少しでも日本の将来や皆様のお役に立てれば幸いです。

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12/05/2026

🟠高校・大学向け「アントレプレナーシップ教育プログラム」を公開しました🟠
 AI時代だからこそ大切になる、
「価値を生み出す力」。
人間だからこそ発揮できる“価値創造”の考え方を、
図解・時系列・体系化し、
教育現場で活用いただける
「価値創造教育プログラム」としてまとめました。
 未来を切り拓く若い世代の育成や、
教育機関の皆さまの取り組みに、
少しでもお役立ていただければ嬉しいです。

2026年5月12日: AI時代における「価値創造人財教育」の再設計に向けて  [プロローグ] --…

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04/05/2026

橋本元司の「価値創造の知」第377夜:「価値創造の航海術 」-「問い創造」から「価値創造」へ
2026年4月7日: 知の連鎖が解き放つ未来への躍動

 これまで第370夜から第376夜にかけて、
・「価値創造」というAI時代に最も重要で、
・しかも目に見えない「切実→逸脱→別様」の営みを、
・いかにして再現可能な「知」 として体系化できるか
 を説明してきました。

 それは、「知の点(問い)」が一本の強力な「知の線」となり、
さらに立体的な「知の型(3つの知)」へと進化する「黄金のリレー」です。

さて、令和の地球沸騰環境(生命サステナブル)、ビジネス環境(AIデジタル等)等では、「立つ・立ち上がる・自立する・両立する」 という動詞が、これまで以上に経営や事業創発のコア技術になります。

 事業が立ち上がる、経営・組織を立て直す、人財が自立する、経済価値と社会価値を両立する、──これらはすべて、価値創造のプロセスをどう設計できるかにかかっています。

 価値創造とは、「切実・驚きの『心のトリガー』が逸脱を呼び、『智慧の編集』が別様の価値を構築する」という、一種の“立ち上げ工学”です。

 上記を、大学生・ビジネスパーソン向けに、不確実な世界を自らの足で歩むための「実践的知性」及び、「自分のOS」としてインストールできるような道筋となるように提示してきました。
 
 ここで一旦、その道筋を区切りとして俯瞰し、それらがどのように響き合い、一つの大きな「うねり」となるのかを再整理・編集することが、「「きっと皆さんの役に立てるのではないか」と思いました。

1. 【起点】問い創造工学:「問い」がすべての起点となる(第372夜詳細)

 価値創造の第一歩は、正解を出すことではありません。
価値は「思いつく」ものではなく「立ち上げる」ものです。

すべての価値創造は「良質な問い」から始まります。
下図の「A.心のゆれ」を起点として「何を解くべきか」という問いそのものを設計することにあります。
そして、「問い」こそが「向かおうとする方向」を決めていきます。

 世の中に溢れる既存の延長線上にある課題(Problem)に埋没せず、
自らの「驚き・違和感」を「解くべき価値のある問い」へと工学的に純化させる。
この「問い」の強さが、プロジェクト(地域創生・事業創生・人財創生)の初速と深度を決めます。

2. 【拡張】シナリオプランニング:「不確実性」を地図に変え、未来の「地図」を広げる(第373~374夜詳細)

 立てた「問い」に対し、未来は常に「複数の顔」を持って現れます。
一つの予測に固執することは、変化の激しい現代において最大のリスクとなります。

 これまでの競争環境が自分たちに不利な方向に大きく変化した時に、
その脅威の準備・適応ができていないことが、多くの企業の「破綻」の原因です。
それは、「国」「地域」「業界」も同様です。

 「心の置き方」と「モノの見方」のフェーズを上げることが重要です。(第373夜)

 シナリオプランニングとは、起こり得る複数の未来を可視化する技術です。
未来を「当てる」のではなく、複数の可能性を「拡張」「準備」しておくことで、
私たちの思考は硬直化から解放され、しなやかなレジリエンス(適応力)を獲得します。

 チャンスは、準備のあるところにやってきます。(ルイ・パスツール)

3. 【触発】セレンディピティ:偶然を「追い風」に変える(第375夜詳細)

 「問い」を持ち、「複数のシナリオ」を描きながら行動を続けると、そこには必ず予期せぬ出会いや出来事——すなわちセレンディピティ——が訪れます。
それは単なる幸運ではありません。

「やってくる偶然(Outer)」と「迎えにいく偶然(Inner)」が結びつく「格別な間(時空間)」を発見した時に、そこに大いなる不思議なエネルギーを感じます。
自分の内面的な意識や関心が、外の出来事と結びつく能動的で持続的な姿勢がそれを呼び込みます。

 そこでは「準備された心(Prepared Mind)」が、シナリオという地図を持っていたからこそ気づけた「意味のある偶然」「発見の力」です。
 この偶然を価値創造のエネルギーとして取り込むことで、当初の計画を超えたイノベーションが誘発されます。

4. 【深慮・羅針盤】3つの知:戦略に「魂」を吹き込む(第364夜、第376夜詳細)

 3つの知は、本体系における“判断の羅針盤”であり、
問いとシナリオによって広がった可能性の中から、
どの方向に進むべきかを決定する中核機能です。

 令和の時代は、下図のように、
・「何のために創るか(①Why)」、
・「何を創るか(②What)」を
・「具体化する(③How)」
 という「ひとつなぎ」を科学し、
工学の手法で価値を設計するイノベーションの時代です。

深い知(Why / ミッション / 気立て): 禅的思考で己の根源を掘り下げ、揺るぎない「志」を立てる。
高い知(What / ビジョン / 見立て): 「過去と現在」から弁証法的に未来を統合し、ワクワクする「理想の姿」を描き出す。
広い知(How / イノベーション / 仕立て): 新結合の視点で、既存の枠組みを超えた「別流の具体的な解決策」を具現化する。
この「気立て・見立て・仕立て」が揃ったとき、戦略は「逸脱の精度と力」を極め、独自の輝きを放ち始めます。

5. 【実装】価値創造工学:未来を「現実」へと定着させる「統合の知」(第370~371夜詳細)

「価値創造工学」とは、「人の役に立つ仕組みを考え、試し、社会に届けるための心得・思考・実践の方法論」です。
 そのために、「問い」「シナリオ」「セレンディピティ」「3つの知」をバラバラの点としてではなく、「点→線→面→立体」の一気通貫のシステムとして捉えるのが「価値創造工学」の特質です。

 「3つの知」で磨き抜かれた構想・戦略を「価値創造工学」という実行システムへとバトンタッチします。
人々に役立つ想い(想像)を構造化し、他者を巻き込み、社会に価値を実装(創造)していく。
ここに至って、思考は初めて「実体」を伴う成果へと昇華されます。

・問いが方向を指し示し、(未来の行き先)
・シナリオが歩むべき可能性を広げ、(未来の想像)
・セレンディピティが加速を生み、(未来との遭遇)
・3つの知が羅針盤をつくり、(未来の創造)
・価値創造が未来を先取りする。(未来の戦略)

この連鎖を意識的に回し続けることで、価値創造は「一部の天才による閃き」から、「誰もが実践可能な知の技術」へと昇華されていきます。

■ 実践のフィールドへ

 ここで、「問い」から「実装」までを一気通貫で可視化し、戦略の精度を極めるための「価値創造の知・統合マップ(5ステップ版)」をご用意しました。
 このマップは、不確実な未来を自らの意志で切り拓くための「思考の航海図」として活用いただけます。

橋本元司の「価値創造の知」第376夜:「価値創造の3つの知 」-価値創造の「OS」を起動せよ2016年4月5日 問い・シナリオ・3つの知の統合  「価値創造の3つの知」は、本コラム「価値創造の知」の『大黒柱』であり、「人体」で言えば『背骨』...
04/05/2026

橋本元司の「価値創造の知」第376夜:「価値創造の3つの知 」-価値創造の「OS」を起動せよ
2016年4月5日 問い・シナリオ・3つの知の統合

  「価値創造の3つの知」は、本コラム「価値創造の知」の『大黒柱』であり、「人体」で言えば『背骨』、「航」で例えると「竜骨(キール)」です。

 この「3つの知」を成長経営の背骨にして、前職パイオニア社と現職(多業種業態、教育機関、自治体を支援伴走)で最大活用してきました。

 本夜は、下記「価値創造の4段階プロセス」の第3ステップに位置づけられる「3つの知」を「価値創造の全体の流れ」中で関連付けてお伝えします。

「3つの知」は、第364夜に詳述していますので、時代を、日本を、地域を、自分を、切り拓きたいと考えている「大学生・ビジネスパーソン」の皆さんは、下記、本コラムより先に、「第364夜」と「SDGs経営塾 第7回 世界観を持つ」をご覧いただくことをお薦めします。

■ 価値創造の4段階プロセス
新価値創造研究所が提唱する「独自のプロセス」は、以下の4つのステップで構成されます。

問い創造工学: 「何を解くべきか」という起点(ベクトル)を決める。
シナリオプランニング: 不確実な未来を可視化し、可能性(地図)を広げる。
3つの知: 広げた未来を「自らの知」で濾過し、戦略の精度(逸脱)を磨く。
価値創造工学: 磨き上げた戦略を、社会実装可能な形へと構造化(バトンタッチ)する。

■「3つの知」:戦略に魂を吹き込み、精度を磨くフィルター
 第373~375夜でお伝えした「問い創造」→「シナリオプランニング&セレンディピティ」で未来の選択肢を広げただけでは、まだ「輪郭がぼやけている未来」に過ぎません。

シナリオプランニングの「未来の可能性の地図」を広げた後に、
 下図「3つの知」(第364夜)を活用して、他でもない、自らの
・深い知:「意志(Why?→気立て・ミッション)」
・高い知:「理想(What?→見立て・ビジョン)」
・広い知:「新結合(How?→仕立て・イノベーション)」
 というフィルターで濾過(ろか)することで、戦略としての精度(逸脱・別流の精度)を高める。
このプロセスこそが、価値創造を「自分(たち)ゴト(智慧×意志)」として着地させる羅針盤になります。
 ここで、成長戦略は「心と智慧」が統合した「唯一無二の価値」へと進化します。

 この流れを網羅して、本夜の「3つの知(深い知・高い知・広い知)」を綴ります。

橋本元司の「価値創造の知」第375夜:「問い創造工学」と「セレンディピティ」2026年4月4日: 「やってくる偶然」と「迎えにいく偶然」■ 要約:「問い創造とセレンディピティ」・ 「問い」の創造が、セレンディピティ(偶然の幸運)を呼び込み、...
04/05/2026

橋本元司の「価値創造の知」第375夜:「問い創造工学」と「セレンディピティ」
2026年4月4日: 「やってくる偶然」と「迎えにいく偶然」

■ 要約:「問い創造とセレンディピティ」

・ 「問い」の創造が、セレンディピティ(偶然の幸運)を呼び込み、それが新たな価値を生み出す源泉になるコト
・ 「問い」の創造は、既存の前提を疑うことから始まり、それが偶発的な発見と結びつくことで、より本質的な価値創造につながるコト

 本夜の核心は、セレンディピティとは偶然ではなく、「二つの偶然の出会い」であるという点にあります。
そして、「偶有性:偶然の幸福に出逢う能力・場」について図解と共に、解き明かしていきます。
下図は、参考に図解したものです。

1.セレンディピティ(偶然の幸福に出逢う能力)の正体
セレンディピティは次の2つの結合で生まれる:

やってくる偶然(外からの変化・情報)
迎えにいく偶然(自らの意図・問い・問題意識)
この2つが出会ったときに、はじめて価値ある発見が生じる。

2.「問い創造」の役割(核心)
「迎えにいく偶然」を成立させる「鍵」が、問い創造である。

常に対象に対して
疑問
問題意識
意図・意思
を持ち続けること
これにより、
→ 偶然を“受け取れる状態”を準備する

つまり、
良質な問い=セレンディピティを引き寄せる「鍵」

3.シナリオプランニングとの関係
「問い(鍵)」と「対象・情報(鍵穴)」を結びつける方法が
シナリオプランニング
不確実な未来に対して
自分の問いを当てはめ
意味を編集・再構成する
→ これが「価値創造のプロセス」

4.前提条件:「欠けたモデル」と「余白」
重要な認識:

現実は常に 「欠けたモデル」
自分の思考には 「余白」 が必要
これにより:

新しい視点が入る余地が生まれる
「やってくる偶然」を受け入れられる
5.「間(ま)」の創造=価値創造の場
セレンディピティは、

「やってくる偶然」と「迎えにいく偶然」
2つの“片”
が出会う 「間(ま)」 に発生する

→ この「間」が

思索の場
実践の場
イノベーションの場
となる

6.価値創造=新結合(イノベーション)
異なる要素(片と片)を
組み合わせることで
→ 新結合(New Combination)=価値創造

ただし重要なのは:

何でも組み合わせればよいのではない
「問いの質」と「意図・意思の強さ」が結果を左右する
■ 結論
 セレンディピティとは、
「問いによって準備された自己(Inner)」と「外から来る偶然(Outer)」が、
「格別な間(ま)」で
結びつくことで生まれる『価値創造』の醍醐味である。

橋本元司の「価値創造の知」第374夜:「問い創造工学」と「シナリオプランニング」後編2026年4月1日: 『緑茶の本来と将来』を「問い」でシナリオプランニングする本夜は、「問い創造工学」(第372夜)の第3部(3部作)です。先日、妻が購入し...
04/05/2026

橋本元司の「価値創造の知」第374夜:「問い創造工学」と「シナリオプランニング」後編
2026年4月1日: 『緑茶の本来と将来』を「問い」でシナリオプランニングする

本夜は、「問い創造工学」(第372夜)の第3部(3部作)です。

先日、妻が購入してきた「透明醤油」が食卓に並びました。
私には、「醤油とは黒いモノ」という先入観がしっかりとあることに気づき、目の前の「透明醬油」の発現によって、「既知」という自分の中に覆っているフィルターの向こう側にある、「未知」の広がりに「驚き」がありました。
「価値創造」の始まりは、このような「心の揺れ(驚き・切実・数寄)」から始まります。

・“当たり前(既知)を疑えるかどうか”

 私たちは、「驚き・切実・数寄」を契機として、様々な「問い」を浮かび上げることが重要です。その中に「価値創造」の種が潜んで待ってくれているからです。
 それを「価値創造工学/問い創造工学」(第370~373夜)で図解とともにお伝えしてきました。

・「問い創造」「価値創造」は、目前の“あたり前”に驚ける人から始まりコト
・未来は「待つ人(受動)」ではなく、価値創造者(能動)によって『創り変えられる』コト

 重要な認識は、
「新しい価値や問いは、特別な出来事から生まれるとは限らないコトです。
 むしろ、普段見慣れている“あたり前の世界”の中にこそ、
たくさんのヒントがあることです。

 大切な心構えは、
・『なぜこれが当たり前なのか?』
・『本当は違う形もあり得たのではないか?』

と疑い、目の前の現実を“当たり前でないもの”として見ることです。
そのとき初めて、
驚きや違和感、好奇心が生まれ、
そこから『問い』が生まれ、
新しい『価値創造』につながってくることです」

 上記に関連して、九鬼周造「驚きの情と偶然性」より参考引用します。 
---------
 ・・・「驚き」という「情」は、偶然的なものに対して起こる「情」である。
偶然的なものとは「同一性」から離れているものである。同一性の圏内に在るものに対しては、当たり前のものとして、驚きを感じない。
 同一性から離れているものに対して、それはあたり前でないから驚くのである。・・・
--------- 

上図の左側が「同一性圏内のあたり前」で、右側が「同一性から離れているもの」です。
「価値創造」「問い創造」が扱うのは、この右側の「人々の驚き」の領域です。
それを実現するのが、「イノベーション」(第364夜)です。
*イノベーションとは、『内側に異質なものを導入して新しくする(新結合:Innovare)こと』を実行(:-tion)して、経済や企業が発展すること。

 私の前職パイオニア社の連続ヒット商品プロデュースや、企業・教育機関・自治体の支援伴走のこれまでは、この『驚き創造』のイノベーション領域を相手にしてきました。

■ 「問い」によるシナリオプランニングの出力の違い

  それでは、この領域をターゲットにして、「緑茶の本来と将来」について、
・入門編(-X)
・基礎編(-Y)
・応用編(-Z)
 を用意しましたので、三つの「問い」・「問いの質」の違いによって「方向性、アウトプット」が大きく変わる「シナリオ(-X.-Y.-Z)」をご覧ください。
 
 さて身の回りのテーマとして、「緑茶」が“ 伝統 × 健康 × 技術 × グローバル化”が刺激的に交差するように見えるので、これまでの“あたり前(既知)”を書き換えてくれるシナリオプランニングに最適なテーマではないかと洞察しました。

 それでは、緑茶シナリオプランニングの「入門編」「基礎編」「応用編」の順番で提示しますので、複数の「問い」がどのような役割・活躍をするのかを意識しながらご覧ください。

■ 入門編シナリオプランニング-X: 緑茶の本来と将来

1.問い創造(Why)
 まずは「本質に迫る問い」を設定します。

*ベースの問いから(学生への提示)
→問い:「緑茶とは何か?」

*深めたい問い
→問い:緑茶は「飲み物」なのか「文化」なのか?

なぜ現代人は緑茶を飲まなくなっているのか?
緑茶の価値はこれからも続くのか?
緑茶は未来にどんな意味を持つのか?
2.ForcalQustion = “焦点をあてる問い”
(→ある問題や意思決定において、「何が最も重要な課題か」「何を解決すべきか」を明確にするための核心的な問いのコト)
→ForcalQustionの問い:「緑茶はこれからの社会でどのような価値を持ち続けるのか?」

3. シナリオプランニング(What)

・STEP1:変化要因
例(学生がポストイットを使って描き出す+補助)

健康志向の高まり
カフェ文化の拡大
ペットボトル飲料の普及
海外市場の拡大
若者の嗜好変化
茶農家の減少
AI・スマート農業
サステナビリティ
・・・
STEP2:2軸の選択(重要)

横軸:健康・機能価値

低 ←→ 高

縦軸:文化・体験価値

低 ←→ 高

STEP3:4つの未来(世界)

橋本元司の「価値創造の知」第373夜:「問い創造工学」と「シナリオプランニング」前編2026年3月26日:→新価値創造研究所HP・コラムからの引用です。(HPコラムには、全図解をアップしています)本夜は、「問い創造工学」(第372夜)の続編...
26/03/2026

橋本元司の「価値創造の知」第373夜:「問い創造工学」と「シナリオプランニング」前編
2026年3月26日:
→新価値創造研究所HP・コラムからの引用です。
(HPコラムには、全図解をアップしています)

本夜は、「問い創造工学」(第372夜)の続編(3部作)です。
本夜(第373夜)を要約します。
---------
テーマ:「問い創造 × シナリオプランニング」
 1. 問い創造は「羅針盤」、シナリオは「地図」
 2. 未来は「予測」ではなく「構想」するもの
 3. 「未常識の地図」を描く
 4. 「2つの軸」で未来を展開する
 5. 「問い」がシナリオの質を決める
 6. シナリオの役割は「意思決定の質を上げること」
 7. 前編のまとめ(構造)
 ・問い創造(Why)
   ↓
 ・重要な問い設定
   ↓
 ・未来を動かす2軸抽出
   ↓
 ・シナリオ展開(What)
   ↓
 ・複数の未来地図
   ↓
 ・戦略思考(How)

 →AI時代においては、正解を出すことよりも、新たな問いを再定義する『問い創造工学』です。
  そして、「問いの生成装置」として『シナリオプランニング』が重要な役割を果たします。

 一言でまとめると
・問い創造は、成し遂げたい「方向」を決め、
・その「方向」の将来価値の生成装置が「シナリオプランニング」である。
---------

  最初に、「パーソナルコンピュータの父」として知られるアラン・ケイ(Alan Kay)の言葉。
 「未来を予測する最良の方法は、それを発明することだ」
 (The best way to predict the future is to invent it)」
 つまり、私たちは「未来は待つものではなく、自らの『感性・知性・脳性』と『創造性』で創発するもの」という認識が不可欠です。

 「問い創造」は「価値創造の羅針盤」ですが、その「問い」を使って、「未来を動かすであろうエンジンとなる二つの軸」を抽出して、「ピザのパイ生地」を大きく広げるように、「将来を変える可能性のある『未常識の地図』を広げて、構想・戦略の羅針盤にする」という貴重な機能・効能を引き出してくれるのが「シナリオプランニング(後述)」です。

 現在、この手法は企業・自治体が長期的な持続可能性を確保し、「新たな成長機会(価値)を創造」するための必須のスキルとして再注目されています。特に、学生・教職員と経営者・ビジネスパーソンのニーズが高くなっているのが最近の傾向です。



 下図の様に「問い創造」が「価値創造工学の羅針盤」なら、「シナリオプランニング」は、その「問い」を基盤にして、「不確実な未来の地図を広げる力」・「問いの生成装置」という関係です。
 第370~372夜に綴ってきた「価値創造工学と問い創造工学」を橋渡しする最も刺激的で有効な手法が「シナリオプランニング」なので、是非、学生の皆さん、ビジネスパーソンの方たちは、体得・習得されることをお勧めします。

 上図の「問い創造」(第372夜)と「シナリオプランニング」はリバースなので、合わせ技で使いこなすことができるようになると、これからのAI時代に増大する「不確実性」を我がものにする可能性が飛躍的に高まります。
 ただ、そのためには、グループで「手を動かし、心を動かし、頭と脳を動かす」ことが必須になります。
そこで獲得する「知」を、「手続きの知」(第364夜、第372夜、第374夜詳細)と言います。
それが、AI時代にAIが専横する「検索の知」に対して、「人間の側が持つべき最も重要な知」になります。

 さて、初めて「シナリオプランニング」を見聞きした方がいると思いますので、その要約を図解と共にお伝えします。
 改めて、「シナリオプランニング」とは、「地球沸騰時代・AI時代を筆頭にした「不確実性が高い環境下」で、単一の未来を予測するのではなく、起こりうる複数のシナリオ(未来の姿)を描き、それに基づいて現在の戦略を導き出す手法」(下図:参考シナリオ@2005年時点)です。

 私が学校・企業・自治体の研修やワークショップで使用している演習や具体的事例は、夜後編(第374夜)にてご紹介します。

 実は、私は、20年以上前の2005年、前職パイオニア社の「総合研究所」時代に、
・「10年後のパイオニア社とそれに連動する研究テーマ創出をまとめる」
 というミッションを経営陣から受けていました。
 それで、上記シナリオプランニングの第一人者である「J・オグリビー氏」を目黒本社に招聘して、「シナリオプランニング」を直伝してもらいました。

 その直伝手法をそのまま使ってみて、2回ほど試したのですが、思ったような出力ができませんでした。
 そのため、そのプロセスに「価値創造の『3つの知』」(第364夜)を挿入して、「自分たちの価値創造」につながるように改変・編集することで、パイオニア社や異業種企業の基礎研究・新事業開発、そして、現職の「地域創生、事業創生、人財創生」の伴走支援等に活用して、効果・成果を上げることができるようになりました。

 さて、この「手法(思想)」を成果につなげるには、後述する「複数の重要な『問い』」が鍵で、それらを通して「本質的で豊かな複数のシナリオ(未来の姿、道筋)」を描き出し、会社・社会に実装展開することにつながります。

■ 「問い創造(別流)・守破離・シナリオプランニング」は相性抜群!

 第370~372夜に、「価値創造工学」とその基盤(OS)である「問い創造工学」についてまとめましたが、「卓越した価値創造(別流)」には、既存の枠組みを疑う「問いの質」が不可欠であり、 真の価値創造(イノベーション)を起こすためには、その手前にある「問い」を設計する工学的なアプローチが不可欠です。

 つまり、本コラムでは、「改善」や画一的な従来常識の延長線上ではない「別流の価値創造」が対象です。「別流(オルタナティブ)」というのは、「将来の『次の主流・本流』になる可能性がある「流儀・様相」を意味しています。

 「次の主流・本流」が狙いどころ(メインターゲット)であると言うと、みなさん「前のめり」になってくるところが興味深いです。

 上図の「価値創造プロセス体系」の「3.別流・別様」に到達するには、既存の枠組みを疑い、これまでの画一的な価値観・常識から離れる、「2.逸脱」するということが必要です。それを体現・実践している「守破離」(第5夜、第88夜、第330夜)について、このコラムでは何回も取り上げてきました。

 改めて、『守破離』(下図)とは、
守って破って離れる、のではない。

『守破離』は、下図に示すように、
・守って「型」に着き、
・破って「型」へ出て、
・離れて「型」を生む。
 この素晴らしい思想は仏道の根本にも、それをとりこんで日本的な様式行為をつくった禅にも茶にも、また武芸等々にも開花結実していきました。(第5夜、第88夜、第330夜)

 日本人は、もともと逸脱して「別流の型」を生み出す「守破離」の実践が得意な民族なので、その才能を遺憾なく発揮して欲しいです。
 その思想と手法を、その『守破離』(第5夜、第88夜、第330夜)のプロセスから体得することが「シナリオプランニング」策定にはたいへん有効です。

 改めて、私のこれまでの経験で、『次の主流・本流の可能性』を導き出す一番有効な方法が「シナリオプランニング」でした。アメリカでは「主流」であるこの思考法が日本はそれほど盛り上がりを見せていません。
・いったい、なぜでしょうか?(問い)
 その理由について、
・「現状・効率・改善」を重んじる「オペレーション型」の日本と、
・「未来・不確実・革新」を重視するシリコンバレーのような「イノベーション型」のアメリカ
 の違いである(第372夜詳細)、と洞察しています。 
(第98夜の『砂の民、泥の民』も是非参考にされてください)

  そして、それこそが「日本が低迷(失われた35年)している主因」と確信しています。

  さて、上記「守破離」と「シナリオプランニング」とは、「将来の『価値創造』をゴール」としていることが共通です。
 「シナリオプランニング」ワークショップのファシリテーション・ナビゲーションをする際は、上記の「守破離」の「型」を意識しながら、「離(別流)」のステージに到達できるように進めていきます。

 私たちが日本の長い低迷を打破するためには、「問い」を使って「破のステージ」に上り、「シナリオプランニング」を使って「離のステージ」の型を創り上げていく思考とスキル・パワーを体得することが不可欠です。

■ 「シナリオプランニング」の背景、および、扱う領域(図解)

 ますます「シナリオプランニング」が必要になっている背景は、従来日本の「鉄道の時代(レールのあるオペレーション・改善型):(第141夜、第150夜)」から、AI進展の「航海の時代(レールのないイノベーション・変革型):(第156夜、第225夜)」の大変化にあります。
 レールのない「航海に出る時代」には、「羅針盤・航海図=シナリオプランニング」」が必要ですよね。

 それでは上記を下敷きにして、「航海の時代」に「シナリオプランニング」が扱う領域を二つの図解で紹介します。

1.不確実性を扱う「シナリオ思考の領域」
 下図の、従来の画一的な未来予測が左図で、日本は「改善・効率・安く」(オペレーション型)を追求してきましたが、「未来・未常識・効能」という「不確実性」を前提に物事を考えることが必要な時代(イノベーション型)では、右図の「シナリオ的思考」が求められます。

2.価値観の「M字型領域」
 さて、ここからが重要なのですが、「生成AI」は、「過去の情報・常識」を取り出すことが超得意で、下図の左側の日本が得意としてきた画一的価値観の常識領域では、これからもう人間の出る幕はありません。「生成AI」を相棒の様に活用している人は実感しているはずです。

 前夜にも綴りましたが、下図の右側の「未来の不確実な未常識」のM字型領域が未開拓であり、その領域が「生成AI」が苦手とするところであり、人間の側が「才能を発揮する」ところです。上図(新しい視座)の右側のシナリオ的思考領域の大きい丸の領域が、M字型領域と重なります。

 このイノベーションの領域が、AI時代の「人間側の価値創造領域」であり、「問い創造」と「シナリオプランニング」の間を行き来することで、「手続きの知「(第372夜)」が駆動して、そのプロセスで、深く・高く・広く考えることが、独自のスキル、パワー、構想になっていきます。

 上手のイノベーション領域を開拓するメインプレイヤー、ツールが「問い創造」になります。
本質的な「問い」を活用して、未常識の世界を広げてくれるのが「シナリオプランニング」です。

 将来を洞察すると、シナリオプランニングの有効性が、「生成AI」により、さらに脚光を浴びることは間違いありません。
 私たちの経済環境、社会環境は大きく変わっています。「生命サステナブル」「AIデジタル」「人口減少」「戦争」等々であり、それは「すでに起こった未来」です。
その変化に適応できなければ、将来は沈んでいきます。

■ 参考:学生向けの説明版-A

  皆さん、これまでは『1つの正解』を早く見つける人が優秀とされました(上図の左側)。
でも、その役割はAIに譲らざるを得ません。
 これから皆さんに必要なのは、上図の右側にある『まだ誰も注目していない両端の可能性(未常識)』を見つける力です。
 ここで、私の専門である『問い創造工学』と『シナリオプランニング』『価値創造工学』を合わせて、順を追ってお伝えします。

1.テーマ設定の「問い」:FocalQuestion
 まず、「問い創造工学」を使って、
「いったい、『何を知る為のシナリオ』を作るのか?」
という、テーマ(FocalQuestion)を 設定します。

2.将来を左右する主因となる力(=ドライビングフォース)を導きだす「問い」
 将来を左右する重要な変化 として、
・①自社でコントロールできない外部環境 (不確実度)
・②未来を大きく左右する要因 (インパクト)
 の①②を包含するモノはどこにあるか? という「問い」を立てます。
 これが未来を探るためのOS(基盤)になります。

3.(下図の)2軸で広がる4つの象限の世界への「問い」
 上記1.2.の「問い」から導き出された要因・力(ドライビングフォース)で、浮かび上がる複数の未来(4つの象限)のそれぞれの「問い:Why?What?How?(価値創造の3つの知:第364夜」から得られる姿を検討・描写・検証する。

4.「何れにせよやるべきこと」への「問い」

 上記1.2.3.で広がる「4つの世界」をグループ対話を通じて、
・「問い」:何れにせよやるべきことは?
 を検討します。
シナリオプランニングにおいて、どのような未来が訪れるかに関わらず、「何れにせよ(どのシナリオでも)やるべきこと」は、不確実な環境下での生存と成長の基盤を固めるアクションになります。

 参考例:
① 外部環境の定点観測とシグナルの検知
② 「対話」を通じた組織的なリスク意識の共有
③ レジリエンス(適応力・回復力)の向上
④ 成長のための「後悔しない一手」
⑤ 「学習する組織」への転換

重要なことは、共に上記を検討・対話・共感するプロセスの中で、「価値創造が発芽する」コトと、参加者の「関与する自覚」がそこから生まれるコトです。

つまり、『問い』によって、成長の未来の種を見つけ、『シナリオプランニング』によってその未来の歩き方を事前にトレーニングする。
 この「問い」と「シナリオプランニング」の2つが組み合わせることを数回体験・習得・修練することで、不確実な時代でも、私たちは迷わずに『新しい価値』を創り出す側に「立つ」ことができます。

■ 整理タイム: AI時代の生存戦略「問い」と「シナリオ」

1.AIが「正解」を奪う時代(左側の山)

メッセージ: 過去のデータに基づく「平均的・論理的な正解」はAIの得意領域。

内容:

これまでの常識(正規分布の頂点)はAIが瞬時に導き出す。

ここでは「効率」や「正確さ」が価値だったが、もはや人間が競う場所ではない。

学生への問い: 「AIと同じ正解を出して、勝てるでしょうか?」

2.人間が輝く「M字型」の未常識(右側の山)

メッセージ: 私たちが磨くべきは、まだ誰も正解と言っていない「不確実な領域」。

内容:

M字の両端にある「未常識」「不条理・ワクワク」「違和感」にこそ、次のイノベーションが眠っている。

このカオスな領域を探索するための「OS」が問い創造工学である。

3.問い創造工学とシナリオプランニングの「融合」

メッセージ: 「問い」が羅針盤なら、「シナリオ」は地図を広げる力。

内容:

問い創造工学: 「そもそも、将来を左右する変化の種は何なのか?」というOS(起点)。

シナリオプランニング: その種がどう成長し、どんな未来(複数の可能性)を創るかを洞察する手法(プロセス)。

関係性: 質の高い「問い」を立てるからこそ、意味のある「シナリオ(道筋)」が描ける。

■ 「ドライビングフォース(未来を動かすエンジン)」と「問い」の交差点

 学生のみなさんにとって「シナリオプランニング」の核心であるドライビングフォース(変化の駆動力・エンジン)と、「問い創造工学」をリンクさせることは、「未来を探索し、洞察する具体的手法」を理解・実践する上で非常に効果的です。

 学生向けのワークショップでは、
・「ドライビングフォースを見つける=問いを立てることだ」
 と直感的に理解できるように、下記のステップ形式でお伝えしていきます。

1. ドライビングフォースとは「未来を動かすエンジン」

説明: 社会を大きく変える力(環境、技術、人口、価値観、規制など)の中で、特に、
「①将来どうなるか予測がつかない(不確実)」かつ「②影響力が大きい」
ものを指します。

学生への例え: 「10年後のスマホ」を考えるとき、「通信速度が上がる」は予測可能な事実ですが、「人々が画面を見ることをやめるか?」は予測不能なドライビングフォースです。

2. 「問い」がドライビングフォースを発掘する

メッセージ: ドライビングフォースは、データ(過去の延長線上)の中にはありません。
「未来の予兆」と「問い」という光を当てることで、初めて見えてきます。

プロセス問い創造工学の役割(OS)シナリオプランニングの動き発見「当たり前と思っていることの裏にある不条理・ワクワクは何か?」社会を揺さぶる「変化の種(ドライビングフォース)」を特定する。選定「その変化は、私たちの根幹を揺るがす本質的な問いか?」数ある要因から、未来を左右する「最重要の不確実性エンジン」を絞り込む。展開「もしその問いの答えが『A』なら?『B』なら?」絞り込んだ軸を掛け合わせ、複数の未来(シナリオ)を描写する。

■ 参考:学生向けの説明版-B

 「皆さん、シナリオプランニングで最も重要なのは、未来を激変させる力である『ドライビングフォース』を見つけ出すことです。
 しかし、これは単なる『流行チェック』ではありません。ここで「問い創造工学」が必要になります。

 図のM字型の領域(未常識)を見てください。
左側の『常識』の山にいる限り、見えるのは『予測可能な未来』だけです。しかし、『なぜ、今これが当たり前だと思われているのか?』という鋭い問いを立てることで、M字の右側の山にある、まだ誰も気づいていない『変化の予兆(不条理&ワクワク)』がの片りんや輪郭が見えてきます。

・『この「不条理&ワクワク」が解消・創造される方向に社会が動くとしたら、それはどんな力(ドライビングフォース)によるものだろうか?』

こう問い直すことで、単なるデータ分析では辿り着けない、未来を左右する本当の変数が抽出できます。
『問い』は、霧深い未来の中から、真に注目すべき『変化のエンジン』を照らし出すサーチライトです。

・『不条理&ワクワク』がドライビングフォースの源泉!
 学生には、 『今の社会のヘンなところや自分の中のワクワク・数寄』が、未来を変える大きな力になります よー」とお伝えすると、彼らの内面や外部アンテナが敏感になってきます。

・図との連動: M字型の「谷」の部分(常識が崩れる場所)にドライビングフォースが潜んでいると説明すると、視覚的にも納得感が高まります。

■ 前編のまとめ

 上記でご覧いただいたように、「卓越した価値創造」と「問い創造」を橋渡しするのが「シナリオプランニング」です。習得すると「アナタの卓越したスキル」になります。
 ただ私もそうでしたが、言葉や図で説明してもらっても実感がわかず、自分ゴトになれませんでした。
・何せ、未常識ゴト
 なのですから。

 ここに、「切実」「不条理・ワクワク」「本気(自分ゴト)」(第370夜)が必要になります。

上図プロセスを基盤にして「シナリオプランニング」は立ち上がっていきます。

 それは、仲間たちと共に、
・現在の中に点滅している『未来の兆し』」を収集し、
・ホワイトボードの前で、ポストイットを動かし、
・「問い」と「試行錯誤」を繰り返し、
・未来を変えうる二つの軸を選択し、
・そこに現れる4つの象限(世界)を描写する
・そして、「いずれにせよやるべきこと」を検討する。

 上記の「手続きの知」(第364夜、第372夜詳細)が未来の不確実性を「ワガモノ」に引き寄せてくれます。
そんな経験を数多く積み重ねてきました。

 さて、次夜(第374夜)は、本夜の後編を綴ります。
そこでは、「『緑茶』の本来と未来」をテーマにしてシナリオプランニングで描写します。

 是非、下図の「問い」→「シナリオプランニング」→「3つの知」→「価値創造」の流れを実感して頂ければ幸いです。

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